札幌市立月寒中の三上久代教諭は、2、3年生の国語の授業で新聞記事を活用している。「良いニュース」「悪いニュース」の価値判断や、投書欄用の作文指導、写真やイラストを見て文章にまとめる授業など、さまざまな工夫をこらす。
2年生の国語の選択授業では、将棋の加藤一二三九段が通算1000敗を記録したという新聞記事を取り上げた。「これは良いニュースか、悪いニュースか」と、生徒に考えさせる。そして、1000回負けることがどんなものか、生徒同士でじゃんけんをさせて、勝負にかかる労力を体験させる。さらに、加藤九段の勝率を他の棋士と比較し、1000敗までにかかった期間が短かったという別のデータも示す。一見不名誉な記録でも、棋士として一つの勲章でもあることが分かる。このように一つのニュースでもその背景を学ぶことで、生徒たちが面白さを分かるようにしている。
「新聞はさらっとしか読んでいませんでしたが、深く読み取ると自分の考えも生まれた」(男子生徒)、「記事を読むことの楽しさがいい勉強になった」(女子生徒)と、生徒たちは新聞を読む目が変わってきたという。
三上教諭の前任校はNIE(教育に新聞を)の実践校で、3年間携わった。昨年1年間休職し、大学院で「学校図書館における新聞の研究」をテーマに調べ、今春から修士論文に挑んでいる。三上教諭は「新聞は目的に応じてさまざまな活用が可能で、生徒たちの視野を広げてくれる」と、メリットを話している。【千々部一好】(次回は8月4日に掲載)
毎日新聞 2008年7月8日 東京朝刊