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日弁連、増員抑制に転換へ 法曹3000人計画否定

2008年7月10日15時1分

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 司法試験合格者を2010年までに年間3千人に増やす政府計画をめぐり、日本弁護士連合会(宮崎誠会長)が「数値目標にとらわれることなく慎重に審議し、当面の増員のペースダウンを求める」として、計画を推進する立場から方向転換する方針を固めた。近く法務省に提言する。

 日弁連は来週にも理事会を開き、提言を正式に決める予定。法務省はこの提言などをふまえて、近く省としての方向性をまとめる見通しで、司法制度改革の根本が大きく変わる可能性もある。改革に携わってきた弁護士や法曹関係者には増員計画の見直しに対し批判的な意見も多く、今後、議論を呼びそうだ。

 提言案は、合格者が増え続ける現状について、一部の法科大学院で「基本科目の教育が不十分であることが指摘されている」などとして司法修習生の「質の低下」を認めている。その上で「3千人との数値目標のみを追求することは、法的基礎知識が不十分で、実務能力に乏しい法曹を出現させることになりかねない」とし、毎年、合格者数の目標を定める現行の法曹人口計画を事実上否定した。

 さらに、弁護士事務所に就職できない弁護士が増えていることについては「先輩からの指導を経ることがないまま実務に当たることになる」として、就職問題が「質の低下」の一因になっていると指摘している。

 法曹人口をめぐっては、地方での弁護士不足を解消するなど、法律家を社会に行き渡らせようと、日弁連は00年11月、臨時総会で法曹人口の増加を求める決議を採択。政府も、裁判員制度をはじめとする司法制度改革の一環として、02年3月に「3千人計画」を閣議決定した。

 しかし、合格者の増加に伴い、実際に就職難が指摘され、自分たちの仕事が減ることに対する危機感などから、反対論が増大。今年の日弁連会長選は司法改革推進派と反対派の一騎打ちとなり、推進派の宮崎会長が「見直し」に言及して当選を果たした。

 司法制度改革に携わってきたある弁護士は、今回の提言について「改革路線に逆行する提言を日弁連が真っ先に打ち出すとは情けない。大きな司法を目指す理念は忘れ去られたのか」と話した。

 司法試験の合格者は、90年ごろまで年間500人前後で推移していたが、昨年、初めて2千人を超えた。いまの計画通りなら、現在約2万9千人の法曹人口は10年後に5万人規模になる。(市川美亜子)

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