2007年09月21日

ニコルーっ!!(Byアスラン・ザラ) 2

いや……「2」って……。


ニコルが拾われたのはこの辺の神社なんですが……。平成15年6月11日水曜日のことです。
もし、心当たりの方がいたら地図はこちら

あの後ニコルは、手術まで受けてなんとか生き延びました。

今はおそらく……あそこにいます。

残念ながら、飛鳥の元でも、マチの家でもない、「あり得ない」あの場所に。
  

Posted by 飛鳥エイジ at 13:53Comments(0)

2007年09月21日

四国八十八番

大窪寺の御守り

1400キロメートルを歩き抜いた末に手にした、結願の証

そして、この中にはマチと過ごした証も

ま、今となってはどうでもいいが。
ただ、先日の子授け地蔵同様、あまり見ることのないものかと思ったのでね

歩きへんろの終点で手にした御守り

この先、飛鳥を護ってくれますかねぇ。
  

Posted by 飛鳥エイジ at 09:39Comments(0)

2007年09月20日

しし座流星群の夜に~奇跡の輝きと、地上の星たち 後編

 平成13年(2001年) 11月18日 午後10時半。
 そろそろ校庭に出て「監視」に入ろうとしていた俺は、職員室で熱いコーヒーを飲み干していた。

 そのとき、職員室の入り口が静かに開き、目を赤くしたユナが現れた。嫌な予感が当たってしまったか?俺はユナの言葉を待った。
「周りに人がたくさんいると落ち着けないんです……。人の気配とか臭いで息苦しくなってしまって。すいません……眠れないです……。」
 担任のY田さんの問いかけに、ユナはこう答えた。もともと神経質な子だが、クラスで必要以上に気を遣う日々を送るうちに、精神的に不安定になってきているのかもしれない。俺自身、似たような状態だけによく理解できる。ユナは今にもべそをかきだしそうだ。
 いまごろアイナやマリカも気が気ではないだろう。ユナがこんな状態なのを放っておけるような子たちではない。本当は一緒に来たかったのだろうが、それではY田さんの不興を買うことにもなりかねない。
 ユナは、とりあえず保健室で休むことになった。
 俺もユナのことが気がかりだったが、今は70数人の子供たちの期待を現実のものにすることも大切な職務。葛藤を抱えながらも、俺は校庭でレオニズの監視に入った。

 風のない夜で、体はしんしんと冷えていくが、足だけは文明の力で温かなままだった。さすがはこたつ。宇宙最強の暖房器具と呼ばれるだけのことはある。(byタカヤ・ノリコ)
 不思議と、足ががっちり温かいと、上半身の冷えも感じなくなるものだ。万全の体勢で夜空を見上げる俺だが、星は一つも見えていない。流星雨に出会うためには、まずこの雲が切れてくれなければ話にならないのだ。雲の向こうで大流星雨なんて、悔しくて奥歯が擦りへっちまう。

 晴れる&流れる。俺は、このWの幸運を信じて待った。

 その時だった、校舎1階の東はじにある保健室に突然明かりがついた。「まさか」と思いながら、俺はこたつからはい出して保健室に向かった。保健室には、校庭から直接はいることが出来る入り口があった。俺はそこから室内に首をつっこみ、ベッドをのぞき込んだ。
 ユナが、体を起こして泣いていた。
「だめか?ユナ。」
「うん……。眠れないです……。こんな広いところに一人じゃ。アイナとマリさんが一緒なら安心だけど、そんなことYTに話せるわけないし。どうしたらいいの?」
 ユナがY田さんを恐れるには理由がある。先日ユナが体調を崩したときのことだ。2,3日続けて保健室で休む日が続いた後、Y田さんにまた保健室に行きたいと話すと、「そんなに具合が悪いなら家に帰って寝ろ!保健室は休むところじゃねえぞ!」と怒鳴られたのだ。

保健室は具合の悪いときに休む場所だと思うのだが……。とにかく、ユナはY田さんに理不尽は叱責を受け、心に傷を負った。以来(というかそれ以前からだが)ユナたちはY田さんに話しかけるのが怖くて、出来るだけ避けているらしい。

