2007年08月30日

懲戒免職教師・ゴジラ飛鳥~女子高生マチを愛した怪物


結論から言います。この絵は、「被害者少女」が、俺の部屋に書き残していった物です。本編中には「石原マチ」の名で登場することになるこの少女。日付からわかるように、この絵を描いてくれたのは俺の免職からひと月ほど後のことです。


 免職の原因になった人物が、俺の部屋を訪ねてきている。


 この時点で飛鳥の懲戒免職がどうも普通でないと気づいてほしいものです。そしてこの後10ヶ月もの間、俺とマチはともにM県教育委員会と戦うことになるのです。
 絵についてですが、これはもちろん飛鳥をイメージしてマチが描いたものです。「ゴジラ」だそうです。
 この時マチは、自分の周りにいる男たちを動物にたとえて、マチを中心に相関図を描いていったのです。その時、マチの隣に描かれた男が飛鳥だったのです。



 なんか、他の男たちは馬やら鶏やらに描かれているんですが、なぜか俺だけゴジラなんですよ。


「おい、俺だけ怪獣なんだけど。」
「だって、エイジはやっぱ怪獣でしょ?熊とかゴリラでも足りない感じだし。」


 何が「足りない」のかよくわからん。とにかく、マチは笑いながらゴジラの俺を描いていったのです。

 俺の周りには、こんな思い出の品があふれています。これから段々と公開されていくことでしょう。それは飛鳥にとって辛いことでもありますが、「真実」を全て語り尽くすために必要な痛みだと覚悟しています。

 ゴジラ飛鳥。
 マチにとって俺は良くも悪くも強い存在であったのでしょう。そして、自分がいなければあっという間に死んでしまう、この世でもっとも儚い男……それもまた、飛鳥の姿だったに違いありません。
 マチのためなら、天変地異だろうが軍隊だろうが相手に回すであろう怪物。
 マチがいなければ明日まで生きることも出来ない脆弱な者。

 自分は、一体あの時、何者だったのでしょう?

 このイラストと共に、飛鳥は戦い続けます。そして、いつかこの戦いが終わるとき、「生きていく」ことが出来るか決めようと考えています。


 

 マチ、そして俺の人生を駆け抜けていった者たちへのメッセージは、いずれここで語ることになるでしょう。今は、「事実」をたくさんのひとに伝えることに全力を尽くします。

 ただ、一つだけ信じてほしいこと。
 強い者は、自分を守るために卑怯な手段も嘘も必要ないのです。
 ゴジラの如き強さを持つ飛鳥は、T田に追いつめられたときも、R町教育長に詰問されたときも、M県教育委員会の査問会の場でも、警察・検察の取り調べの場でも……偽りはただの一つも述べていないのです。


 マチ
 もし読んでいたら一つだけ言っておく。
 俺は、S警察署の取調室にあっても、君の一番触れられたくない「あの話」だけは明かしたくなかった。刑事から再三、「あの子は本気であなたを刑務所に入れてほしいようですよ。」と伝えられ、あの……供述を知らされるまで、「あの話」を語らなかったのだ。
 その俺の馬鹿さ加減を笑ってくれ。そして、今俺がどんな思いでいるか……よく想像してみてほしい。


次回「斬鑑刀!疾風怒濤!!」に続く


 


わけないだろ!


と言いつつ続くこともある飛鳥の語り。次は何が出てくるか自分にもわからん……。

  

Posted by 飛鳥エイジ at 15:19Comments(0)

2007年08月30日

さて、お終いにしましょうか Byシュウ・シラカワ


 


いやいや、お終いにしてどうすんだ転落教師!!開設4日目でお終いかよ。
いえね、大好きなんですよ、シュウ・シラカワ。それにね、飛鳥を刑務所に送り込もうとした二人の若い男女も、よく知ってるんですよ、シュウ・シラカワ。
なんたって、その彼女の携帯に登録されてた飛鳥エイジは、「白河修」の偽名でしたから。いやホントにです。

