遠藤誠先生の出版記念パーティ見聞録

                 1997年10月12日 於東方会館


 遠藤先生は時間に厳しい方だということだ。
 18時きっかりからはじめます。できれば、16:30〜17:30までにはお越しくださいということだった。そうだ、そう言うんだったら、16:30に行こうと思ったのである。多少は印象をよくしたい。だって、僕は一般人だもん。
 もし、自己紹介することになったらどうしよう?僕、何にも肩書きないし、地位も名誉もない。だって一般人だもん。
 困った僕は1週間前にインチキな名刺を作っておいた。

「フリーライター
 木林 森
 http://www2n.meshnet.or.jp/~s_koba/home.htm
 s_koba@mxs.meshnet.or.jp 」
(もちろん、住所、電話番号は入っていますがここには書きません。あしからず)

 これならば100%嘘でもない。それで金はほとんど稼いでないけど、ライターではある、ここには書いてるから(笑)
 でもなあ、これを出すのってなんか勇気いるなあ。

 正午頃に家を出発した。
 東方会館は前はよくテレビでCMをやっていたので、関東に住んでいる方はご存じかも知れない。私の妻の姉とそんな話をしていたら、
「そうね、あそこで前はよく中華を食べたわね。」
 と言っていた。池袋の駅から歩いて5分位の所らしい。でも、僕は方向音痴なので、早めに出ておこうと思ったのだ。
 1時過ぎに東京に着いた。少しばかり、秋葉原で暇をつぶし、余りにも時間があるのでいっそのこと池袋まで秋葉原から歩こうと思ったがさすがにそれはやめた。
 で、結果として3時過ぎにはもう池袋に着いてしまい、いやー困ったわい。食事をして時間をつぶすとパーティーで何も喰えない。しょうがないコーヒーでも飲むか。実は秋葉原でもコーヒーを飲んでいて、もう胃の中はコーヒーが充満しているのにそれくらいしかしかたがない。みんなこういうときはどうしているのだろう。東方会館の入り口の喫茶店でコーヒーとチーズケーキを頼み食べた。しかし、胃の具合が悪くなってしまった。なんということだ。
 本を何も持ってこなくて時間をつぶせない。困った困った。
 結局喫茶店には15分しかいなくて、胃の具合を悪くしただけだった。
 まあ、いいや、もう行ってみよう。
 そうしたら、もういるんですね。控え室があって、そこにいらっしゃった。みずから采配をふるって段取りをつけている。出席者も5,6人いた。
 まるで、結婚式のような受付があり、ここで参加費1万2千円を払った。これは安いと思う。
 招待状には、
「また、カネがなくて参加できない方は、遠藤誠さんにお電話下さい」
 ということも書いてある。きっと、自腹を切っている部分があるんだろうな。結婚するときに披露宴の見積をいろんなホテルで取ったことがあったが、安くあげても食事代が1万円を切ることはなかなかできない。ましてや都心だからなおさらだと思った。
 座席指定の披露宴方式でやるということだから、まさにそれだ。うーん、遠藤先生が尊敬する人々というのは「自分のことは勘定に入れず」生きる人だそうだが、ご本人もそうに違いない。カネにならない弁護もやっているし、そんな人徳の恩恵にあずかったわけである。
 受付で遠藤先生の著書を即売していたので、池内ひろ美先生と遠藤先生の共著の「リストラ家族」を購入した。池内先生は「池内ひろ美の離婚の学校」というホームページをやっており、毎日100名以上もの離婚相談をメールで行っているという超人である。僕はメールのやり取りは好きだけど、毎日100通もメールを書くのはイヤだ。

 控室に入って座っていた。それで他の人は「続交遊革命」を読んでいる。でも僕は読まない。前作の「交遊革命」も読んだのだが、僕はそれ程面白い本でもないと思った。遠藤先生の色々な知人を書いた本であるが、いいところしか書いてないので今一つなのである。やっぱり人間の面白みって欠点と表裏一体の部分じゃないですか。だから、書評でこの本は取り上げない。興味のある人は社会批評社から出ておりますので読んで下さいまし。もっと僕はあのような本には毒舌を期待しますね。でもまあ、こうして続編が出版されるということは面白い本なのかもしれん。
 とにかく僕は控室で遠藤先生をぼーっと見ていた。やっぱり、いい表情をしているなあ。
 で、話を先生は一端打ち切って、僕に挨拶をしてくれた。
「いや、こんにちは。あなたにはお初にお目にかかりますね」
「あ、○×と申します。初めまして。」(○×は私の本名)
 さっきの名刺を取り出し、
「きばやしさんですかな」
「いえ、こばやしと申します」
「ああ、これは失礼」
「永田則夫さんのことは誠に残念でした」
「そうですな」
 このような簡単なやり取りがあって、他の来客がいらっしゃってそちらの方へ挨拶に向かわれたとまあ、そんなわけ。
 遠藤先生は「怪物弁護士遠藤誠の闘い」という著書の中で述べられているが、風呂に入らないそうである。確か数ヶ月に一度。また、頭も洗わないそうだ。頭を洗うのは床屋でのみ。その床屋は2ヶ月に一度ほどである(こうやって書くと、怪物弁護士の意味が誤解されそうだ。決してそう言う意味ではありませんよ)
 でも、不潔な感じは全くしない。やっぱり高潔な人柄故か?そんなはずはないんだけどなあ。
 私の大学時代の某友人は風呂に数ヶ月に一度しか入らなかった。で、髪の毛は汚かったが、臭いはしなかったなあ。彼が言うには風呂に入らない生活が長くなると慣れるそうだ。体が順応するのかも知れませんな。
 5時ぐらいになると、続々来た。んで、お坊さんが多い。いや、お坊さんだけではなくて、頭を丸めている人もいる。
 いやー。平均年齢高いわ。
 僕、何でここいるの?って世界。20代とおぼしきは僕のみ。30代とおぼしき人はほとんど見あたらず、大体が50代という風情。80代という人もちらほらいる。
 15分ぐらい前に会場に入ると、まだ6割ぐらいしか席が埋まっていない。本当に6時に始まるんかいな。
 6時10分前、山田五郎先生登場。こんな方も来られるんですね。
 僕は思わずミーハーなので写真を撮ってしまいました。
 寛大な山田先生は快く承諾してくれました。

