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【社説】

サミット開幕 アフリカは試金石だ

2008年7月8日

 北海道洞爺湖サミットは、アフリカ代表と食料問題を中心に討議する拡大会合で幕を開けた。危機に直面する“アフリカの声”を、八日のG8会合にどのように反映させるか。その力量が試される。

 洞爺湖サミットが、開幕初日にアフリカ支援を取り上げたのは、象徴的である。

 他の主要テーマである地球温暖化や世界経済の混乱の影響が、アフリカで強く噴出しているからだ。とりわけ、気候変動や原油・食料価格の高騰がアフリカを苦しめている。今日の国際社会の危機がアフリカを直撃しているといっても過言ではない。

 コメ、麦、トウモロコシといった主食類の価格は、この一年で一・五倍から三倍近くに急騰した。貧困層が集中するサハラ砂漠以南の地域には、一日一度の食事もままならぬ人々が少なくない。

 穀物価格のわずかな上昇が「生活苦」を通り越し、人々の「生命の危険」に直結する。貧困と劣悪な保健衛生による乳幼児の高死亡率をさらに押し上げている。

 アフリカなど途上国支援と開発を主要議題に掲げた二〇〇五年の英グレンイーグルズ・サミットでは、二〇一〇年までに年間総額五百億ドルの追加援助がうたわれた。

 日本も積極的な姿勢を示してきた。五月に横浜市で開かれた第四回アフリカ開発会議(TICAD)で、福田康夫首相は、二〇一二年までにアフリカ向けの政府開発援助(ODA)を倍増させると表明した。

 地球温暖化対策とは違って、具体的目標ははっきりしている。問題はその実効性である。各国の経済事情の悪化もあって、グレンイーグルズの約束が守られているとは言い難い。アフリカ諸国の一部からはG8の「アフリカ熱」の冷え込みを懸念する声も出ている。

 貧困克服への具体的道筋をつけられるかどうか。原油やレアメタル(希少金属)など資源開発の先行投資としてではなく、インフラ整備や教育投資などに確実に生かす仕組みがつくれるか。

 これらの行方は、途上国の気候変動対策への参加意欲にも影響を及ぼすだろう。洞爺湖サミットの成功のみならず、サミット自体の将来を占う試金石になるはずだ。

 国連を交えたアフリカ諸国との拡大会合をまず開き、その意見をG8の議論に反映させる今回のやり方も意味深い。サミットの拡大や新たな枠組みを考える上で参考にもなるだろう。

 

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