学生時代、スーパーでアルバイトをしていたことがありました。土用の丑(うし)の日が近付くとウナギを焼くコーナーが設けられ、威勢のいい掛け声とかば焼きのにおいが。昼休み、私はアパートに帰って、熱々のご飯の上に…缶詰を開けて食べていました。かば焼きのにおいや姿形を思い出しながら。その時の渇望が強烈だったせいか、二十年たった今でもウナギを食べるとぜいたくな気分になります。
ウナギ好きの人には腹立たしい報道が続いています。一連のウナギにまつわる不正事件。産地をごまかし、仲介取引をでっちあげ出荷した揚げ句、現金を渡し関係者の口封じを図る。おまけに使用禁止抗菌剤が検出、賞味期限もウソ表示とあっては、わき立つ食欲もしぼんでしまいそうになります。
不正があった舞台の一部に、かつて私が勤務した高松が登場することもあり、やり切れなさはさらに募ります。まじめに商売をしている業者には迷惑千万な話でしょうが、スーパーに並ぶかば焼きを前に「むむむ」と腕組みをして考え込みそうになります。
すっきりしない気分を晴らすには、徹底的な事件の真相究明しかありません。犯人を捕まえ、全容をあぶり出し強力な再発防止策を講じる―。食品偽装事件すべてに言えることでしょう。連日掲載されている記事を注視したいものです。おいしさを心底楽しむためにも、ウナギの話だからといって「泥にまみれた」とか「つかみどころのない」話で…なんていう落ちでは絶対に終わらせたくありません。
(玉野支社・高木一郎)