秋葉原無差別殺傷事件　異常な犯行を目の当たりにした多くの人が苦しんでいます。

東京・秋葉原で17人が殺傷された事件から、8日で1カ月がたちました。
こうした中、異常な犯行を目の当たりにした多くの人が、ショックから立ち直れずに苦しんでいます。

事件から4回目の日曜日を迎えた6日の秋葉原は、歩行者天国は中止されたものの、以前の姿を取り戻したかのようなにぎわいを見せていた。
こうしたにぎわいの中、献花台に訪れる人は後を絶たない。
殺害された宮本直樹さんの父親は「来るたびに、ますますね。犯人に対しては、憤りを増しているっていうか」、「家族としては、こういう事件を二度と起こらないようにしてほしい」と話した。
そして、現場近くで働く人々の心にも、暗い影が残っていた。
メード姿の女性は「やっぱり毎日、今でも怖いです。結構、大きな車が通ったりするたびに、すごいバッて見ちゃったりします」と話した。
男性は「人がトラックにはね飛ばされて、トラックがその人を乗り上げていくシーンから」、「何にも考えてないときに、周りの悲鳴と倒れた人の姿、出てきちゃうんですよね」と語った。
事件後、被害者支援都民センターは、被害者や関係者の相談を受けるため、電話相談窓口の受付時間を延長して対応した。
その期間中、体調不良などの不安を訴える80件の相談が寄せられた。
被害者支援都民センターの大久保 恵美子事務局長は「夜眠れないとか、物音がしただけでびくっとしてしまうとか」、「子どもさんが事件を目撃したということで、その親御さんが、子どもさんの将来に何か不安な影を落とすのではないかというような、心配だということでご相談があったという方もいらっしゃいました」と話した。
白昼の歩行者天国で7人が死亡し、10人が負傷した秋葉原無差別殺傷事件。
その数を上回る人々が、事件のショックを引きずり精神障害を引き起こすPTSD(外傷後ストレス障害)の発症が心配される。
そして、事件の影響は、さらなる広がりを見せていた。
契約社員の女性は「恐怖心とか不安感っていうのはあります。自分も一歩間違ったら同じような、たとえば殺人っていう形じゃなかったにしろ、何かしてしまっても不思議はないなと思う」と話した。
加藤智大容疑者(25)に自分を重ねてしまうという契約社員の女性の話に耳を傾けるのは、心理カウンセラーの浮世 満理子さん。
浮世さんは、個人や企業内でのカウンセリングをはじめ、カウンセラーなどの人材育成も行う会社の主宰を務める。
事件のショックで心のケアが必要な人に、無料でカウンセリングを提供しようと呼びかけたところ、「加藤容疑者に共感してしまう」という若者たちの悩みが寄せられたという。
アイディアヒューマンサポートサービス主宰の浮世さんは「実際の犯人のことを知らない人たちが、非常に『自分も同じなんだ』という言葉をよく使うんですね」、「何か自分が怖いとか、自分の感情をどう処理していいかわからないということですよね」と語った。
労働環境や家庭環境、相談する人がいないという孤独感を、加藤容疑者に重ね合わせてしまうという。
以前から浮世さんのもとに通う女性も、契約社員としての生活に大きな不安を抱え、思いつめた時期があったという。
契約社員の女性は「家族だったり友達だったり、誰にも言えない時にカウンセラーっていうのは、他人ではあるんですけれども、ちゃんと話を聞いてくれる」、「そういう不安を持っていることを話すことで、とどまることができたんですね」、「わたしみたいに何かきっかけがあったら、あの事件は起こさなくて済んだのになって思います」、「だからこそ、自分も(加藤容疑者に)共感できたと思う」と話した。
浮世さんは「その一歩の行動っていうのをね。とる人、とらない人っていうところで、大きく分かれてしまう」、「自分で一生懸命、インターネットかなんかで探して、『ここだわ』って思うところを、見つけてきたわけじゃないですか。この違いは、大きいかもしれないですね」と語った。
さらに、浮世さんは「つらい気持ちがあっても、ほとんどの人は犯罪という行動に走らない」、「自分には夢があるからとか、自分には1人でも友達がいるからとか、そういう違いということを、むしろ1人1人が自覚していくっていうことが、実はとても大事なことだと思います」と話した。
今後、本格的な精神鑑定が行われ、犯行当時の精神状態が解明される加藤容疑者。
警視庁の調べに対し、「現実の世界で大きな事件を起こせば、ネットで無視したやつを見返せると思った」などと供述している。
そのネット上では、加藤容疑者を英雄視する書き込みが今も絶えない。
事件から1カ月、その濃さを増したかのような、加藤容疑者の影。
献花台には、8日も多くの花が手向けられている。