 ベッドの上で涙をこぼすユナに、俺は切り出した。
「外で俺と一緒なら眠れるか?」
 はっとして顔を上げるユナ。俺は、外にこたつを出していること、空を見張っていることを説明した。するとユナは、「うん」と笑いながら一言応え、俺の提案を受け入れた。
 校庭のこたつは二人乗りになった。
 ごろりと仰向けになり、二人で空を見上げる。ユナはもう落ち着いた顔をしていた。
「飛T、星、見えないね。」
「そうだな。しかし!必ず晴れる!俺が言ってんだから間違いなく晴れる!」
「気合い入ってるね先生。流れ星、見たいなあ……。」
 ユナに笑顔が戻った。
 1学期、クラスの女子から仲間はずれにされるなどいじめを受けていたユナは、アイナやマリカとともに俺のところに相談にやってきていた。アイナもマリカも、どちらかというと気の強い方だ。少々のいじめなど自力で跳ね返せるのだが、ユナはそれが出来るほど強い子ではなかった。自分を責め、いつも思い悩んでしまうのだ。感受性は3人の中でも一番強かった。
 それだけに、俺が暴れ狂う様を見るのも、担任から理不尽な叱責を受けるのも、ユナにとっては周りが思う以上に苦痛だったに違いない。
 やがてユナがうとうとし始めた。俺は左腕を差し出して「使うか?」と尋ねた。ユナは、小さくうなずいて俺の腕を引っ張り、そのまま枕代わりにして目を閉じた。程なくして、ユナはすうすうと寝息をたてぐっすりを眠ってしまった。どんなに疲れていたのだろう?
 俺は、嬉しくて、悲しかった。
 この子はどうしてこんなに苦しんでいるのだろう。
 俺が、自分の苦しみに巻き込んでしまったからか?
 クラスに居場所が無いからか?
 担任から嫌がらせをうけているからか?
 考えてみたところで、ユナの苦しみを何とかしてやることは出来なかった。
 今は、こうして腕の一本を、お詫びを込めて差し出すだけだ。俺の心は、目の前に広がる曇天のように暗鬱としていた。
 ちょっと手がしびれてきたころ、ユナがふと目覚めた。「もう大丈夫」と笑うので、みんなのところに戻すことにした。時計を見ると、もう11月19日の午前1時を過ぎていた。

 ユナが校舎に戻っていくと、入れ替わるように何人かの子が監視基地にやってきた。

「どうしたお前たち。まだ曇ったままだぞ。」
「うんわかってる。でも、なんだか眠れなくて。」

 この夜に「眠れない」というのは、無理もないことだ。流れ星は通常、一晩に数個見られればいいほうで、群流星でもその数は一晩に数十から数百といったところなのだ。それが、レオニズの大出現となるとまさにケタが違う。一分間に数百から数千というとてつもない数の流れ星が乱れ飛ぶ。それは、一生に一度見られるかどうか……いや、それを見ることなく一生を終える人間の方が圧倒的に多い、超レアな天文現象なのだ。
 それが、あと数時間後に起こるかもしれない。
 そう考えると、いてもたってもいられないのは、俺も同じだ。俺は、その数人の6年生をこたつに入れて、一緒に雲に覆われた夜空を見上げた。
 雲が切れる兆しはないが、思いは皆同じだ。

 数十年に一度の、世紀の天体ショー。

 子供たちはもちろん、何年も星を見上げてきた俺ですら、流れ星の乱舞する夜空など見たことがない。
「晴れてくれ!そして、流れてくれ!」
 今、日本中でどれだけ多くの人々が同じことを祈っているだろうか。その願いが天に通じることを信じ、俺もまた空に向かって祈り続けた。

 午前3時。こたつに横になっていた女の子が突然叫んだ。

「先生!西の方!」

 見ると、西の方角の雲が大きく切れて、奥羽山脈の雄大なシルエットが夜空に浮かんで見えた。山際には、星が輝いているのがはっきりと見える。この夜、初めての星の光だ。
 いよいよ来た。西の空にぽっかりと空いた晴れ間は、ゆっくりと俺たちの頭上へと広がり、やがて、東の空の獅子座までが姿を現した。ステージは整った!あとは……。

