東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

サミット閉幕 地球の危機意識共有で

2008年7月10日

 北海道洞爺湖サミットが閉幕した。焦点の地球温暖化対策などで明快な回答が打ち出せたわけではない。だが、地球規模の難題に立ち向かうため世界が共有すべき「危機対応」の方策が見えてきた。

 議長を務めた福田康夫首相は、サミット終了後の記者会見で「地球温暖化、食料や原油価格高騰など、生活に影響を与える切実な問題を取り上げた、極めて重要な会合だった」と位置づけた。

 地球温暖化は、科学者の予想を超えるスピードで進んでいる。目前の危機である。京都議定書に続く新たな削減の枠組みや、二〇二〇年までの中期削減目標設定が急がれるのは、そのためだ。

 米国を含む主要八カ国(G8)は「温室効果ガスの排出量を五〇年に半減」を世界共通の目標とすることで合意した。続く主要経済国会合(MEM)で「共通課題に協力して対応する姿勢は明確になった」(外務省)というが、具体的な進展は見られなかった。

 新興経済国の中国やインドは、G8が合意した先進国、途上国共通の目標設定に反対の姿勢をなお崩していない。

 食料や原油高騰は、温暖化以上に緊急性の高い課題である。G8が「経済宣言」に盛り込んだように、その深刻な影響を真っ先に受けるのは「最も脆弱(ぜいじゃく)な人々」、つまり途上国の貧困層だ。

 地球温暖化の責任は、これまで温室効果ガスを排出してきた先進国がより重く負う。中国などが繰り返す主張自体はもっともである。先進国側にも異論はない。

 だが、その主張は中国自身にも跳ね返る。北京五輪の開幕は目前だ。日米首脳に続いてフランス大統領の開会式出席も決まった。中国はもう途上国ではない。世界最大の温室効果ガスの排出国ともみられている。途上国と先進国の“使い分け”は通らない。

 G8と危機意識を共有し、最も弱い人々を破局から救うため、応分の責任をともに負うべき大国の自覚と国際協調姿勢がほしい。

 洞爺湖サミットには、拡大会合も含めて史上最多の二十二カ国が参加した。絡み合い、連鎖する地球規模の難題は、もはやG8の手に余ることもわかった。

 G8を中心に時に先進国、途上国の枠組みを取り払い、危機意識の共有を深めながら、解決の糸口を探し出す−。グローバリズムがもたらす複雑で地球的な課題に対応可能な新しい「サミット」の形が見えてきたのではないか。

 

この記事を印刷する