◎減税の提言 景気刺激策の一番手にも
自民党の中川昭一元政調会長が今月発売の月刊誌で、所得税の定率減税復活や法人税減
税を含む緊急経済政策を提言した。エネルギー・原材料価格の高騰で、北陸でも企業の景況感が急速に悪化し、個人消費も弱含んでいる。減税を真剣に検討すべき時期であり、中川氏の提案は傾聴に値しよう。
それにしても、中川氏以外の有力政治家から、景気刺激策の一番手というべき減税につ
いて、ほとんど発言がないのはどうしたことか。財政が苦しいなかで、減税などできないと短絡的に思いこんでいるのだとしたら、政治家失格ではないか。手をこまぬいているうちに景気が失速してしまうと、税収のさらなる落ち込みは避けられなくなる。景況感悪化の元凶というべき原油高をにらみながら、減税を含めた景気刺激策の検討を始めてほしい。
中川氏の提案は、国民の将来に対する不安解消と経済活性化の実現を目指し、二十一兆
円規模の経済対策を行うとした内容である。二兆六千億円の定率減税復活や二兆円の法人税減税、子どもの数が多ければ多いほど税額が抑えられる「N分N乗方式の所得税制」などが柱で、財源には道路特定財源の活用などを挙げた。
中川氏は、現時点での消費税引き上げについて、「焦点がずれているとしか言いようが
ない」と批判しているが、まったく同感である。石川県では、最大手の建設会社「真柄建設」が経営破たんし、連鎖倒産が危惧されている。負債総額は約三百四十八億円、債権者は約二千社に及んでおり、地域経済への打撃は深刻だ。石川、富山など中部六県の今年上半期の倒産件数(負債総額一千万円以上)は五年ぶりに千件の大台を超え、景況感の悪化が実体経済に波及し、雇用や家計を圧迫し始めている。景気の後退は全国に及んでいるのであり、消費税の引き上げなどできる状況ではない。経済学の教科書に従えば、減税が必要なときだろう。
日本以外の主要国では、景気対策として減税が当然のように論議されている。日本だけ
が減税をタブー視していると、「角をためて、牛を殺す」ことになりかねない。
◎振り込め詐欺増加 「三位一体」で被害防止を
振り込め詐欺被害が全国的に急増しており、県内でも一―六月の件数は八十六件、被害
額は約六千七百万円と、いずれも前年同期を大きく上回っている。振り込め詐欺は高齢者が被害者になることが多く、暴力団の資金源になっているケースもあり、この状況を見過ごすわけにはいかない。警察と金融機関、さらに地域が「三位一体」となって被害防止に取り組む必要がある。
警察の役割は、振り込め詐欺の手口、不審な電話を受けた際の対処方法などを高齢者ら
に周知することだ。次々と新しい手口が出てくることが、振り込め詐欺被害が後を絶たない一因とされており、今年も、各種手口の中では新手の部類に入る「還付金詐欺」の増加が被害件数と金額を押し上げている。犯人が税務署職員などを装ってお金をだまし取るやり方だ。そうした手口の巧妙化を速やかに高齢者らに伝えて警戒を呼び掛けることは、被害防止の第一段階と言えよう。
金融機関の目配りと気配りも大事である。たとえば、還付金詐欺の場合、犯人が携帯電
話で現金自動預払機(ATM)を操作させてお金を振り込ませるのが一般的な手口だが、金融機関の従業員が気を付けていれば、そうした行動を取る高齢者らを見つけることができる。実際に従業員が被害を防いだケースも少なくない。
振り込め詐欺の「防波堤」になることが、顧客サービスの向上と地域貢献につながると
の認識を持ち、あらためて従業員への指導を徹底してほしい。ただ、最近は有人店舗では厳しい目が光っているということで、犯人が無人のATMを使うよう指示する例が増えているという。こちらの対策も急いでもらいたい。
特に被害に遭いやすいとされる独り暮らしの高齢者を地域で見守り、支えることも必要
だろう。お金を振り込む前に誰かに相談するだけで、被害は相当減らすことができると言われる。町会単位で普段の声掛けに努めるなどして、不審な電話を受けた時にも気兼ねなく相談できるような関係を築いておきたい。