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【主張】ミサイル発射 イラン危機高まりを憂慮
核開発疑惑で国連の制裁下にあるイランが、国連決議を無視する形で、新型中距離弾道ミサイル「シャハブ3」1発を含む9発のミサイル発射実験を強行した。
発射されたシャハブ3は射程2000キロで、イランが敵と呼ぶイスラエル全土や欧州の一部、東はインドまでを射程に収めるものという。
イラン側は、イスラエルが先に地中海でイラン攻撃を想定した大規模な軍事演習を行ったことへの対抗措置だと表明した。ペルシャ湾で警戒を強める米海軍への牽制(けんせい)との見方もある。
核兵器開発疑惑が解消されないままのイランが、その一つとなるウラン濃縮を停止せず、しかも、核兵器の運搬手段となるミサイルの長射程化を進めれば、その脅威は高まるばかりだ。
イランのアフマディネジャド大統領は2005年、「イスラエルは地図から抹消されるべきだ」と過激な演説をし、批判された。イスラエルや米国が危機感を高めるのも無理もない。中東のアラブ諸国の警戒感も強い。
懸念されるのは、イランとイスラエル、イランと米国の軍事対立がエスカレートすれば不測の事態を招きかねないということだ。イスラエルは自国の生存が脅かされるとして、1981年にはイラクの、昨年はシリアの核施設を電撃空爆した前歴を持つ。
米国はイスラエルによる軍事攻撃に反対し、外交による解決の方針を明言しているが、軍事選択を完全に捨てたわけではない。
だが、現在の国際情勢下、軍事選択はあまりにもリスクが大きい。まず、中東地域が大混乱に陥る。石油埋蔵量が世界2位のイランであれば、原油価格のさらなる暴騰も必至だ。
イランはすでに、ホルムズ海峡の封鎖も示唆している。中東原油の大半を同海峡に依存している日本だけでなく、世界経済が壊滅的な打撃を受ける。イラン危機には外交による解決以外にない。
対イラン交渉は、国連安保理常任理事国とドイツの6カ国が中心に進めているが、中露が消極的で足並みがそろわない。だが、北海道洞爺湖サミットでは首脳たちがイランに対し、一致して強い懸念を表明した。
イランと北朝鮮は、核・ミサイルでも協力関係にあると伝えられる。イランの問題は日本にとっても直接的な脅威につながる。