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1回の充電で80キロ走行、米国立研究所の改造版『プリウス』

Photo Credit:米国立リニューアブル・エネルギー研究所(以下同じ)

Photo Credit:米国立リニューアブル・エネルギー研究所(以下同じ)

Tony Markel氏は、プラグイン・ハイブリッド車を運転している。充電1回あたりの走行距離は約80キロメートルで、燃費はリットルあたり42.5キロメートル、そして太陽光から電力を得る。Markel氏の思い通りになれば、一般の人々もこの自動車をまもなく運転するようになるだろう。

Chuck Squatriglia

Markel氏の2006年製『プリウス』には、トヨタ自動車が採用しているニッケルメタル・ハイドライドバッテリーよりも6倍パワフルなリチウムイオン・バッテリーが搭載されている。

しかし、同氏の自動車を本当に素晴らしいものにしているのは、屋根に設置されたソーラーパネルだ。このソーラーパネルは、約8キロメートルを走行するのに十分な電力を生成する。

Markel氏は、コロラド州にある、米エネルギー省傘下の国立リニューアブル・エネルギー研究所(NREL)所属のシニア・エンジニアだ。Markel氏は同僚とともに、より安価で耐久性の高いリチウムイオン・バッテリーを開発するため、1年にわたりこのプリウスを使って実験に取り組んできた。

「バッテリーの問題は、価格と耐用年数にある。技術の進展を妨げている大きな原因がこの2つだ」と同氏は説明する。だがMarkel氏は、早晩この状況は改善されるだろうと見ている。

自動車メーカー各社は、バッテリー問題に地道に取り組んでいる。NRELもその研究によって、一般の自動車で電気が石油に取って代わる日の到来が早まることを望んでいる。

「状況は急速に変化している」とMarkel氏は言う。早ければ2010年に、米General Motors社、トヨタ、日産自動車のプラグイン・ハイブリッド車や電気自動車が登場するかもしれない。これらの企業はすべて、技術を完成させるために大手バッテリーメーカーと協力している。またNREも、バッテリーメーカーの米A123Systems社と共同で、リチウムイオン・バッテリーの温度管理機能の改善に取り組んでいる。[米A123Systems社についての日本語版記事はこちら]

NRELは1994年、米国自動車業界と共同で、ハイブリッド車の取り組みを開始した。本田技研工業とトヨタがいち早くハイブリッド車を発表し、先手を取られた格好だが、米エネルギー省によると、これらの自動車もNRELの研究の恩恵を受けているという。

NRELがリチウムイオン・バッテリーの実験を開始したのは4年前のことだ。2007年には米Energy CS社に依頼し、4万ドルの費用を費やしてプリウスをプラグイン駆動系に改造させた(A123Systems社傘下のカナダのHyMotion社でも同様の取り組みが進行中だ)。[プリウスを充電可能なプラグインタイプにする改造についての日本語版記事はこちら]

NRELのプリウスは、9キロワット時の発電能力を擁するリチウムイオン・バッテリーを搭載し、屋根に165ワットの電力を生成するソーラーパネルが設置されている。

「この車は研究のためのプラットフォームだ」とMarkel氏は述べる。研究作業の大部分は、リチウムイオン・バッテリーの温度管理機能の改善と、バッテリーが古くなるにつれて発生する、効率性の低下とエネルギー容量のロスを最小限にすることに焦点が置かれている。

同氏によると、目標は、電力の供給先である車と同じくらいの耐久性を持つバッテリーを開発することだという。車の耐用年数がおよそ15年だとすると、これはかなり難しい挑戦だ。

NRELではまた、「Vehicle-to-Grid」(V2G)についても研究している。V2Gは、電力需要の低い夜間にプラグイン・ハイブリッド車を充電し、昼間にその電力の一部を電力会社に戻すという、車と電力会社が双方向で電力を共有する仕組みだ。

米Pacific Gas & Electric社などの電力会社がV2Gに興味を示しているものの、「これは自動車業界の守備範囲を超えた研究だ」とMarkel氏は説明する。

Markel氏によると、同氏のプリウスは1回の充電で約80キロメートルの走行が可能だという。米国人の78%は1日あたり約64キロメートル以下しか走行しないので、これだけあれば十分な走行距離だといえる。

NRELの名前にふさわしく、充電は太陽光発電ステーションで行なう。Markel氏に、最後に満タンに充電したのはいつかと尋ねたところ、同氏は思い出そうと少し考えてから答えた。「2週間ほど前だった。ごくたまにしか充電する必要はない」

WIRED NEWS 原文(English)

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