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【社説】

コンビニ深夜自粛 生活様式考える契機に

2008年7月8日

 コンビニの九割が二十四時間営業だ。温暖化を防ごうと埼玉や愛知県などが法による規制や自粛要請の検討を始めた。便利な存在に慣れ切っている利用者も足元の生活様式を見つめる契機にしたい。

 主要コンビニ十二社の店舗数は四万二千、94%に当たる四万店近くが年中無休で昼夜通し二十四時間営業している。

 女性の勤労者はこの四十年間で二千万人台に倍増し、産業のサービス化も重なって男女を問わず深夜帰りの勤労者が増えている。コンビニ利用者は一日平均三千五百万人。終電で帰宅しても駅周辺や自宅のそばで店が開いているコンビニは利用者にとって、殊のほか使い勝手がよい存在だろう。

 ところが、京都議定書が調印され、温暖化ガス削減の発祥地ともいえる京都市は市民会議を発足させ、「深夜営業」の自粛要請を検討する予定だという。

 「省エネには終夜営業の自粛が好ましい」。京都市に続いて埼玉県や東京都など全国の十近い都県市も検討作業に入り、終夜営業の自粛を求める声は全国へと急速に広がっている。

 終夜営業の見直しは温暖化の防止がきっかけだとしているが、この問題の重要さは、昼夜分かたずになった現代の生活様式の見直しを迫っていることだ。コンビニの存在に対しては積極的に認める自治体は少なくない。

 コンビニは税金のほか、電気やガスなどの公共料金の納付や宅配便受け渡しも担っており、「かなり公共的な役割を果たしている」と評価する自治体もある。「事業者に温暖化ガス削減計画の提出を独自に求め、省エネ機器の導入も促しているので要請は不必要」とする府県は二十近くに上る。

 大手コンビニ首脳は「コンビニだけが魔女狩りに遭う議論にしないでほしい」と規制強化の自治体に反発を示している。終夜営業は自主性に委ねるべきで、法による規制は控えるべきだ。

 ドイツでは営業時間規制が緩和の方向にあるものの、閉店法により原則として時間が制限されている。家族との時間を重視する伝統的な価値観によるもので欧州では多少の不便を我慢して生活との折り合いをつけている。

 日本も多少の不便は甘受し、便利さばかりを追求する生活を省みる時代が来たことを示しているとも言える。

 コンビニの終夜営業見直し論議は、その大切さを教えている。

 

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