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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

社員に「点数くれよ」とねだる前科11犯社長

 報道された有名な事件の公判を書くように言われてるんだけど、先週は特筆すべきことがないんですよね。確かに、1月31日の越智敦子被告人の公判では、共犯者である増田正が証人として出廷したし、2月3日の南雲安里被告人の公判では共犯者である大考玲奈が出廷したんだけど、直接事件に関する話も出てこなかったんですよね。

 ということで、今回は初公判2本立て。検察官が読み上げる起訴状、冒頭陳述では、ニュースでは報道されなかった内容が多々含まれてるんです。

 まず1つ目は、1月31日に行われた長嶋国夫被告人の初公判。罪名は、犯人隠避教唆。

 新聞によると、交通違反で従業員を身代わりさせた化粧品販売会社元社長の長嶋国夫が逮捕された。
 長嶋は、乗用車を路上駐車したとして2001年から5年間に駐車違反の取締りを計33回受けたが、うち24回は従業員らに身代わり出頭させていた。
 調べでは「経費削減で駐車場代がもったいなかった」と供述しているという。

 新聞ではこんな感じの内容でした。冒頭陳述によると、被告人は交通違反の常習者で、前科は11犯。「会社の近くの駐車場が高いから」という理由で、路上駐車を繰り返していた。平成13年に「免停になりそうだから」と従業員に身代わりの出頭を依頼し、うまくいったので、その後も何度も身代わりの出頭を依頼するようになった。事件は、女性元従業員が「身代わりに反則金を支払ったのに、返済してもらえない」と警察に相談したために発覚した。

 社長からの頼みだから断れなかったんだろうけど、被告人だけじゃなく職場ぐるみでどうかしてるよなぁ。社長が路上駐車するたびに、「次はオレが出頭するのか」「今度は私?」って感じで、びくびくしていたんだろうけど。

 検察官は、被告人と従業員のやり取りの一例を読み上げたんです。路上駐車したあとの被告人が従業員に向って、

 被告人(社長)「点数くれよ」
 従業員「もうすぐ誕生日で、ゴールド免許だから・・・」

 と、なんとか身代わり出頭を拒否した従業員。しかし、その従業員の誕生日の数日後、さらに被告人が「ゴールドになったんだから、いいだろ」と身代わりを依頼したと。

 警察に相談した女性元従業員の話によると、反則金は出頭した人が支払っていたようだから、社長の代わりに出頭する罪悪感と言うより、お金を払いたくない一心で断っている気がしてならないんだよね。もちろん、他人の反則金は払いたくないけど、「もうすぐゴールド免許だから」っていうのは、どう考えても違うでしょ。身代わり出頭が通例化したことを如実に示すやり取りですね。

 次回の公判は2月20日。被告人と従業員の関係性とか、普段のやり取りとか明らかになればいいんだけど。

 もう1つは、2月3日に行われた丑田祐輔被告人の初公判。罪名は脅迫。

 起訴されているのは3つ。仙台の小学生を名指しで殺害予告。レコード会社エイベックスの社員殺害予告。エイベックス社長宅の放火予告。これらを匿名掲示板の2ちゃんねるに書き込んだと言うもの。

 エイベックスが発売した曲のキャラクター「のまネコ」が2ちゃんねるのキャラクターに酷似していると抗議が殺到している中、社員殺害と社長宅放火予告があり、その書き込みをした人物が小学生の殺害予告も書き込んでいた、と大きく報道された事件です。

 冒頭陳述によると、被告人はバイト先で怒られムシャクシャしていたので、殺害予告を書き込もうと決意。現実的な内容の方がいいと思い、小学生の実名が載っている仙台の小学校のホームページをみつけ、殺害予告文を作成し、書き込んだ。

 後日、2ちゃんねるの「のまネコ」騒動に目をつけ、エイベックス社員の殺害予告と社長宅放火予告文を作成し書き込んだ。被告人は「お祭り騒ぎになったのをみて、うっぷんが晴れた」と供述していると。

 個人的なストレスでこんなことされても困っちゃいますね。実際行動に移すか否かは別にして、仙台の小学校では警備の強化、エイベックスの社長は警備員を雇ったりと、大きな影響を及ぼしてるんですよ。2ちゃんねるでの犯行予告の裁判はバックナンバーの第7回でも書いたけど、懲役1年6月の実刑判決が出ているわけだし。罪としては重いんだよな。

 被告人は捕まらないように工作してたんですね。自宅やネットカフェで書き込みするばれてしまうので、ノートパソコンを都内の公園に持って行って、無線LANカードを使用して、アクセスしてるんです。しかも、3つの犯行予告はすべて違う場所で。万が一、疑われた時のことを考え、無線LANカードの廃棄、殺害予告文の削除・ブラウザ履歴の削除、という証拠隠滅までやってたんです。しかし、警察が被告人宅を捜索した時に、ノートパソコンに消し忘れた履歴があったらしく、これが重要な証拠になっているようです。

 パソコンに関しては、よくわからないんだけど、無線LANカードでアクセスして、そのカードも廃棄したのに、どうやって足が付いたんだろうか。次回の3月2日に明らかになるのかもしれないけど。

 長嶋被告人も丑田被告人も罪を認めていたけど、あくまでも検察側の意見だから、被告人質問で多少の否認はあるかもしれないけど、事件の詳細ってのは、裁判を傍聴してみないとわからないもんだなぁ。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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