「あっ!流れた!」
「あっちもだよ!ほら!」

 何人かの子供たちがほとんど同時に大声をあげた。全天の半分ほどが星空となったころ、それはついに始まった!
 まさに「あり得ない」光景だった。雲の切れ間からのぞける夜空に、もうすでに十数個の流星が確認できた。20年間星空を見続けてきた俺も、こんな流れ星の速射砲は見たことがない。いったい、全天の様子はどうなってしまっているのか!?

 まちがいなく、それはレオニズの大出現だった。今、俺と、S台小学校6年生70余名の眼前に、大流星雨が現実のものとなって現れているのだ。
 にわかには信じがたい目の前の現実に、俺は一時我を忘れて星空を凝視した。
 が、俺はすぐさま自分の任務を思い出し、校舎に向かって全力で駆けた。窓を開け、最大音量で叫ぶ!

「全員起床ォーッ!」

 全員が飛び起きる。

「さあ!始まったぞみんな!」

 俺の声に、子供たちはみなごそごそと上着を着込み、眠い目をこすりながら外に出る。
 その時の様は、いま思い出しても笑ってしまう。外に出て、夜空を見上げた子から順に、驚きの声をあげて眠気などふっとんでしまうのだ。

「うわっ!すげぇ!」
「なんなのこれ、信じられないよ!」

 足下の段差にも目がいかず、つんのめる子が続出だ。
 雲はみるみる東に遠ざかり、いよいよ全天が姿をみせたとき、まさに一生に一度の天体ショーがその全容を見せた。
 絶え間なく降り注ぐ光の雨。一分間に何十、何百という流星が煌めく。まるで全天がデコレーションされたかのように、光の筋が星々の間を駆け抜けた。
 音さえ聞こえそうな錯覚に陥る。この夜、星空はエキサイティングな劇場と化していた。子供たちの興奮はどんどん高まっていく。

「だめだあ!数え切れない!」
「700まで数えたけど、もうだめだよ。いったい何千個流れるんだよこれ!」
「飛鳥先生!なんかあの辺から流れ星が出てくるみたいに見えるよ。」

 そばにいた女子が、獅子座の頭を指さしながらそう言った。流星群は、輻射点という、夜空のある一点から流れ出るように見える。このすさまじい数の流星は、獅子座の頭部に輻射点をもつため「獅子座流星群」と呼ばれるのだ。通常、どんな流星群でも、輻射点が視覚的にわかることなどあり得ない。だが、これほどの大流星雨となると、流星観測など経験のない小学生でも輻射点がはっきりとわかるほど「星の流れ出る穴」が見えるのだ。この奇跡の流星雨は、それほどまでに凄まじい出現を見せた。

「先生!これって何を観察すればいいんですか?」
「見るだけでいい!みんな!まばたきももったいないと思え。こんな光景は……二度と見ることはできないぞ!」

 本当に俺はもうまばたきもしていなかった。これは「現象」じゃない。星空が準備した「ショー」だ。一瞬たりとも目が離せない。

 だが、俺には、もう一つ見ておかなくてはならない素晴らしいものがあった。
 それは、子供たちの顔。

 世紀の天体ショーにも負けないほど、地上の子供たちの顔は輝いていた。
 そうだ、感動する者がいるからこそ、自然の贈り物には意味があるのだ。そして、感動できる子供たち、感動を知る子供たちを育てるのが、我々教師の仕事なのだ。

 子供たちの瞳は、みな夜空を仰いで輝いている。まるで、乱れ飛ぶ流星の光を集めているかのように。
 俺は、レオニズに勝る美しい星々を、手の届く地上に見た。
 その地上の星々の中に、アイナ、ユナ、マリカがいた。
 アイナとマリカは、俺の両腕にしがみつくようにして、涙を流しながら声を上げた。
「飛T!もう一生こんなの見られないよね!」
「今日、やってよかったよ!最高の思い出だよ!」