しかしねえ……
飛鳥事件の概要は、本館の目次に書いてありますので参照下さい。
まさかねえ、自分の部屋で下着のまま「ロム兄さん最高!マジ恋愛対象!」とか叫んでゲーム画面見てた女に、あらぬ言いがかりで訴えられるとは夢にも思わなかったですよ、ホント。

グランゾンの最強兵器はこの「ブラックホールクラスター」ですが、これがネオ・グランゾンになると、「縮退砲」ってとんでもねえ武器に進化します。もう手がつけられないです。

で、その女の子は、縮退砲もしってるんですね、これが。
さらに、口裏合わせて嘘作り上げた相手の男もゲームオタクでして、もちろんスパロボはほぼ全シリーズプレイしてますね。

ただ、その二人と飛鳥エイジの容姿を、オタクイメージで作らないで下さいね。
その若い二人は、ともに美男美女です。少女は街でスカウトされるような子だし、男も、身長はないけど、どこいっても凝視されるようなイケメンです。
で、飛鳥エイジは、いずれ本編でもばれてきますが
呂布とか
ラオウとか
戸愚呂弟とか
アーロン(FFX)とか
クロス元帥とか

その辺でイメージつくると、まあ近いかなと。

ハンター×ハンターの旅団でいうと、
男=シャルナーク
少女=マチ
飛鳥=ウボォーギン

ですな。3人で並んで歩いてたら、誰がどう見てもヲタクチームには見えないでしょう。
実はヲタクだけど。

ちなみに、少女は本編でも「マチ」の名で登場してきます。別館ではまだまだ先になりますがね。

飛鳥の語りは、お終いどころか始まったばかりです。
シュウ・シラカワのグランゾンが放つ、このブラックホールクラスターは、全てを飲み込む超重力の渦。飛鳥もまた、関係者全てを巻き込んで、己の戦いを展開し続けます。

いつか、悪党どもにメチャクチャにされた人生と幸せを取り戻すために。

  

Posted by 飛鳥エイジ at 15:02Comments(0)

2007年08月30日

昨夜のNHK「クローズアップ現代・アメリカの死刑冤罪」

 暴行された女性が、何人かの容疑者の写真から、「この男です」と証言した相手が10年も刑務所に収監されてたんですが、なんとDNA鑑定で真犯人が逮捕され、「犯人」とされた男は10年間、無実の罪でムショに入ってたという事になったわけです。
 で、被害者の女性は、自分の証言が原因で、何の罪もない男性の人生を台無しにしてしまったと苦しんでいました。そりゃそうでしょうね……自分が「犯人だ」と証言した相手が何の関係もない人物だったわけですから。

 でね、飛鳥エイジは、意図的に陥れられたんですが、その場合はどこに怒りを持って行けばよいのかな?と。

 飛鳥を刑務所に送り込もうとした男女は、今も自分たちの嘘を貫こうとしています。現に、我が友が男と話したところ「ああ、それはあんたが騙されてますね。」だと。よくもまあいけしゃあしゃあと……本当に殺意もわいてきます。仕方ないですよね。
 友には、決定的な証拠も見せた上でその野郎と話してもらったのです。こちらに数々のとんでもねえ証拠があることも知らずに嘘が通ると思いこんでいるあたり、やはりまだケツが青いガキなのかなと悲しくなります。
 そんなガキに踊らされ、飛鳥を刑務所に送ろうとしたM県警察とS台地検、さらにはその虚偽証言を知りながら、自分たちの過去の不祥事を誤魔化すよい機会だと飛鳥潰しに乗り出したM県教育委員会!!

てめえら……上のアメリカ女性のな、爪の垢でも煎じて1.5リットル飲み干せ!自分のせいで人生壊れちまった人間に対して、てめえらは申し訳ないどころか、飽くまで嘘を貫こうと言うわけか!!
ったく、それでも人間か!?

