社説(2008年7月11日朝刊)
[ポスト「洞爺湖」]
対話を深め地球益を
九日閉幕した主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)は、地球規模の課題に明確な処方せんを示したとはいえない。首脳会議や拡大会合などで浮き彫りになったのは、各国の利害調整や政策協調の難しさ、である。
主要八カ国(G8)の首脳は、「二〇五〇年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半減させる」という長期目標に合意した。ところが、新興八カ国を加えた翌日の主要排出国会議では、中国やインドが数値目標に異論を唱え、「五〇年までに半減」の数字を盛り込むことができなかった。
先進工業国と、経済成長の果実を優先する新興国の溝は深い。今後に大きな課題を残したといえよう。
北海道洞爺湖サミットは、グローバル化に伴う危機の連鎖にどう対処するか、という極めて切実な問題意識の下で開催された。
言葉を変えて言えば、「暴走する資本主義」にどう歯止めをかけ地球益を守るか―そのことが正面から問われたサミットでもあった。
米国発の金融不安は一向に解消されず、世界経済全体にインフレ圧力が強まっている。世界的な金余りの中で巨額の投機マネーが原油や穀物市場に集中し、原油や食料価格の値上がりがアフリカなどの貧困層を直撃している。
それぞれの現象が複雑に絡み合いながら、世界的な規模で、連鎖反応的に、危機が進行している。
しかし、洞爺湖サミットは、世界的な危機連鎖に対して、具体的で有効な対策を打ち出したとはいえない。
例えば、投機マネーの規制についても、米国などの反対にあって具体策を示すことができなかった。
貧困や飢餓などアフリカが抱える問題にどう対処するかも、目標達成が明確にはならなかった。
ただ、今回のサミットを評価する場合、別の視点も必要だと思う。
地球温暖化対策に関して、先進国と新興国の溝は埋まっていないものの、それが避けられない「地球益」であるとの共通認識が生まれつつあるのは確かだ。
十六カ国の首脳が集まって主要排出国会議を開き、地球温暖化対策という個別課題を論じ合ったこと自体、始まりの一歩とみることもできる。
グローバル化に伴う危機の連鎖は、G8だけでは解決できない。「地球益」の実現に向かっていかに対話を深めてていくかが問われている。
第一回サミットが開かれたのは一九七五年のことである。当初のメンバーは日米英仏独伊の六カ国だった。
現在のG8の形ができたのは九八年からで、今回はG8を含め史上最多の計二十二カ国が参加したという。
世界の「今、そこにある危機」に効果的に対処するためには、サミットの在り方、持ち方を検討すべき時期なのかもしれない。
サミットを監視するNGOの存在も今後ますます重要になるだろう。目標の実現を監視し、各国に行動を迫ることができるのは「地球益」の立場に立った市民以外にない。
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