 夜空を埋め尽くす奇跡のようなきらめきの中、俺は人生最高の時を過ごした。

 そしてそれは


 教師として最後の輝きの時だった。






 余談
 S台小学校のとなりの、A山小学校にも、天文大好きな教師がいた。俺は、当然A山小学校でも同じような観測会が開かれたものと考えていたが、その先生は子供たちにレオニズの話さえしなかったという。「あぁ?」と一発で呆れてしまった俺だが、さらにとどめの一撃だったのは、その先生はなんと6年生担任だという。

 まあ、教師である前に一人の人間、天文愛好家でもかまわないけどね。でも、その先生は一人でレオニズを見上げて、どの程度感動できたのだろう?教師という仕事に就いたのなら、子供たちが貴重な経験を積めるチャンスをみすみす投げ捨ててしまうのはいかがなものだろうか……?俺は、子どもたちと一緒にあの大流星雨を見上げることで、自身の感動も何倍にも増やせた。なんというか……マニアさんになると、独りでもぎゃあぎゃあ盛り上がれるものなのかな。ちょっと残念だ。

 さらに残念なことに、俺が知る範囲で小学校がレオニズ観測会を開いたという話は聞こえてこなかった。

 どうかこれを読んでいる皆さん。どこかでS台小学校の6年生のような感動を味わえた子供たちの話をきいたなら、俺に教えてほしい。

 ……だってさ、子供たちに「星を見ることの感動」を感じさせてやれない「星好き先生」なんてさ、ただの星好きであって、「先生」つけることできないでしょ?そんな「星好き(先生)」ばかりだったら、あまりにも悲しいよ日本の教育界。

 ま、ホントに悲しいけどね。特にM県教育界は。






 あ
 大成功に終わった「獅子座流星群観測会」について、T田がその後一言も触れることがなかったのは、言うまでもない。 



2-17 しらっ子祭り 怠け教師に何が出来るか 前編
  

Posted by 飛鳥エイジ at 20:03Comments(0)転落教師本編」

2007年09月20日

大滝&制服女子高生の組み合わせ

まあ写真はたくさんあるからねぇ。本館の方は、この写真が撮影される半年ほど前の語りに入ってます。


こんな感じでマチとはいろんな所をうろつきました。

元教師と教え子の関係についてビミョーな感情を抱く「大衆」が多いことは承知してますが、だったら教え子と結婚する教師なんて存在してはいけないはずですよね?

ま、ぶっちゃけすぎて身も蓋もないんですが、

教師だって人間なんですよ

恋のスタイルだって、本人同士が納得ずくなら、どんなスタイルだって否定されるモノではないのです。

ただ、飛鳥の場合は、逆に「20才も年下の教え子」という立場を利用されてしまったのですが……。

その辺も、いずれ詳しく。というか、本館ではまもなくその場面にかかりますけどね。

ともあれ、飛鳥は今後も事実の証明のために「証拠」たる画像、資料その他を遠慮無く公開します。これは誰かを脅すような目的などもちろん皆無。誰かの行動や選択に何らかの強要を行うものでもありません。それ故、申し入れには対応すると公言しているのです。

語られて不都合だという「関係者」は、正面から飛鳥に申し入れるがいい。俺は何も強制しないし、脅してもいない。いつでも、聞く。

というか以前からそうなんだよ。逃げたり、こそこそ卑劣な手段に出ているのはテルはじめ俺を殺そうとした悪党どもだろが!!

まったく……

秋保大滝には、キョウコと行ったときの写真も存在します。
次々明らかになる当時の飛鳥の動き。
なんか、大変なことになりそうです。  

Posted by 飛鳥エイジ at 13:44Comments(0)

2007年09月19日

2-15獅子座流星群の夜に~ 前編

 

