外国のメーカに修理/交換してもらうとき課税される関税・消費税を減免する方法
ハードディスクが故障したので、RMA 手続きを行なった上でメーカへ送り返したら、わずか4日で代替品が返ってきた (6月28日)。 RMA++ と思っていたら、 10日後の 7月8日にシンガポールのフェデラル・エクスプレスから 「請求書在中」と書かれた AIR MAIL な封書が送られて来た。 え〜 せっかく RMA を誉め称えるブログを書いたのに、 今になって何か追加で請求されるとわ... orz と、 暗澹たる気持ちで開封してみると...
どきどきしながら「請求書 INVOICE」と書かれた一枚目の書類に目を通すと、 請求額は 1000円。 そんなに高額の請求ではなかったので一安心。 内訳を見ると、
Other Charges | 消費税/付加価値税(Consumption Tax/VAT) | 500 |
Other Charges | 関税・消費税特別手数料(D/T Advancement Fee) | 500 |
合計(Total) | 1,000 |
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関税?
日本って工業製品に対して関税なんてかけていたっけ?
と思いつつ
二枚目の「輸入許可通知書」に目を通すと、
税科目 | 税額合計 | 個数 |
---|---|---|
D 関税 | ¥0 | 0 |
F 消費税 | ¥400 | 1 |
A 地方消費税 | ¥100 | 1 |
なるほど、 メーカが申告した価格 (CIF) $108.00 に対して約 5% の消費税がかかる、 ということで納税額が 500円なのか。 でも「関税・消費税特別手数料」って何なのだろう? 少なくともこの「輸入許可通知書」には「特別手数料」の文字は見当たらない。
まあ高々 1000円だから払っちゃおうか、という考えが頭をよぎる。 ご丁寧にコンビニ払いの用紙まで添付されている。 コンビニ払いか銀行振込を選択可能なようだ。
消費税ってのはいわゆる付加価値税のことである (なぜ VAT (= 付加価値税) という世界的に一般的な名称ではなく、 「消費税」という聞きなれない名称にしたのやら...)。 物品に価値が加わったときにその増分に対して一定割合 (現在は 5%) を納税するのが趣旨であるが、 故障したハードディスクを交換したことが「付加価値」に該当するのだろうか?
確かに私にとっては、 故障したハードディスクは価値ゼロで、 交換してもらったハードディスクは 13000円 (現時点での WD10EACS の小売価格) くらいの価値があるから一見価値が増えたように見えるが、 より厳密に考えると「故障したハードディスク」には「RMA 保証」がついていた (だからこそ交換してもらうことができた) ので、 13000円の価値があったと言ってもよい。
そもそも消費税は、このハードディスクを買ったときに支払っている。 当時は 28140円もしたから、なんと 1340円 (本体価格 26800円の 5%) も、 消費税を払っているわけである。 この上、さらに 500円も消費税を払わされてはかなわない。 これは同一物に対する二重課税ではないのか〜っ。 もんもんと考えているうちに、だんだんハラが立ってきた (^^;)。
というわけで、 なんとかこの理不尽な課税を回避できないか試みることにした。 もちろん、たかが 500円の課税であるので回避できたところで、 かけた労力に見合うわけはないのだが、 まあなにごとも経験である。 軽減できる税金は最大 500円であっても、 軽減交渉という経験はプライスレス。
フェデラル・エクスプレスからの請求書には、 末尾に次のように書いてあった。
Inquiry by e-Mail
e-Mail による請求・お支払に関するお問い合わせ
電話、FAXに加えe-mail による請求・お支払に関する お問い合わせも承ります。
アドレス: seikyukanri@npac.fedex.com
e-mail で問い合わせできるというのはとてもありがたい。 なんせ取り返そうとしている税金はわずか 500円なのであるから、 電話で問合わせたりしたら電話代だけで赤字になってしまいかねない。 とりあえず次のようなメールを書いてみた:
Subject: 消費税立替金に関して Date: Wed, 09 Jul 2008 16:34:16 +0900 フェデラルエクスプレス御中 仙石です。昨日、郵便で消費税の請求書が届きました。 顧客番号: JPNXXXXXXXXXXX 請求書番号: X-XXX-XXXXX 請求書発行日: 06/30/2008 合計: JPY 1,000 これは、輸入した物品に関して、 消費税 500円 消費税特別手数料 500円 の合計 1000円の請求であると理解したのですが、 今回輸入したのは、ハードディスクであり、これは故障品の交換品としてメーカ から送付されたものです。つまり次のような経緯となっています。 (1) 2007年11月30日 新品を日本国内で購入 (28140円 消費税込) (2) 2008年 5月 2日 故障 (3) 6月24日 故障品をメーカ(シンガポール)へ発送 (4) 26日 故障品に対する代替品をメーカが発送 (CIF $108) (5) 27日 通関 すなわち物品 (ハードディスク) の消費税は既に (1) の段階で 1340円を納入済です。 (4) において物品に対して付加価値が加わったわけではないことを考えると、 (5) で再度消費税を納入することは同一物品に対して消費税を二度支払うことに なってしまいます。 これは二重課税に相当すると思われるので、消費税額に関して異議申し立てを行 なおうと思います。すでに御社が立て替えてしまった 1000円について、どのよう に取扱うべきか教えて頂けると幸いです。
