医師9人が医療再生の処方せん
救急医療の「たらい回し」、“出産難民”の急増、小児科の激減、地方病院の倒産など、全国各地で「医療崩壊」を象徴する事態が相次ぐ中、9人の医師たちが医療を救うための具体策をまとめた「医療崩壊はこうすれば防げる!」(洋泉社)を出版した。医療崩壊の病巣となっている厚生労働省の医療政策を徹底検証し、医療再生への道を探った処方せん。医師たちは「本書が、厚労省の施策を根本から是正する呼び水となり、厚労省が国民の命の安全保障のために大きく舵を切るきっかけになれば」と話している。
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国立高度専門医療センターで看護師“バーンアウト” 9人の医師とは、鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市)の回復期リハビリ病棟専従医の澤田石順氏、昭和大医学部教授の有賀徹氏、東京都立府中病院産婦人科医の桑江千鶴子氏、岩手県立病院名誉院長の樋口紘氏、医療法人永生会永生病院(東京都八王子市)の理事長で院長の安藤高朗氏、兵庫県立柏原病院小児科医の和久祥三氏、東大医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門客員准教授の上昌広氏、長崎大名誉教授の高岡善人氏、済生会栗橋病院(埼玉県栗橋町)の副院長でNPO法人「医療制度研究会」副理事長の本田宏氏。
8章構成で定価は798円(税込み)。
澤田石氏は、今年4月に始まった「後期高齢者医療制度」を取り上げ、同制度の問題点などを解説。同制度が“姥(うば)捨て山政策”と批判される根拠を明確にし、即刻廃止することの必然性を指摘している。
有賀氏と安藤氏は、救急車の「たらい回し」の背景として、救急医療を担う病院の医師不足に加え、急性期の治療を終えた患者の受け皿となる療養型病床が不足している問題を挙げ、“医療難民”や“介護難民”が生まれている実態と、その解決策を示している。
桑江氏と和久氏は、人手不足による過酷な勤務に起因する医療事故へのリスクから、産科や小児科の医師が現場を立ち去っている「立ち去り型サボタージュ」問題などをクローズアップするとともに、産科や小児科崩壊を防ぐための具体的な取り組みなどを紹介している。
また、樋口氏は、国の医療費抑制政策の影響を、より強く受けている地方の自治体病院の実態などを説明し、地域医療の再生に向けた道筋を指し示している。
さらに、上氏は、厚労省が進めている「医療安全調査委員会」の設置について検証。「警察の介入を容易にするシステムは、世界で類を見ないシステム」と指摘するとともに、現状の内容では「医療事故再発防止という本来の目的に逆行するだけでなく、患者にも好ましくない」として、医療紛争の真の解決策を提言している。
このほか、本書の編著を務めた本田氏は、病気のため入院治療中の高岡氏を訪ね、同氏の主張を記録した。高岡氏は、1993年に発表した著書「病院が消える−苦悩する医師の告白」で、現在の日本の医療崩壊をいち早く警告。本書でも、医療に対する政治や行政の姿勢を鋭く追及している。
9人を代表し、本田氏は「医師一人ひとりの声は小さな『一灯』でも、みんなが小さな一灯を持ち寄って現場の真実を発信していけば、やがて全国に『万灯』がともる日が必ず来る。医師と国民が大同団結して立ち上がれば、日本の医療は良くなる」と訴えている。
更新:2008/07/08 13:23 キャリアブレイン
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