こちらで気長に記事を読んでくださってもよし、本館で先まで読み進めるもよし、読者諸氏には好きに読んで頂いてけっこうですが、飛鳥の語りは全て真実であり、その多くには、映像、資料など客観的な証拠が数多く存在します。
 M県教育委員会、R町教育委員会、T田、N津川など、こちら別館にもいずれトンでもねえ悪党どもが登場し、「いやこんなまね学校じゃ無理でしょ?」ということをやらかしていきます。ですが、全て事実なのです。
 あらかじめことわっておきますが、飛鳥エイジにも決して落ち度が無いわけではありません。しかし、実際にどう考えてもつじつまが合わないことが多すぎるのです。しかも、T田たち「非常識管理職」のやらかしたことは、事実が曖昧な飛鳥の件とは違って、もう間違いのない厳然たる「落ち度」です。

 思い出しても首360度回してやりたくなりますよ。
「あんたは子供を大声と暴力で意のままにコントロールするゴリラ教師だ。」
と言われましたからね。で、その後本当にそうなのか検証するチャンスがすぐにありまして……。結果は、大爆笑もんでしたが、その時に「T田」がやらかした子供たちへの情け容赦ない仕打ちは、教師どころか人間の風上にも置けない許し難い暴挙でした。

 興味ある方は、本館本編の「ゴリラ教師のランキング」をご覧下さい。

 アメリカでは、もう100人以上の死刑囚が、冤罪だったと釈放されています。
 日本でも、強姦罪で服役中だった犯人が、真犯人が逮捕されて今さらながら釈放され、話題になりましたよね。

 飛鳥エイジは、事件でさえないものを事件であると「創られて」、しかも前例判例を全く無視したS台地検の暴走により、重罪人とされてしまいました。しかも、K北新報はじめマスゴミどもも共に暴走し、飛鳥の家族まで苦しめてくれました。

 許せねえよクソどもが。

 っと、許すことは出来ませんね。関係者全てに、相応の報いがなければ、この国に正義など存在し得ません。

 というわけで、飛鳥エイジ、最後まで戦います。例えどんな邪魔が入ろうと、最後に勝つのはこの俺です。まあ、相手はヤクザ以上に手段選ばない「治安機構」なので、殺される可能性もありますが。その気になればなんとでも難癖付けてムショに放り込んで、中で「事故死」でもしてもらえばいいわけで。
 そのくらい平気でやりますよ、やつらは。現に飛鳥は、拘置所で殺されかけましたから。

 ふう……いつになったら、この激烈な怒りが鎮まるんでしょうね?
 怒りの対象がまとめて無惨な死を遂げてくれたら気も晴れますが、そんな目にあったのはまだ一人だけですから、まだまだ足りないし……。

 みなさん
 飛鳥の怒りを不当なものと思わないでくださいね。どうか、ほんのちょっと想像してほしいんです。飛鳥エイジと同じ目に遭ったとき、あなた自身はどうするか、ということを。そのためにも、出来れば最後まで語りを聞いて頂きたく。

 あまりにも創作小説のような出来事満載の「現実」ですが、たまにはいるんです。たまたまこんな人生抱えてしまうバカが。

 では、また……。
  

Posted by 飛鳥エイジ at 12:22Comments(0)

2007年08月30日

美樹のこと もう二つ

早くも本編補足です。

美樹のエピソードは多々あるが、ここでもう二つ紹介しておきたい。
一つは、遠足参加。
歩きに限らず、長時間動き続けることが不可能な美樹は、これまで徒歩遠足には参加したことがなかったという。俺は「なんで?」と思ってしまった。
別に歩けるところまで参加すればいいじゃないか。何のために緊急車両を用意しているんだ?そんな至極単純なことがわからない教師が存在することの方が摩訶不思議よ。
で、一応本人の意志は確認しなくてはならない。俺は美樹に、歩き遠足に出たいかどうかたずねてみた。返答はもちろん、「みんなと一緒に行きたいです。」と。決定だ。


