妊婦が出産までに公費で5回以上の健診を受けられる市区町村が、この1年で5倍以上増えて9割を超えたことが、日本産婦人科医会の調査で分かった。厚生労働省が昨年1月に「最低5回の健診が必要」と通知したことで、対応が急速に進んだ。一方で公費が出る健診回数は1~20回と幅があり、費用も13倍以上の開きがあるなど、自治体間で格差がある実態も浮かんだ。
1回に数千~1万円程度かかる妊婦健診は、学会などのガイドラインで13~14回必要とされている。しかし経済的理由などで未受診の妊婦が増えていることから、厚労省は市区町村に、最低でも5回の健診を受けてもらうための公費負担を求める通知を出していた。
医会が昨年5月と今年4月の公費で受けられる健診回数を調べたところ、「5回以上」を達成している自治体は17%から91%に急増。全体の76%が5回で、最少は1回(大阪府内の5自治体)、最多は20回(滋賀県多賀町)。10回以上は若年層人口の確保策を進める過疎地域が目立つが、東京23区のうち18区(14回)、宇都宮市(12回)、仙台市(10回)なども手厚い。
都道府県別では、29都県で全自治体が5回以上だった。滋賀、福島県は10回以上が9割を超える。逆に大阪府、和歌山、奈良県は5回以上が半数以下。愛媛県を除く四国・九州では10回以上の自治体がゼロで、「東高西低」の傾向が強かった。
一方、自治体の公費負担額は、最低が大阪府の5自治体の7320円、最高が岡山県鏡野町の9万8170円。医会は「必要最低限の検査料は5回分で6万円余」と算出するが、平均は4万4483円にとどまった。妊婦側が一部自己負担で必要な検査を受けているケースが多いとみられ、医会は「公費負担が不十分」と指摘している。【清水健二】
毎日新聞 2008年7月10日 21時36分