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社説:北朝鮮核申告 抜け道なき検証の枠組みを

 北朝鮮をめぐる6カ国協議の首席代表会合が北京で始まった。先月下旬、北朝鮮が核計画申告書を提出したのを受けて、その内容が妥当かどうか、また申告内容をどう検証するかを話し合うのが主な目的だ。

 北朝鮮の核兵器開発は日本の安全保障の根幹にかかわる問題であり、国の安全に関して妥協や楽観が許されないのは言うまでもない。北朝鮮の完全な核廃棄に向けて絶対に抜け道を許さない検証の枠組みが必要だ。

 逆に言えば、6カ国協議のプロセスがどんな形であれ終わったとしよう。その時点で、北朝鮮に核爆弾や核兵器用プルトニウムなどが残されるなら、日本にとって取り返しのつかない事態と言うべきである。

 そうならないよう、検証はあくまで厳密に行わなければならない。具体的な方法として、北朝鮮核関連施設への立ち入り、核関連物質のサンプル調査、北朝鮮の核専門家らからの聞き取り--などが挙げられている。いずれも妥当な措置であり、日本も当然参加すべきである。

 米中主導の6カ国協議にあって、時に日本はカヤの外に置かれる印象もあるが、北朝鮮の脅威をまともに受ける日本こそ、検証作業に深く関与して脅威を取り除く必要がある。

 また、いかに北朝鮮が難色を示そうと、核問題の検証に国際原子力機関(IAEA)が参加するのは自然な成り行きだ。米国は、北朝鮮に対する「テロ支援国家」指定解除が発効する8月11日までに、申告書とは別枠で扱われるウラン濃縮問題やシリアへの核技術支援問題なども検証するという。これも当然である。

 もう一つ大事なのは、北朝鮮が保有するとされる核爆弾の数量を明らかにすることだ。そうでないと核廃棄への展望も開けまい。

 米ブッシュ政権の任期はあと半年。誰が次の大統領になろうと、米政権の常として外交政策の見直しが必要になる。そもそも次期政権が北朝鮮問題を優先課題とするかどうかも流動的だ。朝鮮半島の危機回避に向けた米朝対話の原点は、94年の米朝枠組み合意に求められよう。これを起点としても既に14年、世界が北朝鮮の脅威に悩んできたことを思えば、ブッシュ政権には、ぜひとも任期内の北朝鮮の核廃棄に道筋をつけてもらいたい。

 北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の宣言は、6カ国協議の取り組みを支持し、拉致問題にも言及した。拉致問題は、北朝鮮が再調査を約束したにもかかわらず具体的な動きがみられない。

 それどころか北朝鮮は、今回の6カ国協議で、エネルギー支援を控える日本への反発をあらわにする可能性もある。情勢は容易ではないが、日本としてもサミットの追い風を生かして打開の糸口を探る、したたかな外交力が求められる。

毎日新聞 2008年7月11日 東京朝刊

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