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EU、移民規制を強化 不法滞在の審査厳格化へ

2008年7月8日1時32分

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 【カンヌ(仏南部)=井田香奈子】欧州連合(EU)の27加盟国の内務相非公式会合が7日、カンヌで開かれ、大量の不法移民に対して加盟国が一括して在留許可を出している「救済措置」を原則廃止する協定案を議長国フランスが示した。この措置は80年代以降、域内で数百万人に対してとられ、欧州の移民社会を形成する要因となったが、今後は厳格な審査へと転換することになる。

 09年から5年間のEUの移民政策の骨格となる「移民協定」原案に盛り込まれた。10月のEU首脳会談で正式に採択される。在留許可を出すにあたり、個別の外国人の事情をふまえた審査の必要性を強調しているほか、不法移民への厳格な対応、効率的国境管理など五つの柱からなる。

 欧州委員会によると、不法移民について個別に審査せず、数千、数万人単位で一括して正規滞在を認める措置は、密入国や不法滞在が多い国でとられてきた。80年代以降、仏、スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャの5カ国で約370万人の在留を認めた。05年にはスペインが約70万人の不法移民に就労査証を与え、論議を呼んだ。

 EUではいったん在留が認められるとその後5年の滞在でさらに長期滞在が許可される可能性が高まり、定住につながる。

 こうした措置は人道的対応の一面もあるが、膨大な審査・強制退去コストを抑えられること、移民からの税収が見込めるなど、受け入れ国にもメリットがあった。

 しかし、各国民で雇用問題が生じたうえ、こうした超法規的措置がさらなる不法移民を招くとの批判も出ていた。EU域内は移動の自由が保障されており、ある国が出した在留許可が全域に影響を与えかねない。

 ただ、新協定でも、長期的に労働力を確保する観点から「EUには依然として移民は必要」との立場を維持。高い能力をもつ技術者や優秀な学生の移住を促進することを盛り込んだ。

 また、正規の移民には受け入れ国の言語を理解することなど、社会にとけ込む責務を課す。一部の国が在留審査に伴い現地語のテストをしたり講習を勧めたりする流れを反映したものだ。これまで移民の権利とみなされた家族の呼び寄せについても、現地語がある程度できるなどの基準を満たすことを求める。

 EU内では移民受け入れの基準や数は各国の裁量で、協定にも法的拘束力はないものの、欧州委は共通の方針が施策に与える影響は大きいとみている。

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