第90回全国高校野球選手権記念奈良大会(奈良県高校野球連盟など主催)が10日、橿原市の県立橿原球場で開幕した。44チームが出場し、選手たちは夏の厳しい日差しの下で白球を追い、あこがれの甲子園を目指して熱戦を展開する。同日は開会式と1回戦3試合が行われ、試合巧者ぶりを発揮した法隆寺国際が奈良北を3−1で下し、高取国際は7−6で大淀に逆転勝ち。吉野は高円を16−2の7回コールドで下してそれぞれ2回戦に進んだ。
午前9時半に始まった開会式では、昨年度優勝した智弁学園を先頭に、真っ黒に日焼けした球児たちが堂々と入場行進した。
平田明利・県高野連会長は「90回という歴史のもとで野球に打ち込める幸せを感じながらグラウンドを駆けめぐってください」と激励。選手宣誓では、登美ケ丘の山根拓也主将(3年)が「野球にありがとう。感謝の気持ちを胸に、夢の実現へ最高の大会にすることを誓います」と力強く宣言した。
行進に合わせた演奏は、例年の高校吹奏楽部ではなく、県内の主婦らでつくるブラスバンド「ママさんブラスnara」(大和郡山市、菅家英美代表)や「ママブラスぷらす!」(王寺町、村上和代代表)などが担当。90回記念大会ということもあり、県高野連が両団体に要請して実現した。
普段は室内での演奏が多い中、広々とした球場がステージとあって、総勢80人のメンバーは緊張した様子ながらも、選手たちを勇気づけようと力強く演奏。菅家さんは「晴れの舞台で行進する球児たちに『頑張って』という気持ちで演奏した。小学3年の次男が野球をしているので、将来の成長した姿と重なりました」と話していた。
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■「1人でも続けてよかった」 御所東・杉本選手
入場行進の殿(しんがり)を務めたのは「45番目の出場校」御所東。校名紹介のアナウンスを受け、観衆からひときわ大きな拍手がわき起こる中、たった1人の部員、杉本尚士選手(3年)が背番号「1」をつけて堂々と歩いた。
御所東は2年前、御所工と統合し御所実業高校に。同年から御所東の生徒募集が停止されたため、杉本選手は最後の御所東選手として、3年間ほとんど1人で野球を続けた。
杉本選手が入場行進に臨むのは今回が最初で最後。「最後まで野球を続けた3年生を、何とかしてあげたい」という、県高野連の粋なはからいだった。
行進では、同級生が1塁側スタンドに「いつまでも忘れないでください・御所東高」と書いた横断幕を掲げ、志を貫いた杉本選手にエールを送った。開会式終了後、杉本選手は「緊張で頭が真っ白になっていたが、スタンドの拍手がとてもうれしかった。1人になっても野球を続けてよかった」と感慨深げ。「御所東という高校は存在した。忘れないでほしい」と話し、球場をあとにした。
明治31年創立の御所東。来年3月、杉本選手をはじめ最後の生徒の卒業とともに110年の歴史にピリオドを打つ。
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