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【NPO通信】

えいぶる(5) 1年で働きぶり成長

2008年7月1日

一つ一つ丁寧にパン作りをするえいぶるメイト=高岡市大手で

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 知的障害のある「えいぶるメイト」とともに仕事を始めた一年前は苦労の連続だった。だが、日々改善を続けてパンを焼き続けるうち、明らかに働きぶりが変わったメイトたちがいた。

 たくさんの人の期待を背負って「パン工房トースト」を開店して一年がたった。毎日いろんなお客さまが来店する。障がい児を連れたお母さんが、買い物の練習がてらに立ち寄ったり、さりげなくメイトの働く姿を確認したりする方も。

 しかし、一番多いのは先入観なくおいしいパンを求める地元の人たちだ。近所の病院や花屋で働く人が、お昼のパンを買いに来る。「あっ新作のパン!」と喜びの声が上がる。メイトが「いらっしゃいませ」とあいさつすれば「こんにちは」と返ってくる。パン屋として受け入れられたと実感する一こまだ。

 メイトは毎朝九時から午後四時まで仕事をする。出勤すると、作業服に着替えてエプロンを着け「おはようございます」のあいさつとともに厨房(ちゅうぼう)に入る。

 開店当初は手の洗浄、マスクの着け方など細かな指導が必要だったが、今では各自が「準備ができました」と報告できるまでになった。知的障がい者は強いこだわりがある人が多く、手の洗浄一つでも手がぬれるのを嫌がり、消毒用アルコールの揮発が不快に感じる場合もある。実際、手の洗浄で大騒ぎするメイトがいた。「こんな状態で働けるのか?」と思ったが、三日もたつと慣れた。スタッフが我慢できるかの方がよっぽど問題だった。

 障がいがあるメイトが、間違いなく作業するよう指導するには工夫と忍耐が必要だ。分かって当然と思ったことができなかったり、言葉を省いて指示してとんでもない結果を招いたりする。その都度なぜそうなったか作業手順を見直し、指示の仕方を変えてみる。

 工夫を重ねても、劇的な効果が表れることはまずない。昨日できたことが今日できず、がっかりすることもある。しかし、働きぶりは一年前とは明らかに違う。一年前はいろんなことがしっくりいかず、スタッフは毎日疲れ果てていた。今は一日の仕事の流れを覚え、見通しを立てて作業するメイトの姿がある。ゆっくりと上達の道を歩んでいく人たちなのだ。 (えいぶる事務局長 松尾世志子)

 

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