【ウィーン=関本誠】チェコ政府は8日、米国が東欧に計画しているミサイル防衛(MD)システムのうち、レーダー施設をチェコ国内に設ける内容の協定を米国と結んだ。協定締結は東欧でのMD配備の重要な一歩だが、チェコ国内では反対が根強く、議会での承認には曲折も予想される。
プラハで協定に署名したライス米国務長官は「米国とチェコだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)や国際社会の安全保障の根幹をなす重要な協定だ」と述べた。
建設予定地はプラハから西南西約70キロにある国防省管理区域。旧ソ連軍が駐留していた場所だ。だが、最新の世論調査では、レーダー施設受け入れには68%が反対する。周辺市町村も住民投票で反対を表明。一部の反対派がハンガーストライキをするなど抗議を続けている。協定締結に合わせ、8日にはプラハでも大規模な抗議デモが行われた。
チェコ下院(200議席)は、トポラーネク首相の連立与党と野党(無所属議員含む)が100議席ずつで同数だ。最大野党の社会民主党は国民投票を求めるなど揺さぶりをかけている。連立与党内にも、協定を承認するかどうかの議会の投票は来年1月の米新政権発足まで待つべきだという意見がある。
米ブッシュ政権はイランのミサイル脅威などを理由に、チェコとポーランドにMD配備を計画。チェコとは4月に基本合意できたが、迎撃ミサイル10基の配備を予定しているポーランドとの交渉は、同国軍の近代化支援という見返りを巡って難航している。一方、ロシアはMD反対の姿勢を崩していない。