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ひどすぎた冬柴国交相の官僚擁護−国会閉会にあたって

田中良太2008/06/25
冬柴鉄三氏が座る国交大臣のポストは2004年9月以来、公明党で占められている。今の国交相は、かつて「利権ナンバー1」と言われた建設相に、運輸相も合わせて、けた違いの利権ポストのはずだ。その利権は公明党大臣の下でどうなったのか? 公明関連「ブラックボックス」は多いのに、日本のメディアは応えてくれない。創価学会が動かす宣伝広告費が巨大メディアを事実上「買収」していると指摘せざるを得ない。
日本 国会 NA_テーマ2

 ◆朝日コラムの国会3賞
 通常国会の閉幕にあたって、朝日新聞の政治コラム「政態拝見」が、「国会3賞」選考結果を掲載した(17日付朝刊)。

 殊勲賞は衆院予算委で、道路関連の問題を追及した民主党のチーム。道路建設の中期計画が古いデータに基づいて作成されていることを指摘した馬淵澄夫氏▼国土交通省所管の外郭団体が1億円で請け負った「海外の道路情報」についての報告書がインターネット上の百科事典「ウィキペディア」の丸写しだったことを暴露した細野豪志氏▼道路事業宣伝用のミュージカルに5億円もの特定財源がつぎ込まれていたことを明らかにした社民党・保坂展人氏らの名があがっている。

 ◆殊勲・民主、敢闘・共産、技能・自民
 敢闘賞は、後期高齢者医療制度の問題点を粘り強く訴えてきた共産党を代表して小池晃政策委員長。この制度を導入するための関連法案が提出された06年の国会で「姥(うば)捨て山になるという批判が出るのは当然だ」と指摘、その後も地道な取り組みを続けてきた。

 技能賞は、自民党参院議員会長の尾辻秀久元厚労相。国会冒頭の代表質問で社会保障に多くの時間を割いた。胸腺がんのため58歳で死去した民主党の山本孝史参院議員の追悼演説に立ち、抗がん剤の副作用に耐えながら、がん対策基本法の成立に尽力した山本氏を「参院の誇りだ」とたたえた。

 ◆公明党議員も「準3賞」
 衆院予算委で道路予算に絡む国交省の無駄づかいを取り上げ「我が党の支持者、国民のみなさんが期待しているのは、そういうところ(無駄)に切り込んでもらいたいということだ。役人は隠そうとするが、そこに切り込むのが、政治家冬柴鉄三の役目だ」と強調した公明党の富田茂之氏も賞賛しており、3賞に準じる扱いとしている。

 ◆「3賞メーカー」を考える
 相撲の3賞の場合、殊勲賞の場合なら、金星を提供した横綱がいるからこそ、受賞者が出る。この国会3賞について「3賞メーカー」を探してみると、殊勲賞メーカーは国交省、敢闘・技能両賞のメーカーは厚労省。ここまではお役所だが、「準3賞」メーカーは、冬柴鉄三という政治家だ。

 ◆冬柴答弁は考え尽くした選択
 公明党は細川護煕政権下でいったん解党、新進党に合流した。98年11月に再結成したが、神崎代表・冬柴幹事長のコンビは、その後8年間続いた。99年7月の臨時党大会で、自自公連立(2つめの「自」は小沢一郎氏の自由党)への参加を決定、同年10月には、小渕恵三内閣の改造によって、自自公連立政権が発足した。

 つまり「神崎・冬柴公明党」イコール「与党公明党」なのである。その8年間、自民党や創価学会との関係で、泥臭い部分を担当・処理してきたのは冬柴氏のはずなのだ。その冬柴氏が、国交相となって「官僚と一体」路線を続けているのは、偶然ではあり得ない。考えに考え尽くした上での「選択」であるはずなのだ。

 ◆大臣は官僚機構に従属?
 冬柴氏の答弁はたしかにひどかった。「われわれは、○○を目指してやっているのです」と言うような言葉をよく使ったが、その場合の「われわれ」は国土交通省つまり官僚機構だとしか思えない。政治家(つまり国民代表)である大臣の立場がまったくない答弁が続いていた。

 ◆創価学会学生部の「法学委員会」
 なぜ唯一の公明党大臣である冬柴氏だけ、そうなるのか? 創価学会という存在を考えざるを得ない。創価学会の学生部に「法学委員会」がある。司法試験・国家公務員試験・外交官試験などの合格を目指して、学会員学生を鍛え上げる組織である。

 冬柴氏本人も弁護士なのだから、司法試験合格組である(冬柴氏が幹事長時代コンビを組んでいた神崎武法・前代表<検事を経験>も司法試験合格組だった)。当然「法学委員会」所属だった時期もあるはずだ。この法学委員会出身者、いまやどの世界でも一大勢力となっているという。

 ◆外務省の「大鳳会」
 外交官試験合格者は外務省に入る。同省の学会員は「大鳳会」をつくっているが、そのメンバーは約300人といわれる。外務省は出先の大・公使館、領事館を含めて6,000人あまりの組織だから、約5%にあたる。大鳳会のトップはインド大使のE氏。文化交流部長−中近東アフリカ局長−南ア大使を歴任してインド大使というのは堂々たる経歴だ。

 このE氏をフランス大使にしようというのが、創価学会の目論見だという。フランスではカルト(狂信的な教団)に対する規制が厳しく、創価学会の布教は厳しいのが現状だ。それを打開するためのE駐仏大使構想だという。まさか実現するとは思えないが……。