 俺は、星が大好きだ。
 ただの「好き」ではなく、「大」が付くほど好きなのだ。そんな俺が、この年の獅子座流星群をチェックしていないはずがない。

 別名「レオニズ」と呼ばれるこの獅子座流星群は、母彗星、テンペル・タットルが33年周期で回帰するのに合わせて大出現することで有名だ。母彗星がまき散らしたチリの中に地球が突入するとき、1分間に数十、数百個にも及ぶとてつもない数の流星が、獅子座のたてがみ付近から生まれ出るようにして夜空を駆けぬける。
 もちろんこれは、必ず見られるというものではない。はっきり言ってしまえば「運」次第なのだ。


 しかし、この年、2001年の獅子座流星群については、英国の天文学者アッシャー博士が日本における大出現を予測していた。アッシャー博士は、2000年の北米におけるレオニズ大出現を的中させたことで一気にその名を知られた天文学者だった。そのアッシャー博士が、「2001年は、11月19日の未明に日本で大流星雨が降る。」と自信たっぷりに断言したのだ。世界中の天文学者、天文愛好家の目が、11月18日の日没から日本に集中することになったわけだ。

 そんな折、俺が何もせずにその日を待つはずがない。


 実は、俺はS台小学校で過去2回、獅子座流星群の観測会を開いていた。6年生を対象に開いたその観測会は、子供たちが学校に泊まりがけで行う、小学校としてはあまり例のない本格的な会だった。が、結果は二度とも不発。数個の流れ星が見られただけのものになってしまった。それでも、夜学校に泊まっての観測会は6年生の子供たちにとって強烈な思い出になっているらしく、遊びに来る卒業生たちが今でもよく話題に出すほどだった。
 まさに「三度目の正直」。TTという立場でありながら、俺は6年生を集めて夜通し活動する無茶な企画に挑もうとしていた。

 まずは学年主任のT麻さんに話を持ちかける。当然のようにT麻さんは俺の話に乗ってくれた。さて、問題なのはこれからだ。
 あと二人の担任に対しては、俺とT麻さんのタッグチームで説得に当たった。
 Y田さんもT子さんも、俺が必要以上に6年生に関わることを快く思わない。あるいは、T田から「飛鳥を6年生から遠ざけろ」という指示が出されている可能性さえある。その二人を説得するには、「反論できない状態」に追い込むのが一番だ。
 過去2回レオニズ観測会を企画実行している俺には、実施に当たっての完璧なマニュアルがあった。Y田&T子がどんな疑問を投げかけてきても、俺は瞬時に即答した。子供たちを集める呼びかけの方法から、終了して各自が帰宅する段取りまで、すべてが綿密に計画され文書となっていたのだ。
 さらに、過去全く問題なく実行できたものが、今年の6年生では行えないということになれば、それは今年の6年生は、子供か担任のどちらか(あるいは両方)に能力的に問題があるということを認めてしまうようなものだ。
 計画書作成や当日の子供たちに対する指導は全て俺がこなすことを約束した。できれば面倒なことはしたくないY田さんも、これなら納得せざるを得ない。最後まで難色を示したのは予想通りT子さんだった。彼女は、とにかく俺の指導が嫌で仕方ないらしい。まあ、確かに俺は時たま、彼女の指導を遮って子供を動かすことはあった。申し訳ないとは思ったが、T子さんの指導は「低学年向け」なのだ。任せていては日が暮れても活動は終わらない。酷な言い方だが、民間企業ならとっくの昔に配置換えされているところだ。6年3組が4月からずっと低空飛行を続けている現実さえ、T子には見えていないかもしれない。さらに、3組の中心メンバーたちは毎日のように俺に助言を求めてやってくる。T子さんの俺に対する怨念は、T田のそれに匹敵するものだったかもしれない。
 それでも、T麻さんの絶妙なフォローなども効いて、最後にはT子さんも首を縦に振った。

 さて、後は最大の駄々っ子T田にうんと言わせるだけだ。

 俺は、既成のレオニズ観測会計画書にさらに手を加えた。最新のデータや実施意義などを揃え、まるで年次行事計画と見紛うほどの企画書を完成させた。それを、T麻さんが作成したものとして朝の打ち合わせに電撃提出し、まず全職員に周知してしまうという荒技にでた。通常この手の企画は、教務主任や教頭に相談し校長の承認をもらってから職員に周知するのが普通だが、そんなことをすれば教頭のS崎のところで計画はつぶされてしまう。ならば、「6年担任で決定したこと」として無理通ししてしまおうというわけだ。もちろん、これは大人としてあまり褒められた手段でないことは理解していた。しかし、「相手」が大人どころか人間として非常識なヤツなので、なりふり構ってはいられない。

