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銃撃の日本漁船、5年間のリースに 露漁業委、募る対露不信
北方四島周辺海域で日本の漁船が一昨年夏、ロシア国境警備艇に銃撃・拿捕(だほ)され乗組員1人が死亡した事件で、日本政府が事件の物的証拠としてロシアに返還を求めている漁船が5年間の契約で同国の漁業会社にリースに出されていることが明らかになった。漁船を管轄するロシア下院国家漁業委員会(クライニー委員長)が産経新聞の問い合わせに書面で回答した。
同委員会によると、2006年8月16日、北方領土・貝殻島付近で操業中にロシア国境警備艇の銃撃を受けて拿捕された北海道根室市のカニかご漁船「第31吉進丸」(坂下登船長)の船体は、いったんは連邦資産庁サハリン代表部の管理下に置かれていた。その後、ロシアの法にのっとり、昨年12月24日にロシアの水産資源の調査・管理のほか、水産会社への漁獲割り当て業務を行う国営「漁業資源(ナツルイブレスルス)」会社の資産となった。
漁船はすでに、ロシアの漁業会社に5年契約でリースに出されており、漁船船体の複数の弾痕の修理を含む改修工事はすべて、この漁業会社が行う契約になっているという。
漁船には、当時の船体の動きを記録し事件の全容解明には不可欠とされる衛星利用測位システム(GPS)も搭載されていたが、「漁業資源」会社は、GPSなどの各種装備がどのような状況にあるのかなどの情報は一切持ち合わせていないと回答した。
事件では、乗組員の盛田光広さん(当時35)が頭部に銃弾を受けて死亡。坂下船長は、密漁の罪を認め罰金を支払い帰国した。第二次大戦後、ソ連が北方領土を不法占拠してから、同海域で銃撃で死亡者が出たのは1956年以来のことで、日本側では、船体の引き渡しを拒否し続けるロシア側が事件の重要事実を隠蔽(いんぺい)し、闇に葬り去ろうとしているのではないかとの疑念を呼んでいた。(内藤泰朗)