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2008年7月10日

 加賀藩三代藩主、前田利常がとうとう死んだ。昨日の本紙連載小説「われに千里の思いあり」は大きな山を越えたことになる

ここで利常の生涯をなぞっても仕方ないが、関ケ原以前に生まれ、大坂の陣をへて江戸の安定期まで生きた名君はそう多くない。織田信長の誕生に始まり利常の死で日本の戦国期は終わったという時代区分をする歴史家さえいる

享年66。死因は脳卒中。10月12日の夜、厠前で倒れたとある。もともと卒中の気があったともいい、今で言えば血圧が高い高齢者が冷えた夜にトイレに立って倒れたのと同じだから、他人事ではないと思った読者もいたに違いない

戦国武将の死因や病歴を探る研究がある。徳川家康は食中毒説もあるが胃がん説が有力、利常の父・利家も内臓系のがんだったとの説がある。上杉謙信は脳卒中で、その突然の死は戦国情勢を一変させた

21世紀の世でも、トップに在る人は突然死を避ける日ごろからの健康法が大事とされる。後継を考える時間がなくては混乱する。利常は後継・綱紀を育てた上での突然死。これも名君たる条件の最後の一つかもしれない。


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