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政府(厚労省他)


7月9日の中医協

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は7月9日、診療報酬改定結果検証部会(第18回)、薬価専門部会(第47回)、調査実施小委員会(第24回)、総会(第131回)を開催した。前回延期になった薬価専門部会では、新薬の価格を特許期間中は引き下げない仕組み(エグゼンプト・ドラッグ)を中心に意見交換。総会では、外来管理加算の「5分要件」の根拠が議論になった。(新井裕充)

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6月25日の中医協 (前回の中医協)
6月4日の中医協 (前々回の中医協)


 最初に開催した診療報酬改定結果検証部会(部会長=庄司洋子・立教大大学院教授)では、▽2006年度診療報酬改定の結果の検証(07年度特別調査) ▽10年度診療報酬改定の結果の検証―の2点を審議した。

 「06年度診療報酬改定の結果の検証」では、06年度改定の影響について、厚労省保険医療企画調査室長が最終報告書を説明。「改定により、良い効果があった」「悪い影響はなかった」と評価した。同部会は昨年、「セカンドオピニオン外来の利用状況」など9項目に関する調査(07年度特別調査)を実施し、その結果は昨年10月10日と11月7日の同部会で既に報告済みで、これと今回の最終報告の内容は同じ。

 「10年度診療報酬改定の結果の検証」では、今年度から調査を開始する5項目(勤務医の負担軽減、外来管理加算、後発医薬品、後期高齢者診療料、終末期相談支援料)について、調査対象やスケジュールなどを具体的に示した。
 今回の調査では、「医師の説明内容に対する理解度や認知度」を患者に対して調査するなど、前回の調査よりも踏み込んだ内容になっている。委員からは、「患者に対するインタビューを実施してはどうか」「算定できなかった病院に対して、その理由を調査してはどうか」など、さらに詳細な実態調査を求める意見が出された。次回会合で、再度議論する。

■ 薬価専門部会
 
冒頭、6月25日付で専門委員に就任した禰宜寛治氏(武田薬品工業業務統括部長)が「国民の視点で、誠実、公正をモットーに薬価制度の議論に参画したい」とあいさつした後、部会長の選挙が行われた。
 1号側と2号側からの意見により、部会長に選任された前田雅英委員(首都大学東京都市教養学部長)は「公正、公平を旨として議論を透明化するよう努力したい」とあいさつした。

 この日は、08年度薬価制度改革で「引き続き検討を行う」とされた事項のうち、「特許期間中の新薬の薬価改定方式」について議論。昨年12月に日本製薬団体連合会(日薬連)が提案した薬価制度改革案について、製薬業界代表の禰宜専門委員が説明した後、委員が意見を述べた。
 同改革案によると、医薬品の開発をめぐる現在の課題は主に、「未充足の医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)への対応」と「ドラッグ・ラグの解消」の2点で、これらの問題を解決するため、日薬連提案の薬価制度の導入を求めた。
 具体的には、▽販売企業が届け出た価格を「新薬評価組織」(仮称)が評価し、中医協が承認する(届出価格承認制) ▽特許期間または再審査期間中の医薬品などを「エグゼンプト・ドラッグ」とし、一定の要件の下で価格の改定を猶予・免除する―ことなどを求めている。

 前田部会長は「後発品の使用促進と新薬の開発を両立させるのは難しい問題」と感想を述べた上で、意見を求めた。
 診療側の藤原淳委員(日本医師会常任理事)は「医療は限られた財源の中で、『医療崩壊』とも言われているのに、製薬企業には潤沢な資金がある。同じ土俵にいる企業が、(開発資金を)担保する仕組みを提案するのはいかがなものか」と批判。支払い側の対馬忠明委員(健保連専務理事)も、「届出価格承認制を主張しているが、昨年12月には『申請価格方式』と言っており、短期間ですぐに変わるのは専門委員というお立場としてどうか」とただすなど、厳しい指摘が相次いだ。

■ 調査実施小委員会
 
議題は、「小委員長の選挙」と「第16回医療経済実態調査」の2点。小委員長には、遠藤久夫・中医協会長が選任された。
 「第16回医療経済実態調査」では、昨年10月26日の同委員会で「速報」として示された調査結果の確定版(最終報告書)について、厚労省の担当者が説明した。昨年の速報と今回の最終報告書の内容は同じ。
 質疑では、同調査の「医療機関等調査」の結果について、邉見公雄委員(全国公立病院連盟会長)が「10対1入院基本料を算定している病院の経営状態が悪い。ここが地域医療の主力部隊だ」と指摘。松浦稔明委員(香川県坂出市長)は調査方法を抜本的に見直す必要性を強調し、「1か月だけの期間に基づいて、すべてを網羅したように議論していいのか。1年間のデータで幅広く考えるべきだ」と述べた。