 6年生担任の総意として獅子座流星群の観測会が進行中であることを全職員におおっぴらにし、その場でT田校長の承認を(無理矢理)得ようというこの作戦は、見事に成功した。あくまでも6年生担任の計画であり、飛鳥は経験を買われてアドバイザーとして加わるという企画なら、T田も露骨に企画つぶしには出られない。
 今も忘れない。このすがすがしい朝、T田が苦虫噛みつぶしたようなツラで「いいでしょう」と一言吐き捨てた瞬間を。

 かくして、「S台小学校獅子座流星群観測会」はスタートを切った。

 具体的な企画内容や当日までの出来事は、機会があれば語ることにしよう。ただ、俺が知る範囲では同様の企画を進めている「小学校」を見つけることは出来なかった。それが俺にとっては残念なことだった。新しもの好きな「ふり」だけしているR町の小学校&教育委員会など、「獅子座流星群」の存在すら知らなかったのではないだろうか?

 授業もうまくできない。人間としての広さも深さも乏しい。そんな教師集団によって構成される「学校」という教育機関。
 まともに機能しなくて当然である。

 さて、「S台小学校獅子座流星群観測会」は、実施当日を迎えた。2001年11月18日。一旦帰宅した6年生たちが、日が沈む頃また学校に集まり始めた。

 午後7時。寝袋や毛布を抱えて次々と校舎に飛び込んでくる子供たち。この日は自由参加制にしたのだが、100人いる6年生のうち70数人が集まった。過去2回がほぼ全員参加だったのに比べるとやや寂しいが、出てきていないのはサッカー軍団やヤンキー姉ちゃん予備軍のガキどもだったので気にもならなかった。

 その代わりといってはなんだが、なぜか中学生が20人ほど紛れ込んでいる。こいつらは俺が6年生の時に担任していた連中だ。
「お前たち、どこで今夜の観測会のコト聞きつけたんだ?」
「いや、だって今年は流星雨になるかもしれないってニュースでも騒いでるでしょ?そんなときに飛鳥先生が黙ってるわけないじゃん。」
「そーそー。んで、小学校に来てみたらビンゴってわけですよ。」
 なるほど、俺の行動は卒業生たちに読まれているらしい。今目の前にいる子は、俺が直接担任したわけではない、隣のクラスの女子だ。

 話が逸れるが、俺の元には毎日のように卒業生が襲撃……いや、訪問してくれていた。S台小学校に赴任して5年目。すでに二度、卒業生を送り出していたので、大勢の中学生が何かにつけ小学校、というか俺のところに遊びに来てくれていたわけだ。T田にしてみればそれも気に入らないことだったらしい。隙あらばクビにしたいとさえ思っていたかもしれない部下のもとに、日々たくさんの卒業生がやってくる現実など、T田にしてみれば歯が欠けるほど悔しいことだったのだろう。
 
