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2008年7月8日

◎北陸の建設業不況 気になる金融機関の貸し渋り

 石川県最大の建設会社、真柄建設が民事再生法の適用を申請したことは、二週間前に民 事再生手続きが始まった富山県屈指の林建設工業の破綻(はたん)と併せ、北陸の建設業不況の深刻さを象徴的に示している。

 このところの建設業不況には金融機関の貸し渋りが影響しているとの指摘もあり、地域 経済全体への影響を考えると、資金供給のパイプが細ることが気がかりである。金融機関は地域経済の血液の送り手という自覚を強く持って企業活動を後押ししてほしいし、県も貸し渋りを監視して負の連鎖を食い止める必要がある。

 真柄建設の主力銀行である北國銀行が取引先企業を対象に緊急融資の実施を決めたのは 当然の措置である。取引先が県内に広がっているだけに、早くも表面化した連鎖倒産など地域経済への影響を最小限に抑えなければならない。

 米サブプライムローン問題をきっかけに世界的に信用収縮が広がっている。金融機関が 融資審査を厳格にして焦げ付きを防ぐのは営利企業としては当たり前のことだが、バブル崩壊後の不良債権処理で身に染みた教訓を過度に意識するあまり、羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くような対応に終始すれば景気が一段と悪化するのは確実だろう。渡辺喜美金融担当相が貸し渋りを懸念し、先月、調査分析と対応策を金融庁に指示したのは妥当な判断といえる。

 建設業不況の背景としては、改正建築基準法の影響や建築資材の高騰なども指摘されて いるが、根本的な理由は公共事業が削減され、建設市場が縮小する中、建設事業者が市場規模に比べて多いことにある。今後も業界の再編、淘汰は避けられないのではないか。

 建設業界が苦境を乗り越える支援策は必要だとしても、県や各自治体が入札制度改革の 歩みを止めることは避けてほしい。一般競争入札の拡大で落札価格のたたき合いが進んだとして、業界内からは入札改革を不況の元凶のように受け止める声も聞かれるが、これは筋違いと言わざるを得ない。公正で透明性の高い入札制度を前提として、自治体は建設業界の活性化を促す施策を講じてほしい。

◎洞爺湖サミット開幕 食料支援の合意が不可欠

 アフリカ七カ国首脳との拡大会合を皮切りに北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議) が開幕した。世界的な食料価格高騰のあおりを受け、アフリカなどの途上国で、飢餓や暴動など社会不安が深刻化している。食料問題を真っ先にサミットの議題に持ってきた意義は大きい。日本は緊急支援の合意取り付けに汗をかき、食料の安定供給に向けた枠組みづくりにも知恵を絞りたい。

 アフリカは歴史的に欧州諸国と関係が深く、最近は資源外交に熱心な中国が影響力を強 めている。サミット開幕を飾ったアフリカ諸国との会合で、福田康夫首相は、今年五月に横浜で開かれたアフリカ開発会議(TICAD)で合意した支援内容を説明し、緊急援助やアフリカの食料生産の倍増などについての具体的な討議につなげた。アフリカ諸国にとって、ありがたい橋渡しだっただろう。

 アフリカにおける日本の存在感は薄いと言わざるを得ないが、TICADには、アフリ カ五十三カ国中五十一カ国が参加し、首脳クラスの出席も四十カ国に上った。日本に寄せる期待の大きさの表れであり、そんなアフリカの声をサミットに最も効果的に反映させようとした狙いは評価できる。

 地球温暖化で最も大きな被害を受けているのは、干ばつや砂漠化が進むアフリカであり 、このところのエネルギー、食料価格の高騰で、貧困や飢餓に拍車がかかっている。エチオピアやエジプトでは暴動も起きた。もともと政情不安で、内戦や紛争地域を抱える国も多いだけに、継続可能な支援体制をつくるのは、簡単ではない。

 だが、日本はアフリカとの利害関係がほとんどない「強み」を生かせる。植民地支配の 歴史がある欧州諸国や、軍事独裁政権への武器援助などで批判されている中国とは違う役回りを演じることは可能だろう。アフリカ諸国に国連安全保障理事会の常任理事国入りを支援してもらう思惑もあるが、石油やレアメタル(希少金属)などの地下資源が豊富なアフリカ諸国の信頼を得て、着実に外交関係を強固なものにしていくことがより重要である。


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