当日は天気に恵まれ、我がH小学校6年生は元気に学校を出発した。目指すは5キロメートル先の町立公園だ。
美樹は他の子供たちと同じペースで歩けるはずがない。なのに、だ、常に美樹は列の真ん中あたりにいるのだ。そう、皆が特に意識することなく、美樹のペースに合わせて歩いているのだ。俺は一言もそんな指示は出していない。皆、ここでするべきことがわかっているわけだ。
やがて、美樹がいつものようにへたりこむ。そして、ぴくりとも動けなくなる。そこで俺は、待機していた引率教師運転の車を呼び、美樹を目的地まで連れて行ってもらった。さて、そこからがまたこの6年生どもの楽しいところだ。
「わかってるな、お前ら!」という俺の呼びかけに対して、「もちろん!」と子供たち。
そこから突然ペースアップ!まるで競歩のように歩く歩く!残りは2キロ以上あったが、全員まるで小走りのように歩き続けた。ちょいと太めの野郎が「はえーよー、疲れるよー。」とへたれ始めたが、リュウヤが「ダイエットしろ!」と一喝。そんな感じで全員汗だくになりながら目的地到着。先についていた美樹は、車で一休みできたおかげか、なんとか歩くことくらいはできるようになっていた。
遠足でみんなと一緒に弁当を食べるのは、美樹にとって久しぶりのことだったらしい。ほんとうにおいしそうにご飯をほおばる美樹を見ながら、俺は「どうってことねえだろ」と呟いていた。

なぜ、出来ないのか。

美樹が倒れてしまったらとか、何か事故が起こったら責任問題が云々などというネガティブな発想から入るのが、「安定志向」の教師どもなのだ。問題もトラブルも、起こったら対処すればいいのだ。要するに、トラブルに対する処理能力が足りない教師が多すぎると言うことなのだろう。

そしてもう一つ、瞬時の対応に自信があればこそできる技を聞いてほしい。

学芸会が近づいてきた。
美樹は、セリフのある役を務めることになった。もちろんこれも久しぶりのことだったという。いつ入院してしまうかわからない美樹に、大切な役を任せる教師はこれまでいなかったらしい。ほんとうに、なんでそうなるかね……?
俺は練習に入る前に、(もちろん本人もいるところで)全員にはっきり伝えた。
「美樹はやる気はばっちりだ。だがな、病気でいつ動けなくなるかわからない。というわけでお前たち、誰でも美樹の代わりが出来るようにしておけ。」
なんてとんでもねえことを!と感じるセンセイも多いだろうな。だが、子供たちはきちんと俺の真意を理解してくれている。そう、これは、美樹に「安心しろ」と言っているのだ。「先生!男子もですか?」
そんなヤジのような質問が出るほど、こいつらは余裕がある。もちろん、俺の指導は厳しい。これから練習で血反吐を吐く……のは大げさだが、汗と鼻水にまみれるのは間違いない。そんな中で、美樹を支えながら劇を仕上げていく「自信」が、こいつらにはあるのだ。
最後に俺は美樹に伝えた。
「だから、安心して練習しろ、美樹。」

だが、やはり病魔は美樹に襲いかかった。
本番一週間前、美樹は入院してしまったのだ。学芸会に間に合うかどうかは微妙なところだった。
それからの練習では、俺の話したとおり、日替わりで美樹の役をいろいろな女子がフォローし、劇は順調に完成へと近づいていった。
だが
全員、迫る本番のこととともに、「美樹は間に合うのか」と、常に気にかけていた。
本番前日、美樹の家から電話があった。
「今日退院できました。ご心配おかけしましてすみませんでした。美樹なんですが、まだ普通に動くことは出来なくて、明日の学芸会には出られるかどうかわかりません……。」
「そうですか。劇の方は大丈夫ですので安心してください。それと、ぎりぎりまでみんな美樹さんをまっていますので、今夜はゆっくり休ませてあげてください。」
そうだ。みんな待っているのだ。そして、俺もまた「美樹はきっとくる」と信じたい思いでいっぱいだった。

