今年はカナダの女性作家L・M・モンゴメリーの小説「赤毛のアン」が出版されて百周年になる。世に出たとたん大評判をとり五年で三十二回も版を重ねた。
極めつきは米国の大作家マーク・トウェインからの礼賛の手紙だ。「あなたは<ふしぎの国のアリス>いらいのもっとも楽しい、またもっとも愛すべき子どもを創造しました」。
やせっぽちで、顔はそばかすだらけ。おまけにニンジンのような赤い髪。空想好きで、おしゃべりな少女が、美しい田園の中で、周囲の愛情に包まれ、のびのびと育ってゆく。百年前の小説とはとても思えない。
少女のころから書き続けた作者の日記を翻訳した岡山県立大教授の桂宥子さんによると、アンがゼラニウムの花に「ボニー」と名付ける場面や、空想の友人を持っているところなど、少女時代そのままという。
常に夢と希望を忘れずに人生を前向きに生き抜こうとする作者の姿が小説に投影されている。「女は家にいるもの」という考えが普通の時代に、アンは大学への入学を目指す。
「一つの野心を実現したかと思うと、また別のがもっと高いところに輝いているんだもの」。アンの言葉は、元気そのものだ。新しい女性の生き方を描いたところに、世界でも日本でも圧倒的な人気を集める秘密があるのだろう。