教員採用試験で汚職があっただけでなく、昇格試験でも疑惑が噴き出した。大分教育界の不祥事は底なしの様相だが、問題の構図は大分に限られたものではない。ほかの教育委員会は大丈夫か。
大分県の教員採用をめぐる汚職事件で逮捕されたのは、小学校教頭夫婦や小学校校長、県教委幹部と、その地域の教育指導者だ。
教頭夫婦と校長がわが子を採用してもらうため県教委幹部に現金や商品券を贈ったという図式は、教師までもか、と社会に大きな衝撃を与えた。
問題はこれだけではない。二〇〇六年と〇七年の小学校教員採用試験に合格した計八十二人のうち少なくとも三十人について、逮捕された県教委義務教育課参事が「上層部の指示で点数を水増しした」と供述しているという。
さらに、校長や教頭に昇格する人事試験でも便宜供与の見返りに金品授受の疑惑が出ており、八日には同県佐伯市内の校長や教頭三人が警察に相談に出向いた。
この不祥事の噴出と拡大には、大分の教育界では不正が常態化していたのではないかと疑ってしまう。徹底的に解明してほしい。
しかし、それだけで済まされない。問題点を洗い出し、やり方を改め、全国に広がりかねない教育不信を一掃せねばならない。
新学習指導要領が導入されることで質、量とも先生の増強が求められるが、採用で不正が行われ、実力のある若者がはじかれ、本来は教職に就けない人に教壇に立たれては、子供にもマイナスだ。
金品授受など論外だが、教育界では採用やその後の人事でコネや情実が幅を利かせていると疑念を抱いている人は少なくない。
県によっては師範学校を前身とした大学の出身者による学閥力学が働いているという話も聞く。
教育関係者だけの「身内」で人事を扱っているからコネや情実がはびこるようになり、果ては金品が動くようになるのだろう。
大分県教委はこの夏から教員採用試験を県人事委員会と共同で行うといった改善案を示したが、いっそのこと、県教委は採用には関与せず、第三者機関に委ねてはどうか。
採用試験の配点は公表してほしいし、受験者に得点を通知することも不正防止の一助となる。試験データは、後の検証のために少なくとも五年の保存期間がいる。
この事件はほかの教委にとって対岸の火事ではない。それぞれの組織と制度を見直す機会だ。
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