他人事じゃない、迫りくる“熟年離婚ラッシュ”

【オトナの性・恋愛講座】
　森進一（５７）、郷ひろみ（４９）、渡辺謙（４５）―大物芸能人の離婚が相次いでいる。派手な生活や多額の慰謝料など世間とは縁遠い世界の話と思いがちだが、実はサラリーマン家庭にとっても、「熟年離婚ラッシュ」の危機がヒタヒタと迫っている。あなたの妻が、隠れて年金本を熟読していたら要注意！（2005.04.26掲載）

■自覚持てない夫たち
　離婚に関するコメントを、ファクスでマスコミに発表した森進一と森昌子。その文面から、「最近の男性に共通する問題が浮かんでくる」と語るのは、夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美さん。
　“問題”とする個所は、進一が、生い立ちを振り返った次のくだり。
　〈昌子の心の中で何があったか知りませんが、子供にとって両親が必要なのは言うまでもありません。私自身、１０歳のとき両親の離婚でどんなにつらい思いをしてきたか。その時の傷は、今でも引きずり続けているのです〉
　これまで８０００件以上の離婚コンサルティングを手掛けてきた経験から池内さんは言う。
　「これを読んで、１０歳当時の“ボク”にとらわれている、今も親をゆるしていないのだ、と感じました。最近の相談では、夫の側が、子供のころの親とのトラブルを心の中で引きずっているケースが目立ちます。両親が離婚した、父親から暴力をふるわれた、酒乱だった―といった例です。しかし、どんなつらい経験だとしても、もう親を許していなければいけないでしょう」
　これに対し、昌子の文面では、〈（一部の週刊誌が伝えた）私が家族のことを何もしなかったなどということは、事実ではありません。このことで子供たちが傷つくことを母親として見過ごすわけにはいきません〉など、「母」の視点で綴られた個所に池内さんは注目。「双方のファクスだけで判断すれば」と前置きした上で、「昌子さんは『こころ』で語り、進一さんは『かたち』で語っている」と、決定的なスレ違いを指摘した。

■嵐の前の静寂？
　長年連れ添う間に、夫の側が妻との溝に気付かなくなり、定年近くなって突然、妻から三くだり半を付きつけられる、というのが最近の離婚によくあるパターン。
　池内さんは、「今は静かですが、２、３年後、熟年離婚ラッシュが訪れる可能性が非常に高い。離婚したいが、夫に切り出すタイミングをじっと待っている、という主婦が増えてます」と恐ろしい予言をする。
　どういうことか。芸能界とはまったく事情を異にするのだが、サラリーマン家庭で鍵を握るのは、昨年６月成立した年金改正法だ。社会保険にくわしい経済ジャーナリストが解説する。
　「年金改正により、０７年４月以降に離婚した場合は、協議の上で、『年金分割』できるようになるんです」
　お父さん、その中身をご存じですか？
　「専業主婦の場合、夫が結婚期間中に納めた保険料に対応する老齢厚生年金の受給権を、最大で２分の１分割できる。共働きなら、夫婦で納めた分に対応する老齢厚生年金の受給権を、やはり最大で２分の１受け取れるのです」
　この『年金分割』は二段構えで施行される。
　「０８年４月以降分は、妻が第３号被保険者（専業主婦）の場合、夫が納めた保険料の半分は妻が負担したとみなし、協議なしで夫の老齢厚生年金の半分が、自動的にもらえるようになります」
　０７―０８年といえば、団塊世代による「大定年ラッシュ」が控える。年金改正は、それを見越して、妻側が離婚による不利益を被らないように制度改革されたものだ。
　これを夫の立場から、最悪の場合を予想するとこうなる。
　定年まで勤め上げた末、「ご苦労さま」と迎えてくれると思って帰宅すると、妻から、「この日まで、じっとガマンしていたのよ」と、突然、離婚届けを突きつけられる。結果、当てにしていた老齢厚生年金の取り分は、“想定外”に減り、身も心も懐もさびしい６０代に…といったことが考えられるのだ。
　「郷ひろみさんのような年齢までなら、５０代からもう一度やり直そう、と前向きに離婚をとらえることもできる。定年後となると、かなりつらいでしょうね」と池内さん。
　ワイドショーを他人事、と笑ってみている場合ではない。

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