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医師が危ない
第5部 難局の向こうに

 (12)カテに燃える40歳

血管内手術の使命感に燃える福井医師(手前)=高知医療センター  溝渕雅之医師(48)は、古巣の職場で元気にしていた。となると、余計に気掛かりなのが高知医療センターの脳外科である。溝渕医師の抜けた分、残った五人の医師の負担は増えているはずだ。特に脳外科は三月、診療実績額が約一億円を記録し、ものすごい忙しさだった。主任医長が抜けた後、どんな事態に陥っているのだろう。

 今年一月、溝渕医師が高知医療センターを去ることが決まった直後、森本雅徳部長(56)は心配していた。

 「これまでのように、徹底的に頑張ろうという姿勢は無理でしょう。仕事量を減らさざるを得ない状況に来てます」

 脳外科医の数はまずまずなのだが、脳梗塞(こうそく)も含めた内科的神経疾患を診てくれる科が消滅しているだけに、何らかの患者制限をしないと、脳外科も崩壊しかねない。

 もし、崩壊すれば何が起こるか。意識障害や頭部打撲の疑いがある急患は受け入れ不可能になるから、救命救急センター全体の機能も大幅に低下する。そうなると、救急車は高知赤十字病院(日赤)と近森病院(いずれも高知市)に集中するだろう。

 つまり、高知医療センターが誕生する平成十七年三月以前に近い状況に戻るわけだが、ただ当時と違って今は、郡部の脳外科の救急対応力が弱っている。日赤、近森の負担はより重くなり、場合によっては「受け入れ不能」が発生するかもしれない。となると、患者である高知県民にもしわ寄せが来る。

 そんな崩壊の連鎖を避けるためにも、高知医療センター脳外科は、これまでのように来る患者をすべて受け入れるのはやめるべきだ。脳外科疾患の三次救急への特化や、他院との協力体制を敷くことで、とりあえず医師を疲弊から救うのが高知県内医療界の得策ではないか――と思いながら久々に高知医療センターを訪ねると、森本部長は意外な言葉を口にした。

 「三次に特化するつもりはないんです」

 その理由は、本当に脳梗塞だったら一刻を争うからだ。脳梗塞は重軽症の区分けが難しい。軽いと思って様子を見ていたら、どんどん悪化してしまうことも少なくない。

 「これは問題なし、これは点滴、これはカテ(血管内手術)が必要―という判断は、やはり脳卒中を専門とする医師が早い段階でかかわるべきなんです。三次でないと駄目、なんて線引きしていては、血栓を溶かす薬を使うチャンスを失いかねない。まひや意識障害の症状が出たら、一刻も早く来てほしいんです」

 溝渕医師離脱のショックから立ち直ったのか、冬が去り患者数が減ったためだろうか、森本部長は元気になっていた。

 そして、脳外科のもう一人の支柱、カテのスペシャリスト、福井直樹医師(40)も、脳外科疾患の三次特化には反対だった。

 理由は、カテ治療が今後、脳外科の仕事の中で大きなウエートを占めると見ているからだ。

 脳外科の手術は、メスを入れる外科的治療が主流だが、近年、脳梗塞については即座に対応できるカテが増加傾向。この四月から頸(けい)動脈の狭さくをステント(筒状の金網)で拡張するカテも保険適用となり、普及に弾みがついたのだ。

 「脳梗塞は神経内科に任せればいい、というのが従来の脳外科の考え方だったけど、血栓溶解療法の解禁で脳外科の役割も変わりつつあるんです。脳卒中の七割前後は脳梗塞。脳出血は減ってきてますから」

 カテ専門医は高知県内に二人だけ。特に福井医師は一人で年間百症例を手掛ける。これは一般的なカテ専門医の二倍。脂の乗った四十歳は使命感に燃えていた。

 脳外科医が体を壊すほど働いて気の毒。何とかできないものかと思ってこの取材を始めたのだが、「いや、全然です。カテをやると決めた時、僕は徹底してやると覚悟したんですから。僕は脳卒中に特化した脳外科をやりたいんです」。

 【写真】血管内手術の使命感に燃える福井医師(手前)=高知医療センター

(2008年07月07日付・夕刊)

 
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