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【社説】

温暖化対策 米国の譲歩は前進だ

2008年7月9日

 北海道洞爺湖サミット最大のテーマである地球温暖化対策で、G8は「二〇五〇年半減」の目標を共有することで合意した。途上国の参加に含みを持たせ、米国の譲歩を引き出したのは評価できる。

 「(温室効果ガスを)二〇五〇年までに半減」は、昨年の独ハイリゲンダム・サミットで、日本、欧州連合(EU)、カナダが提案した数値目標だ。

 その時は、米国の強い抵抗に遭い、「真剣に検討する」というあいまいな表現にとどまった。

 洞爺湖サミットでは、このあいまいさからどれだけ前進するかが、最大の焦点とされていた。

 サミット開幕前の日米首脳会談では、福田康夫首相の説得にもかかわらず、ブッシュ大統領が数値目標の明記にはあくまでも反対の姿勢を示していた。が、最終的には、削減数値目標を「気候変動枠組み条約(UNFCCC)のすべての締約国と共有」とくぎを刺すことで、京都議定書では温室効果ガスの削減義務を課されていない中国、インドの参加に含みを持たせ、米国の譲歩を引き出した。

 「二〇五〇年までに半減」は、これで世界共通の目標として正式に認知されたと言えるだろう。

 また「可能な場合は」との条件付きながら「野心的な中期の国別総量目標を実施する」と、中期目標の設定にも理解を示した。その点でも、前進したと言っていい。

 ただし、「大成功」とも言い難い。削減の基準年が示されていないうえ、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が求める「野心的なシナリオ」には、ほど遠い。気温上昇を生命や経済に影響の少ない二度程度に収めるためには、二〇五〇年には二〇〇〇年比で、50−85%の削減が必要だ。ビジョンを共有しただけでは、地球温暖化は止められない。

 主要排出国でもあるG8は、国別の中期目標を早期に掲げ、率先して削減に取り組むべきだ。

 温暖化の悪影響を受けやすい途上国への省エネ技術移転を進め、温暖化に適応するための資金メカニズムを確立するなど、途上国が参加しやすい環境を整える役目もある。

 最終日には、主要経済国会合(MEM)が開かれる。中国、インドも参加する米国主唱の会議である。さらに足場を固め、ポスト京都議定書の枠組みを決める二〇〇九年の締約国会議(COP15)で野心的なシナリオが描けるよう、弾みをつけてもらいたい。

 

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