「先生!こんばんはー!」

 小さな体に不釣り合いなほどの大声で校舎に飛び込んできたのは、アイナだった。防寒着で着ぶくれした様子は、食べ過ぎのタヌキのようで思わず吹き出してしまった。

「今日は流れるといいですね!」

 すぐ後ろにマリカがついてきていた。マリカは、いつも場を締めてくれる。

「ああ、そうだな。今年はかなり期待できるから、俺も気合いはいってるぜ。」

「はい!お姉ちゃんの時は流れなくて残念だって聞かされてたから、今夜はすごく楽しみですよ。」

 マリカは、どんなに俺と親しくなっても敬語を忘れない、きっちりした子だ。お姉ちゃんというのは、マリカの姉でエリナという。エリナも、6年生の時に俺が担任していた。

 ふとユナに目をやると、どうも元気がない。心配して声をかけてみると、ユナが小さな声で答えた。

「ちょっと、不安なの。まわりにあんまり人がいっぱいいると落ち着かなくて。」

 4月からクラスでイジメにあったり、担任に邪険にされたりしていたユナは、軽い対人恐怖症にでもなっているかのようだった。

「そうか。まあ、何かあったときは職員室にくるといい。安心して休めよ。」

 そうは言ったが、やはり心配だ。ユナは3人の中でも一番神経質で、クラスや担任、それに家族のことで悩んでいた。

 午後8時。参加者は全員集まった。そこで俺から簡単なオリエンテーションを行う。70人の子供たちを前に、俺は流星群について話した。場所は学校昇降口前の広場。残念ながら、夜空には一つの星も見えていない見事な曇天だ。

それでも、俺はレオニズの出現と雲の消滅を信じて、子供たちに熱く語った。夜空を埋め尽くす、何千何万という流れ星。数時間後、その人生に一度あるかないかの壮大な光景が現実となることを夢見て、この夜の観測会は幕を開けたのだ。

 とはいえ、流星雨の予想時刻は夜半過ぎ。流星群は、「輻射点」といわれる夜空のある一点から放射状に流れることから「群」というまとまりで呼ばれる。その輻射点が地平線から上ってこないうちは、流星群の活動を見ることは出来ない。しかもこの曇り空だ。子供たちに出来ることはいまのところ眠ることだけ。

「さてみんな、今はとにかく寝ておけ。流星雨が流れ始めたら、俺が全員一瞬で起こしてやるから。」

 前にも話したが、俺は声がでかい。70人程度のねぼすけどもを一撃で覚醒させることなど造作もない。子供たち自身それを身をもって理解しているので、「最高最悪の目覚まし時計だよな」と複雑な思いでめいめい眠りについた。

 消灯後、世話役が俺ということもあって、夜行性児童たちも今宵はまずまずおとなしい。
 職員室で待機していた俺は、この夜一睡もするつもりはなかった。まずはこの雲が晴れるかどうか監視を続け、さらには流星が流れ始めるようなときは子供たちをたたき起こさなくてはならない。
 校庭にこたつを運び、外壁のコンセントから電気をひく。6畳ほどのブルーシートの上に、「レオニズ観測基地」が完成した。東北の11月は寒い。東京あたりの読者は、真冬の寒さを想像してかまわないだろう。そんな中、俺は一晩中空を監視する体勢を整えた。


 午後10時。職員室で俺はT麻さんと話していた。話題は、あの腐れT田のことだ。

「飛鳥さん、校長はやっぱりこないってさ。電話で『よろしく』とだけ言ってたよ。」

「そりゃそうでしょう。あの怠けT田が、わざわざこんな深夜の活動にやってくるはずありませんよ。」

 子供たちが学校に泊まり込んで課外活動を行うなど、学校としてはかなり神経を使う出来事だ。何かあれば担任だけでなく、管理職にも責任が及ぶ。通常は、管理職(校長か教頭)が一人、活動にフル参加するか、子供たちが就寝するまで見届けるのが普通だ。

 だが、T田もS崎も、大した通勤距離でもないくせに、5時過ぎにはそそくさと帰っていった。最低の管理職である。というか、管理職手当返上しろよ。ちなみに、管理職手当ってのは、5万以上出てるんだぜ。どう考えても、この二人が俺より5万円ぶん仕事をしているとは思えない。


 まあ、T田が俺の企画の成功を望むはずがない。このまま天気が回復しないことを願っているに違いないのだ。

 今、世界中の目が集まるこの日本において、夜空が見えないほどの曇天を望む非人間は、このT田校長ただ一匹だろう。

 こいつは子供たちがどんな経験を積めるかなんて毛ほどの興味もない。ただ、自分の気に入らない部下の企画が失敗に終わることだけを念じているのだ。

 俺は雲が晴れることを信じて疑わなかったが、悪魔T田の呪いだけが、唯一不気味に背中に張り憑いて離れなかった。



後編に続く

  

Posted by 飛鳥エイジ at 19:04Comments(2)転落教師本編」