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2008年7月9日

◎温室ガス半減目標 そもそも完全合意は無理な話

 温室効果ガス削減に関する主要八カ国(G8)の首脳宣言は、二〇五〇年までの半減目 標で明確な合意に至らず、不満は残るとはいえ、今回の北海道洞爺湖サミットで完全合意を求めることに、そもそも無理がある。昨年のハイリゲンダム・サミットの合意からともかく一歩前進し、京都議定書に続く新たな国際枠組み構築のスタート台に立ったと受け止めておきたい。

 地球温暖化対策は、まさに待ったなしの人類の課題である。そうした危機意識はG8首 脳に共有されているといえ、温室効果ガス削減の中期目標についても「野心的な国別総量目標」を実施することで合意した。中期目標はある意味では長期目標より重要なだけに、具体的な目標が示されなかったことに物足りなさも覚えるが、G8首脳にそこまで求めるのは現実政治を無視した要求とも言える。

 ポスト京都議定書の枠組みづくりで最も肝要なことは、京都議定書から外れた米国や急 速な経済発展で温室効果ガスの主要排出国となった中国、インドなどを取り込むことである。少なくとも米中印三カ国の参加がなければ新たな枠組みの意味はない。

 中国、インドなど新興五カ国の首脳は、先進国に対して温室効果ガスの大幅削減を求め る声明を発表したが、新たな枠組みにまず参加することが前提であろう。

 半減目標の基準年でも一致せず先送りされたが、これもやむを得ないところがある。京 都議定書では一九九〇年を基準に削減目標が課せられた。九〇年以前にいち早く省エネの成果を上げてきた日本にとって不公平な基準年と言わざるを得ないのだが、各国の削減量が大きく左右されるだけに、基準年の合意も容易ではない。

 二〇五〇年までに温室効果ガスを半減する目標を「世界共通」のものとし、各国が具体 的目標を定めて動き出すまでの道のりは険しく、遠いと言わざるを得ない。しかし、そう長く時間が残されているわけではない。北海道洞爺湖サミット最終日に開かれる主要経済国の首脳会合で、新たな枠組みづくりの意志統一を図り、前進し続けることを求めたい。

◎議員の香典、弔電自粛 相談して決めるものか

 金沢市議会各派の代表者会議が市議による香典、弔電の自粛について検討を進めること を申し合わせた。「金のかからない政治」の実現に向けた取り組みとして提案されたそうだが、親族や知人だけでなく、それほど親密でなかった人に対する形式的な香典、弔電を含めて、相当な負担を強いられる市議も少なくなく、できれば市議会全体で足並みをそろえて、数を減らしたいというのがホンネだとの見方もある。

 それほど親密でなかった人に対する香典、弔電を控えたいという気持ちはよく分かる。 が、香典、弔電についての判断は自ら行うものであり、議会で申し合わせするものではなかろう。現に、そのような意見を述べた代表者がいたといわれる。

 金のかからない政治うんぬんは言い訳じみて聞こえる。それよりも、本人の姿が見えず 、しかも都合をつけて葬儀に参列した人より先に、そうした議員の弔電が読み上げられるのをしばしば見受ける。故人をしのび参列した人たちに失礼極まる。自律的にやめてほしいことだ。

 自分で決めるのが嫌なことから、みんなで決めて、それに従う方が合理的なものもある 。その場合、各人とも同じ条件であることが必要だろう。しかし、亡くなった方との関係というのは市議それぞれに違うのではないか。そうであるなら、申し合わせに従うということはいつでも合理的であるといえない。

 公選法では議員が選挙区内で葬儀などに参列する場合は香典を出すことが認められてお り、弔電については制限はない。が、県内では加賀市議会が政治倫理規定で弔電を原則禁止としているほか、小松、七尾、輪島の各市議会でも自粛などを申し合わせている。

 自分で決めるべきことを、申し合わせに委ねている市議会の多さに驚かされる。自立性 の返上というか欠如というか、それにあきれるのだ。やぼなことをいうようだが、議員として全力を尽くして検討し、取り組む課題が今ほど多い時代はない。その「本業」に努めてもらいたいものだ。


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