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【社説】

6カ国協議 国際世論を追い風に

2008年7月10日

 北朝鮮の核計画の申告を受け、十日から北京で六カ国協議が再開される。申告内容を検証するための具体的な体制づくりが焦点になる。「完全な核放棄」を進めるには厳格さが欠かせない。

 「申告の包括的な検証が何よりも重要であり、原則・体制についての早期の合意を期待する」

 北海道洞爺湖サミットで採択された首脳宣言は、北朝鮮の非核化とともに、先月の核計画申告に言及し、検証に際しての北朝鮮の全面的協力を求めた。

 この直後に開かれる六カ国協議は、ここに記された国際的な要請に十分に応える必要がある。

 今回の首席代表会合はほぼ十カ月ぶりだ。核放棄への第二段階措置を完全に実行するため、核計画の内容を検証する具体案が最大のテーマになる。

 申告書には、プルトニウムの抽出量は約三八・五キロ、このうち核兵器化のために約二六キロ使ったことなどが含まれているようだ。

 これを検証するには、協議参加の五カ国による核施設への立ち入り検査、関係した技術者からの聞き取りなどが不可欠だ。北朝鮮は難色を示しているようだが、国際原子力機関(IAEA)も参加するのが望ましい。

 問題はいかに厳格に検証するかである。そうでないと第三段階措置の核物質・核兵器の廃棄に抜け穴を残すことになりかねない。

 申告書とは別文書で扱われている高濃縮ウラン製造や核拡散についても、懸念表明だけでなく、検証の方策を模索すべきだ。

 申告の見返りに、米国が実行するテロ支援国家指定の解除は、八月十一日に発効する。

 遅くともそれまでに、検証の具体策をまとめなければならない。北朝鮮が非協力の場合は、解除先送りの必要があるからだ。

 また、今回のサミットの首脳宣言には、初めて「拉致問題等の未解決懸案事項の解決」という文言が明記された。ブッシュ大統領も直前に、六カ国協議は北朝鮮に拉致解決を迫る有効な枠組みになりうるとの認識を示している。

 日本にとって、こうした国際世論は追い風だ。

 先月の日朝実務者協議で、北朝鮮は「拉致問題解決に向けた具体的行動を取るための再調査」を約束した。政府は各国にこうした経過なども十分に説明し、拉致と核放棄を絡める必要性を粘り強く説得しなければならない。

 テロ指定解除で拉致解決をおきざりにさせないための正念場だ。

 

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