北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の首席代表会合が北京で始まった。北朝鮮が6月末に提出した核計画の申告書内容の評価や検証体制づくりが主要課題である。
6カ国協議が開かれるのは約9カ月ぶり。北朝鮮による核計画の申告は、昨年末を期限にしていた合意より半年も遅れた。それでも北朝鮮が核関連施設の無能力化推進とともに合意義務を履行、協議の再開にようやくこぎつけた。
問題はこれからだ。北朝鮮が提出した申告書の内容がどこまで正確かを厳しく検証する必要がある。協議参加国による核施設の立ち入り検査、北朝鮮の現場技術者への聞き取り調査はもちろん、かつて核施設の監視に当たっていた国際原子力機関(IAEA)の専門家による検証参加は最低条件である。
申告書は核兵器には触れていない。高濃縮ウラン型核計画や核拡散の疑惑もあいまいだ。核兵器の原料となるプルトニウムも、1993年の核拡散防止条約(NPT)脱退宣言で緊張が高まった第1次核危機以前の抽出量は詳細を開示していないという。当時の核危機はまさに抽出量の虚偽申告疑惑が発端だった。
そもそも米国が北朝鮮への要求水準を引き下げ、不完全な内容の核申告を受け入れたのだから、抜け穴なき検証体制を確立するのは当然だ。申告内容の正確な検証を怠れば、北朝鮮が再び「核の脅威」を振りかざす懸念は増す。
北朝鮮は協議再開に先立ち、見返りの経済・エネルギー支援が「40%しか履行されていない」と不満を示した。支援提供で満足する回答を得られなければ、検証への全面協力に難色を示す可能性がある。
9月に建国60周年を迎える北朝鮮にとって経済支援は欲しいだろうが、支援の遅れは逆に検証協力を渋る格好の言い訳になる。米政府が議会通告したテロ支援国家指定の解除が発効するのは8月11日。指定解除だけでも外交的勝利を国内で宣伝できると踏んでいるフシがある。
米国は北朝鮮が協力に難色を示すなら、テロ国家指定解除の撤回も辞さない姿勢で協議に臨むべきだ。
拉致問題も忘れてはならない。6カ国協議は核問題に集中すべきとの議論になりがちだが、核と拉致問題の並行解決を目指す日本の立場を揺るがしてはならない。協議の場を通じて日朝協議の早期再開を求め、北朝鮮に真剣な対応を促してほしい。北朝鮮が拉致被害者の再調査を約束した日朝協議からすでに1カ月が過ぎようとしている。