【NPO通信】えいぶる(1) 分け隔てなく働く場を2008年6月3日
障害者も健常者も分け隔てなく、働きに応じて給料をもらう。そんな理想的な職場を目指して1年前、高岡市にオープンした「パン工房トースト」。今回からは、工房を運営するNPO法人えいぶるに、設立の趣旨や目標をつづってもらう。 二〇〇七年三月一日。高岡市大手町に小さなパン屋が開店した。知的障がい者の雇用を目的に、えいぶるが運営する第一事業所「パン工房トースト」。開店セールにはたくさんのお客さんが詰め掛け、日ごろ静かな小路は大にぎわいとなった。 地元有志のボランティアが小路の交通整理やレジを手伝ってくれた。店の奥では、卵を割りゆっくりと泡だて器で混ぜる人や、パン生地に丁寧にゴマを振ったり、ケチャップを搾ったりする人。オーブンのブザーが鳴り、てきぱきと焼きたてのパンを取り出す人や、焼き上がったパイにトッピングをほどこすデリケートな作業を見守る人もいる。 「これを八個、天板に並べてください」「はい、八個並べます」「トランプの八のカードのマークのように、分かりますか?」「はい、分かりました」 パン工房トーストでは「えいぶるメイト」と呼ばれる知的障がい者三人、健常者四人が働く。それぞれのスピードで作業に取り組む中、ハッキリとした口調で指示を出す人がいれば、ゆっくりとした口調で返事をする人がいる。健常者も障がい者も区別なく、パンを焼いてパンを売る。 得た収入は働きに応じて分配し、能力に応じた賃金を得ることを理想とする。メンバーはもとより、たくさんの支援者の願いが一つの形となった。県内では初のケースで注目を浴び、たくさんの取材も受けた。その影響もあり、開店セールの二日間で二千五百個のパンを完売し、誇らしい気分でスタートした。 営利目的でないが、売上金の中から払うべきものを払い、従業員へ賃金を支給しなければいけない。設備のため受けた融資も返済しなければいけない。収支計画はあるも、収入の根拠など何もない。 パンを焼くことも、パンを売ることも、障がい者雇用のことも、何もかもが手探りのまま、がむしゃらな事業開始であった。それでも、このような事業を展開していかなければいけない理由があったのだ。 (えいぶる事務局長 松尾世志子)
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