主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)開幕を前に、福田康夫首相はブッシュ米大統領と会談し、北朝鮮の核、拉致問題の解決に向けて緊密に連携していくことを確認した。
北朝鮮の核計画の申告を受け、米国が北朝鮮へのテロ支援国家指定解除の手続きに入ったことで、日米間には少なからずきしみが生じている。
今回の日米首脳会談は、米国主導で北朝鮮の非核化プロセスが進む中、拉致問題が「置き去り」にされるのではとの懸念をぬぐい去り、関係修復をアピールする狙いがあったと思われる。連携を再確認した意義は大きいが、問題解決へのメッセージが明確に打ち出されたわけではない。具体的な展望が見えてきたとはいえまい。
大統領は拉致問題に関し「日本にとっていかにデリケートな問題か十分承知している。決して日本を見捨て、置き去りにすることはない」「日本を明確に支持する立場にいささかも変わりはない」などと表明、日本側への配慮を示した。
北朝鮮が約束した拉致問題再調査について、首相が早期実現の働き掛けを要請したのに対し、大統領は「迅速な解決策を見いだすために協力したい」と応じた。
また核問題では、北朝鮮の完全な核放棄実現に向け、核計画申告の検証が重要だとの認識でも一致した。
指定解除が発効する八月十一日までに十分な検証措置を進めるとともに、日米両国は北朝鮮に対し、拉致問題で早急な「行動」を促すことが肝要だ。
来年一月に任期切れが迫る大統領は、北朝鮮非核化という「大きな外交成果」を挙げることに意欲的とされる。核協議が進展して初めて拉致問題も解決に向かうとの立場であり、拉致問題解決を最重要とする日本との温度差は否めない。日本はサミット本番で、拉致問題解決に向けた強いメッセージを出すことも必要ではないか。
首脳会談でもう一つ注目されたのは、地球温暖化対策である。「二〇五〇年までに温室効果ガスを半減させる」長期目標設定で米国の協力を引き出せるかどうかが焦点だった。首相は会見で一定の合意形成に自信を示したが、大統領は「インド、中国も同じ目標を共有しないと問題は解決できない」と従来の主張を重ねた。結論はサミット本番に委ねた形だ。
長期目標の合意は「サミット成功の最低ライン」と言われている。福田首相はサミット議長としてブッシュ大統領の説得に努めねばなるまい。日米連携の深化が試されている。
「フィリピンでのエビ養殖に投資すれば一年で二倍になる」と称し東京の投資会社ワールドオーシャンファームが多額の出資金を集めたとされる投資詐欺事件で、警視庁と広島県警などの合同捜査本部は、会長の黒岩勇容疑者ら会社幹部を組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで逮捕した。
調べでは、黒岩容疑者らは二〇〇七年二月から五月にかけ、鹿児島県の男性ら三十人から約一億二千万円を組織的にだまし取った疑いが持たれている。〇一年に設立されて以来、ワールド社が集めた金は全国で約三万五千人から約八百四十九億円に上るとされる。
捜査本部によると、ワールド社が「東京ドーム四百五十個分(約二千百ヘクタール)ある」などと宣伝していたフィリピンの養殖場は、実際は約六十五ヘクタールの広さしかなく、捕れたのはわずかな魚だけだった。エビ養殖に実体はなく、集めた出資金を配当に直接回していたとみている。新たな出資者を紹介すると手数料が支払われる仕組みもあった。
集めた資金のうち出資者に手数料や配当、元金などとして還元されたのを除き、百億円超が使途不明となっている。配当が停止された直後の昨年二月、米国に約四十八億円が送金された。米連邦捜査局(FBI)はマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いがあるとして口座を凍結した。香港へも送金の疑いが浮上している。捜査本部は、海外の捜査機関と協力して、隠匿された資金の流れを徹底解明する必要があろう。
被害者の中には、住宅資金や老後の蓄えをつぎ込んだお年寄りもいる。許しがたい犯行である。金利が低い時代だけに何とか財産を増やしたい気持ちも分かるが、うまい話には危険がつきものだ。用心を心掛けたい。
(2008年7月8日掲載)