そして、本番当日。
6年生の劇は、学芸会のラストを飾る。だが、いよいよ開演というときになっても、美樹はやってこなかった。
「美樹、やっぱりこれないのかな。」
女子の誰かが、ため息をつくようにそうもらした。一瞬、全員の表情に影が差す。みんなが、必死で練習する美樹を見続けていた。だからこそ、美樹に自分の役をやらせてやりたかった。スタンドインは完璧だったし、女子のほぼ全員がいつでも美樹の代役をこなせた。だが、誰もやりたくはなかった。
空気も重くなりかけたそのときだった。

「あいつは来るよ。」

リュウヤが、太く低く、しかし力強くそう呟いた。

「……そうだよな、あいつ来るよ。」
「うん!いつ美樹が来ても言いように私たちはちゃんと劇進めておこう!」

ほら、また光が差してきた。

まるでドラマだと思うかい?でも、こんな現実があるんだよ。そして、このエピソードにはさらに劇的なラストが待っていた。
劇はすすみ、いよいよ美樹が登場するシーンがやってきた。主人公が生き別れた妹と再会する場面。妹がやってきたことを伝えに来る看護婦が、美樹の役だ。
今、着替えないともう間に合わない。そんなぎりぎりの瞬間までみんなが待った。
その時、楽屋の裏に美樹が現れた!

「ごめんなさい、せん・・」
「よしお前ら、美樹を着替えさせろ!」

おいおい話聞けよ担任。

だが、ほんとうに一刻の猶予もなかった。女子の何人かが美樹を連れて楽屋の奥に消える。ほぼ同時に、美樹の登場シーンがやってきた。
俺はステージ側にもどり、劇の様子を見守った。
そして……美樹がステージに現れた!看護婦の衣装に着替えて、よろよろと下手側からやってきたのだ。歩くのがやっとという美樹が、自分のポジションについた。そして、「お見舞いの方がいらっしゃってますよ。女性の方ですよ。」と、美樹のセリフ。それは小さな声だったが、しんと静まった場内に響き渡った。

学芸会は終わった。大成功だった。そう言える理由は、美樹が間に合ったからでもあった。
片づけが終わって、全員が一息ついたころ、またリュウヤ言った。

「だから、来るっていったじゃねえか。」


本気で教師やってれば、ドラマなんて毎日のことなのさ。
美樹だけじゃない。このクラスの全員が、毎日のドラマの主人公だった。
俺は、俺の教師時代は、こんな子供たちに囲まれて、最高に幸せだったよ。


次の本編エピソード、「かかと落とし」も、けっこうドラマです。同じ体験をしてる教師がいたら連絡ほしいくらいで。まずいないでしょうけど。つか、いたらヤバイですって。
  

Posted by 飛鳥エイジ at 05:00Comments(0)

2007年08月29日

本編1-4 美樹~ミトコンドリア病がどうした!

平成7年度6年生についてもう一つ語っておきたいことがある。いや、語りたいことは山ほどあるが、この一編のエピソードは、一般の方々ばかりでなく、日本中の教師に知ってもらいたい話なのだ。 2学期の開始と同時に、俺のクラスに転校生がやってくることになった。もちろん、転校生自体は珍しいモノでもなんでもない。だが、このときばかりはどうもただならぬ事情のある子が転入してくるようだった。 転校生は、宇津木美樹という女の子。6年生だが、3年生ほどの体格しかない、ある特殊な病気を抱えた子だった。 病名は、「ミトコンドリア脳筋症」  俺も初めて耳にする病気だ。これは、細胞内のミトコンドリアが十分にエネルギーを発生させることができず、突然エネルギーが切れたように動けなくなってしまうという、原因不明の難病だった。 しかし、本当にやっかいな問題は、病気とは別のものだった。美樹は、激しいイジメにあっていたというのだ。  病気のため普通の子供たちと同じように活動できない美樹は、いろいろな場面でつらい仕事や活動を免除されていた。それを他の子供たちが「えこひいき」ととらえたというのだ。特に、男子は美樹に対して執拗なイジメを続けていたという。それがもとで、美樹は男子恐怖症になってしまっているのだという。 通常、転入生の手続きは文書のみで終わる。だが、美樹の場合は前の学校の担任と養護教諭(保健の先生です)がわざわざH小学校までやってきて、こんこんと俺に美樹の状況を話して聞かせたのだった。 そして、これまた通常は、そんな肉体的にも精神的にも大問題を抱えた児童を迎える教師は、憂鬱になるものだが、俺は 「あ、心配ありませんから後は私に任せてください。」 と、二人にお帰りいただいた。 正直、俺は頭に来ていた。担任も養護教諭も、渋い顔で美樹という子がどんなに大変な子かということばかり話していった。その言葉の中には、美樹のためにどんなことをしたかということが一つも含まれていなかったのだ。俺は、まだあったこともない美樹という女の子が不憫でならなかった。そして同時に、残りの小学校生活が楽しいモノになってよかったな、と嬉しかった。  嬉しかった。今までずっと苦しんできたのだ。後は、俺のクラスで笑って過ごしてほしい。俺は、美樹がやってくる日を心待ちにしていた。

