厚生労働省所管の財団法人・日本医療機能評価機構(東京都千代田区)は、重大な医療事故につながりかねない「ヒヤリ・ハット」事例の収集を、病院に加えて、調剤薬局でも来年度から始めることを決めた。病院では医薬品にかかわるヒヤリ・ハットが年間5万件以上報告されているが、薬局での調剤ミスなどは、これまで情報収集の窓口がなかった。同機構は多発しているケースなどを公表し、事故防止に役立てる。
調剤薬局は全国に約5万2000店あり、医療機関の外来患者の約6割が調剤を受けている。日本薬剤師会が03年に会員の薬局・薬剤師に行った調査では、4044件のミスが見つかり、薬の規格や数量の間違いが42%、ほかの薬を誤って調剤したケースが19%を占めた。
一方、06年の日本医療機能評価機構の事例収集では、全国の247医療機関から19万5609件のヒヤリ・ハットが寄せられ、うち約3割の5万6513件が薬の投与や調剤、管理に関係するケースだった。薬にかかわる事故も92件起きており、昨年3月には「アルマール錠」と「アマリール錠」、「タキソール」と「タキソテール」といった薬剤取り違えが相次いでいるとする医療安全情報が出されている。
同機構は「複数の診療科を受診した際の薬の重複投与などは、薬局のチェックで防げる。医療機関からの情報と一体的に分析することで、病院と薬局の情報共有化も進めたい」と話す。現在、報告の書式などを検討中で、年度内に登録受け付けを始める。【清水健二】
毎日新聞 2008年7月11日 東京夕刊