硫化水素による自殺の多発を受け、県警科学捜査研究所は、自殺を図った人などが硫化水素を吸い込んだかどうか現場で判断できる小型の検知管を開発した。これまでは研究所に持ち帰り機械の分析結果を待つしかなかったが、検知管はその場で血液中の硫化水素濃度を測定でき、科捜研は「死因究明や救急医療の診断時に活用できる」と期待している。
開発したのは長さ約15センチ、ガラス製の「硫化水素分離管」。硫化水素ガスを測る既存の検知管とつなげて「血液中硫化水素検知管」として使う。分離管に血液を入れて血液中の硫化水素をガス化させ、検知管で濃度を測る。血液中に硫化水素が含まれると、検知管の検知剤が白からピンク色に変わる。
科捜研が開発に乗り出したのは4月上旬。硫化水素自殺の度重なる発生で、全国の警察からガス測定器メーカーに「測れるものはないか」という問い合わせが相次ぎ、メーカーからの依頼を受けて研究を始めたという。硫化水素を発生、分離させるのに適した酸を見つける作業に最も時間がかかり、約2カ月後に完成にこぎつけた。
県警の検視担当が携帯している。科捜研は、11日から和歌山市で開かれる「第30回日本中毒学会総会」で発表する予定だという。【山崎理絵】
毎日新聞 2008年7月11日 地方版