「社会の仕組みや金銭感覚を体験的に学んでほしい」と、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つ女性が、奈良市立三笠中学校(同市三条川西町、阪本豊一校長)で始めた「金融(マネー)教育」が5年目を迎え、10日に今年3回目となる授業が行われた。女性は昨年7月に54歳で急死したが、FP資格をもつ友人らが遺志を継いで授業を継続。女性の死から約1年となる同日は16人が教壇に立ち、生徒たちにモノの価格の仕組みを説いた。
女性は青山久仁子さん。不動産賃貸会社「大一車輌」(同市三条大路)に勤務していた平成15年、貯蓄や投資、保険、税金対策などお金の問題に総合的にアドバイスできるFP資格を取得。プランナーの仕事とともに、子供たち向けのマネー教育が必要と考え、ボランティアでの授業開催を三笠中にもちかけた。
同中の勝間孝一教頭(当時は学年主任)が青山さんと高校の同級生だった縁などもあり、2年生を対象に総合学習の時間を利用して年間計7時間の開講が決定。FPの勉強会や仕事を通じて知り合った青山さんの仲間約20人も参加し、16年5月に1回目を開いた。今では「生徒の発想が刺激になり、成長を見るのが楽しみ」と、授業を楽しみにしているFPもいる。
しかし、発案者の青山さんは昨年7月、体調を崩して急死。ともにマネー教育に取り組んだ仲間たちが青山さんの遺志を継いで授業の継続を決め、学校側も「消費者教育やお金の価値を知る意味から意義深い」と実施を希望したことから、今年5年目に突入した。
10日の授業では、FPら16人が2人1組でペアを組み、2年生全8学級で「モノの値段がきまる仕組みと商品比較」をテーマに指導。ペットボトルのお茶3種類を使って、商品の材料費や経費、儲(もう)けの構成を予想したり、実際に3種類を飲み比べて総合評価をつけたりして、商品を選ぶ目を養うなどした。
青山さんの後継者としてマネー教育の事務局を担当する「FPオフィスwill」(大阪府交野市)代表、前野彩さん(34)は「青山さんはこの学習を通して、子供たちに『価値観』『倫理観』をはぐくんでいくことが大切と考えていた」と振り返り、「同様の授業は別の学校からもオファーが来ており、広がりをみせている。青山さんの思いを受け継いでいきたい」と話していた。
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