 2学期始業式。美樹が全校児童の前で紹介された。当時の校長は俺の良き理解者だったので、紹介の時にもなんの不安も無い表情でいた。ただ、紹介される美樹は、どう見ても優しさ漂う雰囲気とはほど遠い、北斗神拳継承者の長兄ラオウの様に佇立する俺が担任と知って、それだけで倒れてしまいそうな様子だった。なるほど、今にもへし折れてしまいそうな弱々しさは、外見だけではないと即座に感じ取れた。 これはますます楽しみだ。

 教室に向かう廊下で、美樹はずっとびくびくしていた。まぁ95%くらいは俺が怖かったのだろうが、これから初めて出会うクラスメートたちにも不安ばかり感じていたのだろう。本当に、この子はこの小さな体でどれだけのイジメに耐えてきたのだろうか?それを思うと、俺は心が痛んだ。「さて、今日からこのクラスで一緒にやっていく宇津木美樹さんだ。みんなよろしくな。詳しい紹介はいらないだろ?そのうち解ることだから。」 俺の転校生紹介はいつもこんなものだ。実際、このクラスには学年スタート時に二人転入生がやってきたが、数日ですっかりなじんでいた。今ではもう、1年生の頃から一緒にいるかのようなとけ込みようだ。「で、席なんだが……リュウヤ、お前の隣だ。怖がらせるんじゃないぞ。」「はい。」 野太い声が教室に響く。リュウヤは、クラスのリーダー的男子だったが、決して線の細い優等生君ではなかった。というより、外見ははっきり言って怖かった。実際ケンカも強い。わかりやすく例えると、こいつはフリーザに似ていた(もちろん最終段階)。本人はそう言われるのがイヤだったようだが。 そんなフリーザ……あ、いやいやリュウヤの隣に美樹を座らせたのは、もちろん俺の策略だった。よりによってクラス最強最凶の男の隣。美樹は、一瞬泣きそうな顔をしていた。うむ、計算通りだ。 ラオウ担任の決めたことに美樹が逆らえるはずもなく、死にそうな足取りで彼女は歩き始めた。男子恐怖症というのは本当らしく、リュウヤの前で美樹は動けなくなってしまった。「あ、あ、あの、よ、よろしく……」 蚊の鳴くような声とはこういうものか。静まりかえった教室に、ようやく美樹の声があがった。 念のために言っておくが、教室が静かだったのも俺の策だ。つーか、こういう演出に完璧に付き合ってくれるあたりがこのクラスGOODなところだ。「早く座れよ。」 リュウヤが話しかける。美樹はびくっとして、その声に従うようにいそいそと席に着いた。 やはり不憫だ。 抗うことなどできなかったのだろうが、この子は今までどれだけこんな風にびくびく過ごしてきたのだろう。考えたくもなかった。「さて、授業を始める。国語の教科書出せ。」 おいおい、始業式から授業はねえだろ。が、俺は普通にこういうマネをした。夏休みには自由研究以外の宿題は出さなかったし、その研究も「どんなテーマもOK。ただし全力で。」という指示のみだった。そんなわけで、始業式から普通に授業が開始できたのだ。 だが、今日H小学校にやってきた美樹が、教科書などきちんとそろえているはずがない。 誰にも話しかけることができず、目の前の担任はどう見ても優しく面倒を見てくれるはずがない。下手に口を開いたら、秘孔でも突かれそうだ。  美樹は、H小学校初日から絶望的状況に追い込まれた。「またこんな生活なんだ。」 