特集ページの制作に参加させていただいている関係もあって、biceさんの新作、皆さんより少しお先に拝聴しています。

biceさんの音楽は、いつも過去の心地よい記憶へ僕を誘ってくれるようでいて、楽曲も中盤に入る頃には、まったく未知の地平を僕の中に拓き、そこでめくるめく音の世界を展開していきます。

と、これは、以前、このスペースで僕が綴った、彼女の音楽に対し、いつも抱いている印象なのですが。ううむ、今作も、圧倒的に彼女らしく、そしてやっぱり、厳然と、あたらしい。です。メロディと、言葉が複雑に絡まって――そして、今作は「アルバム」ですから、或る1曲のなかの世界が、また別の曲の世界と呼応し合って――流動的な物語を形成していく。あ、複雑、っていうのは、難しい、ということではありませんから。いつ何時、どこから流れてきてもbiceさんの世界が拡がる、それほどに強靭な作りの音楽。

先日お会いした際には、僕の「すてきなあなたに」という曲をいつも鼻唄でうたってる、って仰ってくれたbiceさん。僕もこの新作の或る曲に捕まって、最近ずっとうたってますよ。ウフフ。

bice「かなえられない恋のために」は7月23日リリース。そろそろ、このサイトでもジャケットの公開と全曲の試聴が解禁、となるはず。ファンの皆さんは「試聴室。」「制作室から。」のチェックを、お忘れなく。

さて、今日の「レコード手帖。」にご登場は、音楽ライターの濱田高志さん。至極、個人的なことで恐縮ですが、ここ数ヶ月、はじめましてのご挨拶に始まり、たいへん親しく色々なお仕事上のエピソードや、アドヴァイスを僕にくださっている濱田さん。音楽に限らず、良質の、あらゆる創作物に対する敬意に裏打ちされた、彼の真摯な精神と熱意には畏れ入るばかりです。
音楽レーベル「ウルトラ・ヴァイブ」のサイト上にも公開されたようですので書きますが、濱田さんの監修・選曲・解説による『伊藤アキラ CM WORKS ON・アソシエイツ・イヤーズ』。来月発売されるこのCDを聴くことが、いま個人的にもっとも楽しみにしていることのひとつです。
現在制作中のbiceさん特集には、濱田さんによる彼女のインタヴューも掲載されますので、そちらもどうぞ、お楽しみに。

それでは、今日も。

(前園直樹)