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医師が危ない
第5部 難局の向こうに

 (13)「何もかも」は無理

救急病院の役割分担を討議する小委員会の設立を決めた高知県救急医療協議会(7月2日、高知県庁)  高知医療センター脳外科の森本雅徳部長(56)、福井直樹医師(40)の脳卒中治療に懸ける熱い思いを聞きながら、私は複雑な気持ちになった。というのは、世間はその熱意を、それほどしっかり受け止めてくれているとは限らないからだ。

 この取材中、がっかりしたことがあった。脳外科の不眠不休の奮闘を知人に話したところ、「そんな寝ていない先生に手術してほしくないですね」と、あっさり言われた。

 自らの命を削って患者の救命をしているのだが、その思いは伝わりにくい。それどころか万が一、ミスが起これば「寝不足」は通らない。患者側からすれば「当直医は昼間、休養を十分取って夜中の急患に備えている」と思っても当然だろう。

 患者ばかりではない。地域のかかりつけ医にも似たような現実がある。例えば、老人保健施設で休日や夜間に入所者が急変した時、本来は嘱託医に連絡が行くはずが、意外とそうならない。

 電話がつながらなかったり、「何かあれば高知医療センターに連絡を」とあらかじめ施設側に指示を出している医師もいるようだ。

 高知医療センターの取材中、脳卒中で意識を失い、瞳孔も散大した瀕死(ひんし)の超高齢者が救急車で運ばれてくる場面に何度も遭遇した。

 既に一線を越え数日内に亡くなるか、一時的に存命しても鼻から管を入れ栄養管理をして見守るだけ。救命救急センターの治療対象でないことは分かっている。

 「地元で診てあげてほしいんです。でも、そんなこと言うと他の病院から、『高知医療センターは何様だ』って言われそうだし」と脳外科スタッフ。

 また、地元で「もう手の施しようがない」と言われたものの、深夜に家族が高知医療センターへの転送を望む場合がある。

 「わざわざここまで来ていただいて、『ここで亡くなれば本望です。延命は希望しません』と家族から言われたら…。僕らの役割は何なんでしょう。終末期医療ではないのですが」とため息をつくシーンも何度も見た。

 入院の手配をし、家族に説明、書類を作れば三時間はかかる。後から集まる親族にも同じ説明を求められる。結局、徹夜。そのまま翌朝の診療や手術に突入する。

 それは、医師もつらいが、患者もつらい。高知県内のあるベテラン医師は言う。「疲れがたまると、ミスを起こす確率は当然高くなる。ドクターの基本は自分の健康をまず守ること。それが患者さんのためにもなるんです。手術中に医師が倒れたら笑い話では済みません」

 「三次に特化するつもりはない」という森本部長の言葉は、高齢化先進県で脳卒中の多い高知県には心強い限りだ。しかし、それならせめて、治療適用のない超高齢の急患対応は勇気を持って断るべきではないか。神経内科崩壊でマンパワー不足が続く中、脳外科が何もかも背負うのは無理だろう。

 心優しい森本部長は、救命救急センター長という立場もあり絶対にそんな言葉を口にしないから、筆者があえて言う。

 解決策として、高知医療センターの神経内科医が見つかるまででも、脳疾患救急に対する各病院の何らかの協力体制が論議されてもいいのではないか。

 そう思っていた矢先の七月初め、高知県救急医療協議会(永野健五郎会長=高知県医師会長)で、救急病院の役割分担を検討する小委員会の設立が決まった。行政、医師会、消防、救急医療機関が一体となって脳卒中などの救急医療を話し合う場が、高知県内で初めてできたのだ。実効性を持つかは活動次第だが、一歩前進は間違いない。

 【写真】救急病院の役割分担を討議する小委員会の設立を決めた高知県救急医療協議会(7月2日、高知県庁)

 ◇  ◇

 さて、連載の第一―三部は、高知医療センター脳外科の一カ月の残業が二百時間に及ぶという過酷な労働実態を報告した。それを労務管理のお目付け役はどう見ているのだろう。連載を締めくくるに当たり、高知労働局を訪ねた。

(2008年07月08日付・夕刊)

 
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