 そうして、ついに6時、やっぱ始まらないじゃん。と思ったが、始まった。時間に厳格だというのは本当である。

   司会は社会批評社の社長。社長挨拶。その後、遠藤先生の挨拶があった。やっぱり、永田則夫さんの処刑のことを語っていた。
 永田則夫の辞世の詩を力強く朗読されると、思わず目頭が熱くなった。
「永田君、君は成仏してはいけない。君は私と共にあって死刑がなくなるまで闘わなくてはならない」
 そう弔辞で述べたという。このような弔辞はかつてなかっただろうし、これからもないだろう。僕はこの国に死刑がなくなるまで、遠藤先生が生きていることをひたすら祈るのみである。
 遠藤先生は、この死刑は酒鬼薔薇聖斗の為であると言っていた。政府は少年犯罪に断固として対処するという姿勢を示すために、永田さんを処刑したのだという。その証拠に永田さんより先に死刑が確定していた人でも死刑を執行されていない人もいる。永田さんは市民団体の支援も受けていてそう簡単には死刑に出来ないはずであった。それがあえて実行されたということはこれ以外に考えられない。この件についてはアムネスティーのホームページに詳しいのでどうぞごらんになって下さい。
 パーティーの主な内容はスピーチである。その顔ぶれは法曹、自民党県議、マスコミ人、左翼、右翼、部落解放同盟の人等々。いやーこういう人も珍しい。こういう状況を呉越同舟と言うのでしょうな。でも、一つ言うと、
 文系・理系という括りで言うと、理系はいない。
 ポリシーのある人、ノンポリの人という括りでいうとノンポリの人はいない。
 西部邁は「科学者は大衆である」といっていたが、そう、大衆はいないんだよ。僕ぐらいか(笑)
 僕が思うに、右翼左翼の違いなんて大してないのではないか。それより、ポリシーがある・ないの方がはるかに深い溝なのではないか。本当にしみじみ思います。
 途中で休憩が入り、入口の受付に誰か女の人がやってくるのが見えた。
 このパーティーの前に池内ひろ美先生にメールを書いたことがあって、
「遠藤先生の出版記念パーティでお会いできるかも知れませんね」
 と書いたら、
「その日は仕事があって遅れます」
 というメールが帰ってきた。ああ、だから多分あれは池内先生だろうなと思った。
「池内ひろ美さんですか?」
「はい。そうですが」
「私、以前メールをしたコバヤシシンと申します」
「えーと、離婚相談をされた方ですか?」
「いいえ、遠藤先生の出版記念パーティーに出席されますか?とメールしたものです」
「ああああ、思い出した」
 その時のオーバリアクションがなかなか芝居がかっていたような気もするが、まあ気にしない気にしない。
「写真で見たとききれいな方だなと思いましたが、それよりずっときれいなんで感動しました」
「そんな、ほめても何にも出ませんよ」
 ええ、池内先生は気さくな方でした。本当にきれいな方ですよお。
「リストラ離婚読みました」
「・・・・あれ読みましたか。まあ、そんなわけです」
 うーん、確かにあの内容はそうとしか答えようがないわなあ。あの本は絶対一読の価値有りである。特に独身の男性には読んでもらいたいものである。そのうち書評で扱うつもりだ。
 それで、嬉しいことに池内先生と2ショットで写真を撮ってもらった。ここに掲載しようと思ったのだが、残念ながら、写真写りが余りよくなかったので掲載を見送ることにした。もっといいカメラ持っていけばよかったなあ。

 いやー。楽しかった。
 何で、一般人の僕が呼ばれたんだって?まあ、いいじゃありませんか。その辺に興味のある方はメールを下さい。
 

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