 一方、同調査の「保険者調査」については、委員から意見は出なかった。同調査によると、保険者全体の経常収支差が4192億円の黒字。組合健康保険は2372億円、政府管掌健康保険も1117億円の黒字で、国民健康保険は323億円の赤字だった。

■ 総会
 
議題は、▽医療機器の保険適用 ▽臨床検査の保険適用 ▽先進医療専門家会議の報告 ▽06年度診療報酬改定結果検証特別調査にかかる報告書 ▽第16回医療経済実態調査の報告 ▽その他―の6点。
 「医療機器の保険適用」では、医科と歯科合わせて138件の保険適用を了承した。医科では、区分A2が62件、区分Bが26件、歯科では、区分A2が1件、区分Bが49件。

 「臨床検査の保険適用」では、代謝性骨疾患と骨転移を主な対象とする新たな測定項目「TRACP―5b定量(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)」の保険適用を了承した。
 従来の骨代謝マーカーは「腎機能の影響を受けやすい」「生理的変動が大きい」などの問題があったが、今回の試薬は、血清やヘパリン血漿中のTRACP―5b量を測定することが可能で、より正確な指標として有用と評価された。点数は160点。

 「先進医療専門家会議の報告」では、「培養細胞による脂肪酸代謝異常症または有機酸代謝異常症の診断」を先進医療とする評価結果を了承した。適応症は「脂肪酸代謝異常または有機酸代謝異常症」で、先進医療費用(自己負担)は8万3000円(1回)、保険外併用療養費(保険給付)は1万5000円。実施科は小児科。
 脂肪酸代謝異常症などの先天性代謝異常症は、酸素欠損によって代謝産物が体内に蓄積したり、欠乏したりすることによって神経障害が起こる疾患で、従来の診断(酸素活性測定)よりも身体への侵襲度が低くなる点などが先進性として評価された。
 委員から特段の意見はなく了承されたが、勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が、先進医療として認められる病院の倫理審査委員会がガイドラインに沿っているかどうかを調査することを要望。「特定機能病院でも、倫理審査委員会が厚労省のガイドラインに沿っていないと聞くので、調査してほしい」と求めた。遠藤会長は「中医協の意見として、専門家会議に伝える」と回答した。

 続いて、診療報酬改定結果検証部会の庄司部会長が、「06年度診療報酬改定結果検証」(特別調査)について報告したほか、調査実施小委員会で了承された「第16回医療経済実態調査」の最終報告書について、厚労省の担当者が説明した。

 「その他」の議題では、外来管理加算の「5分要件」の根拠が議論になった。同加算をめぐっては、「5分要件」の導入を審議した昨年12月7日の中医協小委員会で厚労省が提出した資料が、「時間外診療に関する実態調査」からの不正流用と指摘されている。
 藤原委員がこの問題を厳しく追及し、「時間外診療の調査に協力した県の医師会から、『事実関係を確認せよ』との強い要望、抗議が出ている。これは事実なのか」と、経緯の説明を求めた。

 保険局の原徳壽・医療課長は「5分で切った場合にどの程度の財源が出るかを計算するために使ったので、不適正な使用とは考えていない」と回答。医療課から医療機関に送付した文書には、診療報酬改定の基礎資料にする目的が明記されていることを強調した。
 これに対して藤原委員は、厚労省が調査を委託した「みずほ情報総研」が医療機関に送付した文書に、時間外の診療実態を調査する目的が記載されていることを指摘し、厚労省とみずほ情報総研が送付した2種類の文書の調査目的が異なっている点をただした。原課長は「整合性がなかった点、十分にチェックしなかったことについてはおわび申し上げる」と陳謝したが、「5分要件」の根拠として使用したものではないとの立場を崩さなかった。
 対馬委員も、厚労省提出の資料に基づいて「5分要件」を決めたのではなく、十分に議論したことを強調。遠藤会長も、「5分という要件は患者に丁寧な説明をする上で意味があるという議論が展開されていた」と述べた上で、「同加算の影響については検証部会で調査する」と議論を収めた。


更新:2008/07/10 14:42   キャリアブレイン


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