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【断 潮匡人】公然と差別される後期高齢者
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厚生労働省は説明する。「後期高齢者は、複数の病気にかかったり、治療が長期にわたる傾向があり(以下略)」。さらに大臣いわく「一般的に、やはり御高齢の方は若い方に比べて認知症の比率が高い」(4月4日衆院厚労委)。
話変わって先月、道路交通法が「改正」された。「75歳以上のものは(中略)内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない」。違反者を「2万円以下の罰金又は科料に処する」とも規定された。
世間は、この標識を「紅葉マーク」「枯れ葉マーク」などと呼ぶ。黒く縁取られたマークは見た目も縁起が悪い。政府は弁明する。「あの人の運転特性というものは何であるかということをこのマークによって知ることによって、道路交通秩序を維持していこう」「そのために一律に高齢者の関係についてお願いをした」「警察庁の御判断でも、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下はすべての高齢運転者について生じるおそれがある」(5月8日衆院内閣委)。
まさに一律のレッテル貼(は)り。医学的に正しい、法制度に線引きは必要と正当化できるなら、他の問題でも差別すべきであろう。
当然、パイロットや宇宙飛行士にも「高齢運転者標識」が必要だ。政治家や審議会の学者先生、医師や弁護士も「枯れ葉マーク」を付けよう。75歳以上は裁判員になってはならない等々。
「すべての国民は(中略)差別されない」。法の下の平等を定めた憲法14条が泣いている。(評論家)