お手軽なのでまずはメールで問合わせを行なったわけであるが、 フェデラル・エクスプレスはあくまで通関にかかる税金を 「立て替えて」くれただけであるので、 課税に関する文句をフェデラル・エクスプレスに言うのはお門違いであろう。
課税に対する苦情はやはりお役人に対して言わないと、 ということで翌日 税関相談官に電話してみた。 税関相談官というのは、
税関相談官は、輸出入手続等に関する相談・苦情を処理することにより、 相談等の依頼者に対し正しい知識を供与し、 あるいはこれらの者の誤解を解き、 更には、必要に応じ手続等の是正、改善措置を講ずることによって、 適正かつ円滑な税関行政の推進を図ろうとするものであります。「9301 税関相談官制度について」から引用
という人らしい。 故障したハードディスクを交換するために海外のメーカに送ったら、 戻ってきたときに税関で消費税を取られた旨を説明すると、 いきなり「輸出時に 11条の申請を行ないましたか?」と聞かれた。 申請もなにも、そもそも11条って何やねんと言いたくなるのを抑えて、 その申請を行なっておかないとダメなのですか?と聞くと、 「そうなんですよ〜」という勝ち誇った声が返ってきた。
法律の素人 (= 私) に対していきなり「11条」などと専門用語を振り回したり、 「輸出時に申請しなかったオマエが悪いんだから税金払うのはアタリマエ」 的な言い様は、 「相談等の依頼者に対し正しい知識を供与」すべき使命を負う小役人として、 どうよと思ったが、 ここでゴネたりしていては電話代だけで 500円を突破しかねない。 そこで「11条」という手がかりを与えてくれたことに感謝の意を表して、 早々に電話を切った。 ちなみに「関税・消費税特別手数料」についても質問したら、 それはフェデックスさんが請求している手数料だろう、とのこと。
税関に関係する法令の 11条を探すなんて google さまなら朝飯前である。
すぐ該当する条文を見つけた:
(加工又は修繕のため輸出された貨物の減税)
第十一条 加工又は修繕のため本邦から輸出され、 その輸出の許可の日から一年 (...括弧内省略...) 以内に輸入される貨物 (...括弧内省略...) については、 政令で定めるところにより、 当該輸入貨物の関税の額に、 当該貨物が輸出の許可の際の性質及び形状により輸入されるもの とした場合の課税価格の 当該輸入貨物の課税価格に対する割合を乗じて算出した額の範囲内において、 その関税を軽減することができる。関税定率法 から引用
要約すれば、 逝って来いで輸出したときと輸入したときの性質・形状が同じならば、 関税はかからないよ、ということになる。 これは関税に関する法律であるが、 消費税に関しても同様の法律があるはずと探してみると、 ほどなく見つかった:
(加工又は修繕のため輸出された課税物品に係る消費税の軽減)
第十五条の二 加工又は修繕のため本邦から輸出され、 その輸出の許可の日から一年(...括弧内省略...) 以内に輸入される課税物品(...括弧内省略...)については、 政令で定めるところにより、 当該課税物品に係る消費税の額に、 当該課税物品を関税定率法第十一条(加工又は修繕のため輸出された貨物の減税) の輸入貨物とみなして計算される同条に規定する割合 を乗じて算出した額の範囲内において、 その消費税を軽減することができる。
消費税についても、関税定率法第十一条の趣旨が適用されるということのようだ。 つまり同じものを海外と往復させても消費税は課税されない。 今回の場合、 修理ではなくて交換なので断言はできないが、 修理の際に一部のパーツを交換することはよくあることだし、 ハードディスク自体が一つのパーツであるわけだから、 全交換も修理の一形態と言えなくもない。
次にどういう行動をすべきかは、 フェデラル・エクスプレスの返事を見てから考えよう、と思っていたら その日のうちに返事がメールで届いた。 この手の問合わせって 3営業日とか 5営業日かかるものだと思っていたので、 恐ろしく素早い対応である。 RMA といい問合わせに対する対応といい、 この迅速さがサービスの世界標準なのか。
From: "フェデックス請求管理部" <seikyukanri@npac.fedex.com> To: Hiroaki Sengoku <sengoku@gcd.org> Subject: Re: 消費税立替金に関して Date: Thu, 10 Jul 2008 17:41:59 +0900 仙石 浩様 ご利用有難うございました。 経緯の内容から今回は代替品ですので荷送人が本来負担しなければならないと 思います。つきましては請求金額を取り消しさせて頂きますのでよろしく お願い致します。 お手数おかけいたしました。 ご利用ありがとうございます。 よろしくお願いいたします。 フェデックス カスタマーサービス 請求担当 ○○ 電話 0120−732−327
荷送人というと Flextronics Manufacturing (つまりハードディスクのメーカ) なのであるが、 メーカが代替品の消費税を負担しなければならない、というのは初耳である。 有償修理ならば、その修理代金に消費税がかかるのは当然だと思うが、 無償交換でも消費税がかかるのだろうか? まあ「請求金額を取り消しさせて頂きます」と言ってくれているので、 このまま放置しても構わないだろう。