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PSP本体をけん引、他のソフトの売り上げにも波及しているというPSP用ソフト「モンスターハンターポータブル　2nd G」」(C)CAMCPM CO.，LTD.2007，2008 ALL RIGHTS RESERVED.

　ソニー・コンピュータエンタテインメントの携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」が4カ月連続でゲーム機部門の売り上げトップを堅持して、累計950万台を販売、1000万台も視野にとらえるなど好調だ。その原動力となった人気ゲーム「モンスターハンターポータブル　2nd G」の秘密と波及効果、課題を追った。

■原作を超えた異例のヒット

　「ゲーム機の売れ行きは、人気ソフト次第」というゲーム業界の“格言”どおり、PSPの好調の理由は、3月末に発売された専用ソフト「モンスターハンターポータブル　2nd G」を抜きには語れない。巨大モンスターを狩り、手に入れた甲羅や皮などを元に新しい武器や防具を作り出すアクションゲーム。無線通信機能を利用し、最大4人の仲間と協力して遊ぶスタイルが受け、230万本を超えた今もなお売れ続けている。

　だが、この売れ行きに驚いたのは、ゲームの開発・販売元のカプコンだった。同社の社員は「2nd Gは、新作でなく元のゲームに追加要素を加えたソフト。それが本編の『2nd』（の売り上げ約170万本）を超えるなんて……」と首をひねる。大ヒットゲーム「ファイナルファンタジー」などを筆頭に、これまで追加要素を入れて再発売されたゲームは珍しくないが、売り上げは、原作ソフトの販売数の数分の1から10分の1が“相場”だったからだ。

■データの引き継ぎが生んだマジック

　ゲーム出版大手エンターブレインの浜村弘一社長は「PSPの大ヒットの兆候は『2nd G』の前からあったんです。ポイントは『2nd』で遊んだゲームのデータを『2nd G』に引き継げるという発表」と話す。「2nd G」の発売3カ月前の年末に発表があってから、「2nd」の販売数が急速に伸び、1月には約9万本、2月と3月には約5万本と、新作ゲーム並みに売れる異例の現象が起きていた。

　普通のゲームソフトは、データの引き継ぎをしないことが多い。ゲームのデータを引き継がせると、新しいソフトを遊ぶ時間が短縮されて早く飽きられてしまい、結果的にメーカーの利益にならない中古市場へ流れるなどメリットがないからだ。

　浜村社長は「『モンスターハンター　ポータブル』を、通常のゲームソフトでなく、コミュニティー要素の強いPCのオンラインゲームに例えると分かりやすい」と説明している。オンラインゲームでは、ファンを飽きさせないため新しい要素を盛り込んだ大幅なデータ更新を数カ月に1度かけるのだが、ゲームデータの引き継ぎが結果的に同じ効果を生んでいるという。「『2nd G』に引き継げるのだから、その発売前に『2nd』を遊んで、より強いデータを作り、発売に備えておこう」……というわけだ。

■低年齢層化、他のゲームにも好影響

　さらに浜村社長は、ブームがこれまでPSPをもっていなかった小学生層への波及効果もあると見ている。「PSPはこれまで中高生が遊んでいましたが、兄が遊ぶのを見て、弟がそれを欲しがるのは、ブームになった商品にはよくあること」と話す。

　さらにPSPのヒットで、他のゲームソフトの売り上げも伸びているという。「2nd G」の2カ月後の5月末に発売された野球ゲーム「実況パワフルプロ野球ポータブル3」が20万本を販売しているが、浜村社長は「前の作品では十数万本だった。数の押し上げはありますね」と指摘する。

■勢い持続するか？　勝負は秋

　「2nd G」の月ごとの販売数は、3月に約82万本、4月に約102万、5月に約31万、6月に約13万本。PSP本体は3月に約41万台、4月に38万台、5月と6月に約27万台と推移。さすがにゲームソフトの販売数は下降線だが、ゲーム機は持ちこたえている。

　だが、このままPSPの勢いは持続するのか？　といえばそう甘くないようだ。浜村社長は「PSPの売り上げトップ4のうち、三つが『モンスターハンター』シリーズというのは正直笑えません。7、8月は大丈夫でしょうが、秋に人気ソフトが出るか？　もしくは『モンスターハンター』の次回作の情報が出るかでしょう」と分析する。

　ライバルの「ニンテンドーDS」は2200万台を超えており、まだ倍以上の差がある。PSPのさらなる真価が試されるのは、少し先になりそうだ。