 ◆学会員官僚の昇進喜ぶ池田名誉会長
 創価学会員官僚が局長級以上になっているのは、外務省だけではないだろう。池田大作名誉会長は法学委員会出身者が昇進していくのをたいへん喜ぶという。公明党が与党となってから、その笑顔はずっと続いているのかもしれない。

 ◆学会員大臣の「責務」
 公明党から大臣になると、それまで以上に学会員官僚を昇進させなければならないのかもしれない。少なくとも公明党大臣になって、その省での学会員官僚の昇進が遅れ気味になったということなら、名誉会長のお叱りがあるというのが、創価学会の組織原理だろう。

 現状では各省庁の人事は政治家が関与せず、官僚たちが「自主的に」決めることになっている。冬柴氏が「さすがたいした手腕だ」と池田名誉会長にほめられるためには、次官以下に対して暗黙のうちにサービスし、学会員官僚の人事で見返りを期待する以外にないのかもしれない。

 ◆富田質問は冬柴氏のシナリオ?
「苦労人」とされる冬柴氏のことである。「自分自身はこうした行動をとらざるをえないが、それだけでは公明党全体のイメージダウンになってしまう」と考えたのかもしれない。冒頭の「政態拝見」が賞賛した富田茂之氏の質問は、あるいは冬柴氏自身が仕組んだ「やらせ」なのではないか?

 ◆公明党閣僚ポストをめぐる多数の「何故」
 国交相は前任も公明党で北側一雄現幹事長である。しかも第2次小泉純一郎内閣で就任し、第3次小泉内閣で留任している。つまり国交相は2004年9月以来、ずっと公明党なのである。

 省庁再編以前に、利権ポストナンバー1と言われたのが建設相である。ナンバー2以下は鮮明でないが、運輸相をあげる人も多かった。現制度の下では、国交相はけた違いの利権ポストであるはずだ。その利権ポストがなぜ公明党に配分されるのか? 自民党大臣なら手中にしていたはずの利権は公明党大臣の下で、どうなったのか? 公明党大臣と、国交省の創価学会員官僚との関係は? 知りたいことはたくさんあるのに、日本のメディアは知らせてくれない。アンチ学会記事を売りものにする週刊誌も含めて、このあたりを追及してくれないのは困ったものだ。

 ◆公明党目黒区議の政務調査費不適正支出
 06年11月、東京・目黒区の公明党区議団による政務調査費の不適正支出が明るみに出た。地元のオンブズマン団体が政務調査費の使途を示す領収書を情報公開請求した結果、不正な支出があるとして10月31日に住民監査請求した。

 公明党本部が明らかにしたところによると、区議らは、私有車の車検代約5万円を「調査研究中の故障修理代」として請求したり、約15万円をカーナビゲーション購入に流用したりしたほか、1人100万〜20万円を受け取った広報費や、電話代にも不明朗な支出があったという。

 ◆722万円を返却、6人全員辞職
 結局同党の区議6人は前年・05年度分の政務調査費として交付された1,224万円
のうち、約772万円を区に返還、議員辞職した。

 この「事件」は、公明党が1964年の結党当時売りものにした「クリーンさ」を失っていることを示すものである。同時に、6人の区議がなぜ辞職したのか、その理由も明らかにされていないことを指摘したい。6人全員辞職という大袈裟な行動をしたのは、この件での追及を中止させるためとしか思えない。

 ◆「行く先」の追及を防ぐため
 つまり不正支出であった722万円の行く先を解明されると困る事情があったというのが、私の推測である。

 ◆大きくなるばかりのブラックボックス
 いずれにせよ、創価学会・公明党は、現代日本が抱える巨大なブラックボックスである。その内側のことは解明できないのである。政官界というほんらい国民に対してオープンであるべき世界で、そのブラックボックスの比重がどんどん大きくなっている。

 多くの国民が、その事実に無警戒なのは困るのである。しかしそれ以前に、事実上創価学会が動かしている宣伝広告費によって巨大メディアが事実上、買収されていることを指摘せざるをえない。

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[35288] 少なくとも民のための政治を強く希望します
名前:堤康司
日時:2008/06/27 04:03
 長い人類の歴史で政治の中に宗教がはいると、取り込まれるか、その権力利用という弊害がでることがしばしばある。しかし、現行の法制度をクリアーして敢えてそれに挑戦し議席を獲得しているのが公明党である。
 願うらくは宗教という衆生を救い、民に対しより豊かな暮らしを提供するイニシアティブを提言することにこそ期待するものです。 
 少なくとも一部団体の固定票で選ばれているとはいえ、せっかく国民の代表、さらに与党加えて大臣まで獲得しているのであれば当然に民の希望する国を標傍し自党の利害を超えた政策と官僚の育成に励んでいただく事を切に希望いたします。
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[35246] 国交省御用達弁護士ですらない
名前:江口征男
日時:2008/06/25 21:55
冬柴さんは、まるで国交省御用達の弁護士だという説もありますが、

弁護士らしくクライアントの立場に立って擁護しているようにもみえず、

(理解していない)官僚のレクチャーに従って話しているだけなので、

記者クラブでの優しい質問にさえ、自分の考えで答えられず、

聞かなくてもわかる回答しかできていないように見えます。

あれで、支持者は満足しているのでしょうかネエ。
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