美樹の目がそんなあきらめの色に染まりかけたその時だった。「おい、教科書無ぇんだろ。これ見てろよ。」 隣のフリ……リュウヤが、美樹に教科書を渡した。とても優しいとは言えない態度だったが、それだけに美樹は驚いたようだ。大きく目を見開いて、リュウヤを見つめる。「なに驚いてんだよ。俺は教科書なくても大丈夫だからよ。お前、教科書届くまで毎日俺の使えよ。」 やるじゃねえかリュウヤ。教科書無くてもってのはどうか知らんが、やることが渋いねえ。 ちなみに、これは俺が指示したことじゃない。俺がリュウヤに言ったのは、 「前の学校でひどくいじめられてた子が転校してくる。H小学校がどんなところかお前が教えてやれ。やり方は、お前に任せる。」 ということだけだった。もちろん、他の子供たちにも同じことを伝えてある。 そう、それだけで十分なのだ。「あ、ありがと……」 美樹は、ちゃんとお礼を言って教科書を受け取った。もう、心配ない。 休み時間。 子供たちは美樹を特別扱いするわけではなかった。ただ、今までずっと一緒だったかのように声をかけ、校庭に連れ出した。激しい遊びにはついていけるはずのない美樹だったが、動きの止まる美樹を、子供たちは「待った」のだった。 放課後、掃除の時間のことだった。前の学校では、美樹は掃除をしなくてもよいことになっていた。他の男子たちはそれが気に入らなかったらしく、美樹へのイジメをエスカレートさせていったのだという。だが、俺は特に指示は出さなかった。そう、放っておけば安心なのだ。 美樹は、なれない手つきで掃除に加わった。そして、まもなく動きが止まった。机など運べるはずもない。どうみても、周囲の子について行けない。 だが、それさえも子供たちは違和感なく受け入れた。できることをしてくれれば十分だというように、美樹ができることをやってくれるのを見守っていた。 掃除の終わりに開かれるプチ反省会で、美樹は笑顔を見せた。ほんの少しでも掃除に参加できた。そして、ちょっとだけかも知れないがみんなの役に立てた。美樹にとっては初めての喜びだったのかも知れない。 H小学校初日、すでに美樹は笑顔を取り戻していたのだ。「ありのままを受け入れる。」 なぜ、そんな当たり前のことができない学校、学級が存在するのだろう?それは、子供たちの「自然体」を否定している異常な世界ではないのか? 美樹の笑顔は喜ばしい。だが同時に、この子がつい先日まで過ごしていた教室では、今もなお互いを認めあえない、子供たちのいがみ合いが続いているかもしれないのだ。

 ちなみに、美樹の病気は発作を起こすと、気絶したように動けなくなるものだった。クラスの子供たちは、美樹が発作を起こすと安全なところまで皆で運び、同時に俺や保健の先生に超速攻で連絡を入れてくれた。卒業まで幾度となくそんな場面があったが、子供たちはイヤな顔一つせず、美樹を支えてくれた。美樹も、そんな仲間たちに心を開いてくれた。

「私は、このH小学校に転校してきてよかったです。ずっと、みんなと一緒にいたいです。」 卒業間際に美樹が書いた作文の中に、彼女の思いが綴られていた。

1-5 「かかと落とし」 に続く
  

Posted by 飛鳥エイジ at 22:57Comments(0)転落教師本編」