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北朝鮮 狙いは「テロ国家指定解除」
このニュースのトピックス:北朝鮮拉致事件
【ソウル=久保田るり子】北朝鮮が日朝協議で、拉致問題の再調査や、「よど号」犯人引き渡しに協力する姿勢を示したのは、米国のテロ支援国家指定解除と敵国通商法の適用除外実現を狙うとともに、核開発をめぐる6カ国協議再開に向けた「環境整備」をはかる目的があるようだ。
北朝鮮は今回、「拉致問題は解決済み」とのセリフを控えて「再調査する」と述べただけで、対北経済制裁のうち重要な人の往来禁止解除や人道物資の海上輸送などを獲得した。拉致問題の「再調査」の段取りも中身も不明なままで実利を先に得た格好だ。北朝鮮は今年9月に「建国60周年」の大行事を計画しており、日本からの往来禁止解除のメリットは大きい。
一方で、北朝鮮が失うものはほとんどない。「よど号」犯について北朝鮮は元来、「日本政府と当事者で話し合うべきだ」との立場だった。今回の北朝鮮のいう「協力」とは国外追放となる見通しが高いが、よど号犯らはこれまで拉致関与を否定してきており、逮捕されても「完全黙秘ではないか」(捜査関係者)とみられている。当局指導下で“準備”されてきたよど号犯の帰国で、北朝鮮に不利な材料が出てくる可能性は低い。
現在、米朝間で調整が進む非核化プロセスの第2段階(核施設の無能力化と核開発計画申告書提出)にめどがつけば、6カ国協議は再開され、第2段階の実効性を追認したあと第3段階に向けた協議が始まる。ここには日米、日朝関係正常化が含まれる。
北朝鮮の狙いは、ブッシュ政権の任期中にできる限り米朝関係を進展させ、次期米政権でも、体制保証と6カ国協議で合意した支援を確実なものとすることにある。今回の日朝交渉での姿勢の変化も、北朝鮮の対米戦略の一環といえよう。