日本がその一角を占めることで内外に存在感を示してきたG8の「拡大論」が強まっている。急速な拡大に難色を示す日本を尻目に、拡大急先鋒(きゅうせんぽう)のフランスは「実現への環境が整った」と強調。新メンバーの候補である中国など5カ国側も結束を強め、次期サミットでの影響力増大を狙っている。
中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの5カ国の首脳は8日、札幌市内で「G5」会合を開き、国際的な経済・食糧危機に対処するため、G8主導の体制の変革を求める「G5政治宣言」で合意した。
「G5は途上国の懸念を代表する」。メキシコのカルデロン大統領は会合後の記者会見で、G5が途上国や貧困国の代弁者であるとの立場を強調。食糧、原油価格の高騰など「途上国の貧困をさらに悪化させている問題」の責任は途上国側にはないとし、G8体制が地球規模の問題に対処できていないと指摘した。
さらに、「世界人口の42%が住み、国内総生産(GDP)の12%を占める」(中国の胡錦濤国家主席)5カ国が結束を強め、途上国間の協力やG8など先進国との対話を進めることを確認。来年、イタリアで開くG8サミットの前に、ブラジルでG5サミットを開くことを検討するという。
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長も8日、「複合的な危機に対応するには拡大会合という形ではなく、(中国やインドなどが)毎回参加できる形が個人的にはいいと思う」と語り、拡大賛成の意向を示した。
背景にあるのは、中国やインドなど4カ国の頭文字から「BRICs」と呼ばれる巨大新興市場の急成長だ。豊富な天然資源や人口、国土の大きさから、環境や食糧、貧困の問題を論じる際に欠かせない存在になりつつある。
G8側で、拡大を支持するのは英仏だ。サルコジ仏大統領は8日、会見で「G8は20世紀の組織だが、今は21世紀。実態に合う形への進化に向け、この日大きなものが得られた」と述べた。
さらに、イタリアでの次期サミットの期間中、G8にG5が加わる「G13の日」を1日設けることで合意。初日をG8で、2日目をG13で協議し、3日目をアフリカ諸国などとの対話に充てる見通しだ、と説明した。
だが、日本の外務省幹部は「そのような合意はできていない。これからの話し合い次第」と否定。首脳会合でも拡大論に対して首脳3人が反対したといい、次回会合までには曲折が予想される。
G13などの「拡大論議」に、G5各国の対応も分かれている。中国の楊外相は今年3月、「G8とその他の関係国との対話運営はうまくいっている」と評価し、G8拡大に慎重な姿勢を示した。加入により、発展途上国としての特権を失うことへの警戒感もあるとみられる。
ただ、中国紙は「日本が米国を巻き込んで中国のG8加入を阻止しようとしている」(環境時報)と題する記事を掲載し、日本がアジア唯一のメンバーという立場を失うのを恐れて中国加入に反対しているとの談話などを紹介するなど、不快感も示している。(丹内敦子、琴寄辰男、国末憲人)