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絶縁測定について




先輩 今日は事務棟が休みなので,先日漏電ブレーカが動作した外灯回路を点検してくれた?
後輩 はい,点検しました。絶縁測定したら0.2MΩであまりよいとはいえません。調べたところ,防水の
    悪いジョイントボックスがありましたので,乾燥させて防水処理しました。再測定したら1.OMΩに
    なったので多分大丈夫だと思います。
先輩 ご苦労様でした。絶縁不良個所を探すのはなかなか大変だからね。ところで,メガは何ボルト
    のを使ったの?
後輩 低圧の電灯回路なので500Vメガと思いましたが,新しいディジタル式の250Vメガがありました
    のでそちらを使いました。ディジタル式は使いやすいし,カッコがいいからです。
先輩 ウーン……。若い人はディジタルに慣れているからな……。しかし,本当は100Vのメガで測っ
    てほしかったね。
後輩 エッ! 高圧は1,000V,低圧は500Vのメガで測ればよいと思っていましたが?
先輩 たしかに,7〜8年前まではそうだったね。今は電子化の普及とともに,電話やファクスをはじめ
    とする家電品,事務用機器,あるいは産業用の制御機器に至るまで電子回路が組み込まれ,機
    器の耐電圧性能は低下してきているんだ。このため100V回路に500Vメガを使うと,機器の損傷
    やトラブルが発生する事例をよく開くよ。なかでも電話,ファックスは多いね。
後輩 たしかに,100V回路に500Vメガを使用すると5倍の電圧がかかりますからね。
先輩 交流100Vの波高値は141Vで,メガの出力は直流電圧だから正確には5倍にはならないけどね。
    例えば,電子回路の電源にはサージ吸収用にバリスタがよく使われるけれど,バリスタの動作
    電圧の選定はさまざまで低い場合は波高値2倍(100××2=282V)と書かれている本もあるよ。
    ということは,電子回路を設計するとき500Vのメガで絶縁測定することは考慮されていないと
    いうことさ。このとき,もし500Vメガで絶縁測定すると,バリスタは導通状態となり0MΩを指し示
    すから正常な測定はできないよ。電池式のメガの出力電流は,短絡状態でも数mAと小さいか
    らバリスタが破損することはないけれど,素子が劣化していると破損のきっかけになるかもしれ
    ないね。
後輩 250Vメガを使用したのがだんだん心配になってきました……。
先輩 外灯回路だから多分心配ないよ。内線規程でも古いものには「低圧電路の絶縁抵抗測定は
    500V又は250Vメガを標準とする」と書かれていたが,現在では改訂され「電路の使用電圧相当
    以上のメガを使用することが望ましい」となっているよ。つまり,100V回路では100または125V
    メガ,200V回路は250Vメガ,そして400V回路では500Vメガを使用すればよいのさ。100Vメガで
    も通常フルスケール20MΩだから実用上差支えない絶縁抵抗値が得られるよ。
後輩 高い電圧のメガの方がより正確に測れると考えていましたから,負荷にやさしい絶縁測定はよ
    り低い電圧のメガを使用することなんですね。これからは,回路電圧に合ったメガを使用します。
先輩 絶縁測定したら,今まで正常だった機器がダメージを受けて動作しない事例を聞くけど,その原
    因はメガよりも回路の開閉時に生じる開閉サージによるという見方もあるようだよ。
後輩 100Vの回路の波高値は141Vですから,100Vまたは125Vのメガを使っても出力は直流電圧で
    波高値よりも低いから,本来は機器が故障することはないわけですよね。しかし,絶縁測定後に
    トラブルが生じるとどうしてもメガが疑われますね。開閉サージは,高圧では聞いたことがあり
    ますが低圧でも生じるんですか?
先輩 絶縁測定するとき,回路のブレーカを開放して測定するけれども,このブレーカの開閉時にサー
    ジ電圧が発生するんだ。理屈は高圧と同じだよ。回路条件や開閉タイミングによって異なるけれ
    ど,一般的には回路電圧の2〜4倍といわれているんだ。図-1はその一例だね。

図-1 電灯100V回路の開閉サージ例
図-1 電灯100V回路の開閉サージ例

後輩 それではうっかりブレーカも切れないですね。
先輩 それほど心配しなくてもよいよ。ただ,老朽化の進んだ機器があると開閉サージが要因となるこ
    とは考えられるね。図-1は主幹ブレーカで一括開閉したときの例であり,個々の分岐ブレーカを
    開閉したときは開閉サージの発生は見られなかったと報告されているから,主幹ブレーカでの一
    括開閉は避けた方がよいようだね。
後輩 今まで気軽にメガを使ってきたけれど,これから注意しなくちゃ!それでは,メガについて整理
    すると次のように生りますか?
    1.100V回路には100または125Vメガ,200V回路には250Vメガを使用する。500Vメガは400V
      回路以外は使用しない。
    2.電話,ファクスは特に要注意。できれば電子機器はコンセントから抜く。
先輩 その通りだね。ただ,負荷機器が接続されていない幹線などの線路では,100V回路に500Vメ
    ガを使用しても何の問題もないんだよ。それではついでに,高圧のメガについても話をしておこう
    かな。高圧回路には普通1,000Vメガが使用されるけれど,基準値は何メグオームだと思う?
後輩 エート……100V回路は0.1MΩ,200V回路は0.2MΩ,400V回路は0.4MΩ,6kV回路はたしか……
    6MΩ以上だと思います。
先輩 正解 !! 6kVの高圧電路は技術基準には定められていないけれど一応6MΩ以上が目安にな
    っているね。ここで注意しなければならないのは高圧ケーブルの場合なんだ。高圧ケーブルは架
    橋ポリエチレンケーブル(CV,CVT)が使われているが,非常に絶縁性能がよく1,000Vメガで測った
    ときケーブル単体で2,000MΩ以下は要注意なんだ。1,000Vメガはフルスケール2,000MΩが一般的
    だから,より正確に測るには1,000V以上の高電圧のメガが必要になるんだ。今は10,000Vのメガ
    が市販されフルケース400GΩ(400×103MΩ)まで測れるよ。
後輩 昨年,サブ変用の高圧ケーブルを交換したとき使いました。しかし,既設のケーブルを測るとき
    はDS,CB,VT,CTなどが接続されているので切り離さないとケーブル単独では測れないですよ
    ね。
先輩 よいところに気が付いたね。そうなんだ。切り離すには大変な手間がかかるけれど,Gアース測
    定法という方式で測ればケーブル単独の測定値が得られるんだ。これはまた次の宿題にしてお
    こうね。

大崎電気管理事務所・大崎栄吉(熱管理士)

<参考資料>
(1) 絶縁抵抗計と電圧特性について,電気設備学会誌,H11年10月号
 


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