人類がこれまで聞いたことがない火星の「音」を、探査機が地球に届けてくれるかもしれない――。米航空宇宙局(NASA)の火星探査機フェニックスが積んでいる小さなマイクロホンに、そんな期待がかかっている。
火星には、二酸化炭素(CO2)を主成分とする大気がある。地球の100分の1ほどの希薄さだが、最高で風速40メートル程度の風が吹いていることもわかっており、音を伝える大気がほとんどない月などと違って「音のある世界」だと考えられている。
フェニックスの底面には、小さなマイクがついており、同機の主任研究者でアリゾナ大のピーター・スミス上級研究員は「(本来の科学調査が一段落する)夏以降、マイクが作動するかどうかを調べ、できれば起動したい」と話している。
このマイクは、降下するときに真下の地形を撮影するカメラの付属品。米の民間団体「惑星協会」がNASAに設置を提案し、認められた。
しかし、打ち上げ前のテストで、カメラから画像データをフェニックスに転送すると不具合が起きる可能性がわずかにあることがわかり、降下時のカメラとマイクの使用は中止されていた。
惑星協会のルイス・フリードマンさんは「可能性は小さいかもしれないが、楽しみだ」と話している。(勝田敏彦)