主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が、三日間の日程を終え閉幕した。環境や経済、原油・食料価格の高騰など地球規模で広がる危機にどう対処するか注目されたが、一定の成果の一方で主要八カ国(G8)の結束を示すため決着にあいまいさを残した面は否めない。
今回のサミットにはG8だけでなく、経済成長著しい中国やインドといった新興国、さらにはアフリカなど二十カ国以上の首脳らが参加した。問題が複雑に絡み合っている現状を表したといえよう。
中でも最大の焦点が温暖化対策だった。G8は二〇五〇年までに世界全体で温室効果ガス排出量を少なくとも半減させるとの長期目標について「ビジョンを国連気候変動枠組み条約の全締約国と共有し、採択を求める」とする首脳宣言で合意した。
長期目標については、昨年のハイリゲンダム・サミット(ドイツ)では、「真剣に検討する」との表現にとどまっていた。ブッシュ米大統領が「中国やインドなど新興国を含まなければ設定する意味がない」と否定的だったからだ。今回どこまで踏み出せるか注目されていた。
「五〇年までに少なくとも半減」させるとの長期目標に合意したことは一定の前進といえよう。米国が消極的だった中期目標についても、「野心的な国別削減目標を実施する」ことを初めて打ち出した。
とはいえ米国へ配慮するあまり、「玉虫色」の内容となってしまった。「五〇年までに半減」も世界の国々が共有するというもので、G8が率先して取り組む姿勢を明確にしたとはいい難い。中期目標も具体的数値は盛り込まれていない。
こうしたG8の首脳宣言に、「先進国と途上国の責任には差がある」とする新興国などが強く反発した。サミットに合わせて九日に開催された、G8と招待を受けた排出量の多い発展途上国の計十六カ国による「主要経済国会合(MEM)」では、G8が長期目標の共有へ理解を呼び掛けたものの合意に至らなかった。
議長総括を行った福田康夫首相は、温暖化対策について「G8内で立場の違いを乗り越え、国連の交渉に弾みをつけることに貢献できた」と成果を強調した。しかし、先進国と新興国などの隔たりは埋まらず、今後に課題を残したといえよう。
差し迫った温暖化に対応するには、各国が危機感を共有して協調を強め取り組んでいくことが必要だ。途上国の積極的な参加と、それを促す先進国の説得力ある行動が欠かせない。
教育不信を募らせる腐敗の実態が次々と明るみに出てきた。大分県の教員採用をめぐる汚職事件や管理職昇進人事にまつわる疑惑である。
教員採用汚職事件では、教育関係者五人が贈収賄容疑で逮捕された。調べでは、二〇〇七年の小学校教員採用試験で、女性小学校長が長男と長女を合格させるため、県教委参事に現金三百万円と商品券百万円を贈った。当初は仲介役として逮捕された小学校教頭夫妻も、長女が受験した〇六年の採用試験での便宜の謝礼として、当時県教委ナンバー2だった教育審議監と県教委参事にそれぞれ商品券百万円を贈ったという。
教員採用をめぐっては、とかく縁故優先などのうわさが絶えない。それにしても、今回の汚職の構図には驚かされる。公正と公平を子どもたちに教えるのが教育者の務めのはずだ。適正に選考すべき採用試験を踏みにじる許し難い行為といえよう。
逮捕された県教委参事は県警の調べに、上司の指示により〇六年と〇七年の小学校教員の採用試験で少なくとも三十人、中学校の採用試験でも一部の受験者に点数を水増ししたことも供述しているもようだ。組織ぐるみで不正行為が常態化していたことをうかがわせる。
さらに、校長や教頭への昇進人事をめぐっても金品が飛び交う疑惑が浮上している。同県佐伯市の女性校長ら三人は、昇進で便宜を受けた謝礼などの名目で、逮捕された県教委参事にそれぞれ五十万―十万円の商品券を贈っていたことを告白した。
不正、腐敗は底なしの様相を見せている。汚職構造の徹底解明を急ぎ、うみを出し切ることが肝要だ。教育の世界は閉鎖社会とも言われる。文部科学省は全国調査に乗り出すとともに対策を講じる必要があろう。
(2008年7月10日掲載)